【玄】
……でも良いか。もう、我慢しなくても良いから。
この港の見える丘公園でもう少しだけ敵を引き付けたら、MM地区の皆はこの状況を乗り超えてくれる。大丈夫。
イリーガルエージェントのベイオネットもいるし、マルコ班も班長のアイシェさんが救援に来る、そうすれば麻雛罌粟支部長も全力を出せる。だから、大丈夫。
ジャームが一体増えても、あの人達なら大丈夫。
もちろん皆は怒る。悲しむ。
でも、後悔はないだよねぇ。やれることはやったから。一度のたれ死んだはず僕が、運よく生き返って、ここまで多くの人と一緒に戦えた。後は“僕の友達”がなんとかしてくれる。そうして、昨日と同じ明日は続くから。
……そういえば“あの子”はどうしているだろうか。
大きな太刀を重そうに背負って、でも楽しそうにこの世界を歩んでいったあの子。
5冊目にもなった手帳に、色鮮やかな文字を書いていたあの子。
学校に通って、まるで普通の女の子の様に笑うようになったあの子。
週末や長い休みにはレネゲイド災害緊急対応班マルコへ遊びに行っていたあの子。丁度、今はマルコ班に居てくれた。
誰かに伝わらない可能性なんて気にせずに、通信を支部へ……不時着したミカボシへ入れる。ここを死守すること、間もなく
最期に機械の向こうの誰かに、勝手だけどあの子への伝言と一緒に頼んだ。伝わってると良いんだけどなぁ。
……あの子はあの時こんな思いだったのかなぁ。
あの子はどういう顔をするだろうなぁ。
──後悔は無い?本当に?
思えば、あの子はあの時から強かったな。
「……会いたいな……」
そう、口から”願い”が漏れた。
「……はいっ!」
周囲の空間が波打ち──"海"が溢れ出した。"神話"が再来するように、"願い"が叶うように。
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