第28話 歪む地獄

七瀬奏。

俺の後輩だが、その後輩が連れ去られた。

誰に連れ去られたかは分からないが首謀者は分かる。


それは俺の元後輩の一宮勇人。

ソイツが首謀者だと思う。

というか確定だと思うけど。


「クソッタレ。忌々しいな!」


智和と椿と一緒に走って向かう。

俺はそんな言葉を悪態の様に吐きながら住宅街に向かう。

この付近の跡地といえば1箇所。

それは廃工場であるが。


「この廃工場に居れば良いが」


「そうだな。このカンが当たれば良いが.....」


「.....」


唇を噛む俺。

俺達は住宅街を抜けた直ぐの廃工場に行き着いた。

そして見上げる。

そこは摩天楼の様な感じの場所だった。


それから俺は廃工場の取手に手を掛けてから2人を見る。

2人は唾を飲み込んだ。

俺はそれを見てから思いっきり開けると。

そこは2階建ての.....塗装工場?の様だった。


「.....見事な建造物侵入だな」


「まあそんな事を言っている場合じゃ無いだろ。七瀬さんを探さないと」


「そうだな.....」


椿に諭される。

それからスマホのライトで歩き出す。

そして1階の奥の方に進んで行く。


良い加減にして欲しいものだな.....アイツも。

思いながら居るとガサゴソ!と音がした。

俺達はビクッとする。

すると猫が走って行った.....ああ。

成程な、と思う。


「猫かよ。驚かせんな」


「確かにな」


するとガサッとまた音がした。

何かが動く音がする。

また野生動物か?、と思って俺達は目の前を見る。

そこに.....制服姿の女子が居た。

その目は虚になっている。


「.....お、おい。大丈夫か」


椿が恐る恐る声を掛ける。

返事が無い。

女子生徒は此方に歩み寄って来る。


俺達はその様子に背後に下がる。

すると椿がつまずく。

それから尻餅をついてしまった。


「椿!」


俺は大声を発する。

するとその声に引きつけられた様に女子生徒が素早く動く。

それから角材を思いっきり振り上げた。

マジかコイツ!、と思いながら女子生徒を見る。

そうしていると智和が止めた。


「止めているから!仁!早く行け!」


その言葉に、すまん!、と言いながら駆け出す。

そして俺はそのまま駆け出す。

1階の奥を照らすが何も無い事が分かった。

俺はその様子に2階に駆け出して行く。

すると事務の机がある中で.....奥に七瀬が居た。


「七瀬!」


この場所だったのか。

思いながら近付いてから後ろを縛られていた七瀬の紐を解く。

何てこった、と思いながら七瀬を見るが。

七瀬は何もされて無かった様だった。


「良かった.....」


俺はそう言いながら七瀬の顔を触る。

すると奥から誰かが歩いて来た。

スマホのライトで思いっきりそこを照らす。

そこに男子生徒らしき人が2人。

何かバットの様な物を持っている.....しまった。


「.....お前ら。まさかと思うが狙いは俺だったという事か」


「そんなん知らんわ。.....俺らは雇われた身だしな。大金で」


「そうだな」


バットをポンポンして手で包むニヤニヤしている2人組。

金髪の不良であった。

俺はそのまま七瀬を抱えて後退りする。

そして威嚇しながら見る。

それからハッとして聞いてみる。


「何か飲ませたか。1階の女子に」


「飲ませたっつーか.....」


「そこら辺のナンパした女子を捕まえて乱行用に変なドリンク飲ませただけだわ。何つーか一宮?だっけ。ソイツに渡されたの」


「.....ゴミクズだな。因みに何の為にか聞いても良いか」


「そりゃ乱行パーティーする為じゃね。金も手に入るけどよ」


ソイツも犯す予定だったんだけど予想より早かったな、と不良は話す。

つまり乱行パーティーに惹かれたが為に。

女を手に入れる為にこんなクソみたいな事をしたと。

コイツら最低過ぎる。

思いながら俺は眉を顰める。


「.....地に落ちてくれよ」


「俺らそういうの分からんし」


「そーそー」


そんな言葉を発する2人組。

それから俺に近付いて来る.....すると。

外からサイレンの音がした。

俺は、やった、と思いながら一瞬だけ背後を見たのが運の尽きだった様だ。

よそ見してんじゃねぇ、と頭をバットで殴られた。


「.....ぐ.....」


めっちゃ痛い。

視界が歪む。

思いながら俺は血を吐き出しながら2人を見る。

そしてよろけて倒れる俺。

その隙に七瀬を取り返された。


「クソッ!返せお前ら!」


「こうなったらヤケだわ。今からこの女をボコボコにしてやるわ。ウザい」


「冗談じゃない!止めろ!」


そして見ていると、はい警察!!!!!そこまで!、と大声がした。

それから背後を見ると。

そこに警棒を持った警察官が立っていた。

俺は、助かった、と思いながら壁際に腰掛ける。

見ると和宏さんが.....。


「大丈夫かい!?」


「.....結構痛いですね」


「これは大変だ.....直ぐに保護するから」


そして不良2人組を見る。

すると、クソ。予想より早い、と吐き捨てながら奥に逃げて行く。

それを警察が、待てコラ!、と何人かで走って行った。

それから和宏さんが俺の頭を撫でてくる。

結構深く切っているな、と言いながら。


「すまない。救急車を呼ぶから。直ぐに」


「それよりも七瀬を.....」


「分かった。大丈夫。救急車を呼んでから直ぐに保護するから」


和宏さんは、安静にして、と言いながら七瀬の元にかける。

それから七瀬をおんぶする。

俺はその姿を見ながら、良かった、と思いながら階段を見ると。

そこに、仁!、と智和が現れる。


「お、お前.....出血が.....すまん.....」


「智和。俺は良い。.....取り敢えず椿とかは」


「大丈夫。あの後、女子生徒も椿も保護されたから。.....すまん。助けてやれんで」


「俺は別に構わない。.....だが.....」


「七瀬は大丈夫。きっと大丈夫だから。お前が病院に行け。今直ぐに」


それから救急車のサイレンが聞こえる。

そして救急隊員とストレッチャーによって俺は病院に運ばれた。

不良は捕まり。

結局、アイツ。


一宮は出て来なかったが俺はバットで殴られた傷に対して頭を7針も縫う大怪我をしてしまい。

だけどその中で良かったのが七瀬が一応無傷だった点だ。

俺達の行動が早かった様だった。

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