33話 上位種スライム
「あ、上位種だ」
少し離れたところに、赤いスライムが現れた。
あの色は多分ファイアスライム。リョウの魔法に反応して現れたのかな。無駄に魔力をばら撒いていたし。
「ほんとだ、色が違う」
「えっと、鑑定……『ファイアスライム。火の完全耐性。その他はほぼノーマルと同様』だとさ」
今はどうでもいいけれど、結局鑑定って言うようにしたんだ。わかりやすいけれど、勇者の瞳って言う方がかっこいいのに。まあ長いしそんなものか。
「火属性のスライムってことは水とかに弱かったりする?」
「そうかも」
と、ふたりが私の方を見た。確かに水属性持ってるけども。この程度なら火のリョウはともかくサリーの風か光で十分倒せるだろう。
そう伝えようとした時、リョウ側の茂みからもう1匹スライムが現れた。
そのスライムは出てきた瞬間に粘液を飛ばし、それはリョウの腕に直撃する。
「あっっっつっっっ!!」
粘液の触れたところは、服が溶かされ肌が焼け爛れたようになっていた。
よく見るとノーマルスライムに見えたそれは別の上位種だった。気配が弱すぎて見逃していた。
「リョウ!?え?溶けてる!?」
「急いで水洗いして」
私はリョウを川の方に押しやって、スライムとの間に入る。
そして、その勢いのままに軽く魔法を打ってその上位種を倒した。
残った粘液を見た感じ、この上位種は酸系の特殊個体だったようだ。武器で叩いていたら使い物にならなくされていたかも。魔法にしてよかった。
ちなみに陽動になっていたファイアスライムはしれっと倒しておいた。
「流せた?」
スライム2匹を処理して、川辺で傷口を洗っているリョウの所へ行く。
「いってえ……染みる!!」
「うわあ、やば……ある程度流れたみたい?」
「みせて」
私は川から引き上げた腕を見て、改めて水魔法で洗浄した。少し残っていたから。
「服切るよ」
溶かされた周辺に酸が染み込んでしまっていたから、その部分をハサミでカット。原因は取り除いたから治癒魔法をかけようとして、辞めた。
ポーチからポーションを取り出す。
「それは?」
「来る前に買っておいた、軽傷用のポーション。ギルドの売店で売ってたやつ」
自分用にはこの程度の低級ポーションは必要なかったけれど、一応買っておいたやつだ。早速役に立った。
それを傷口に振りかけると、じわじわとだが爛れた部分が元の肌の色に戻っていく。
「残りは飲んで」
そして3分の2ほど残った瓶をリョウに渡す。
「飲む?」
「かけてよし飲んでよしのポーションって言われた」
受け取ったリョウは少し訝しげに瓶を見ていたが、思い切ったようにそれを飲んだ。
「まっずっっ!!」
さすがは低級ポーション。味は酷かったか。
味も調整されたポーションもあるけれど、お値段が上がるからあまり懐に余裕のない冒険者には人気がない。
……お金は持ってるし、そっちも準備はあるけどリョウに使う分だしいいかって思ってこっちを使っちゃった。内緒にしとこう。
「すごい、治ってる」
飲んだ効果か再生速度が上がり、一気に元の肌に戻った。
「見た目は治ったけど、違和感とかある?」
「意識したらなんか肌が張ってる?程度。痛みはほとんど引いた」
「ポーション、すごい。というかユーナちゃん準備いい」
「ギルドで最低限準備しといた方がいい物聞いて、買っておいただけだよ」
むしろ自分で最低限のポーションくらい準備しとくべきじゃと思いかけて、その辺の知識が当たり前じゃないことに気がついた。
「今回は消耗品の確認してなかったから、次は改善しよう」
「わかった。準備良くて助かった、ありがとう」
「どういたしまして。じゃ、今度こそ戻ろうか」
私は倒しておいたスライムの粘液を回収した。
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