第12話 一宮奈々という人間

「美味しい?お兄ちゃん」


「焼き加減も絶妙で美味しい感じだな」


「うん。なら良かったよ」


そんな感じで会話をしながら俺達は焼き鮭メインのご飯を食べる。

因みにだが俺達の親は.....親父しか居ない。

先に話した通りだが。

でもその親父は大学教授で今は死に物狂いで頑張っておりなかなか家に帰らない。

それは俺達も苦労していると理解しているので.....こうして動いている感じだ。


だが万が一、親父が死んだらヤバい。

だからそこら辺が親父の重荷にならない様にしている。

マジに亡くなったりしたらこの家の相続とかも全然分からんし未成年だし。


遺産相続とかも問題になりそうだ。

あくまで素人の意見だが。

親父が元気で居られる様にサポートをずっとするつもりだ。


「お父さん今日も大学で研究だってね」


「そうか。相変わらずだな。あの人」


「まあ、だね。研究頑張ってお金稼いでもらわないと」


「がめついなぁお前さんや」


「いやいや失礼だね。そういう意味で言ったんじゃないよ」


そんな会話をしながら俺達は苦笑いを浮かべる。

それから俺は外を見た。

今日は雨が降ってない感じの快晴。

それにしてもまあ陽が落ちるのが遅くなったな、と思う。


「前は結構早く太陽が落ちてたのにね。.....早いね時間経つの」


「.....それは確かにな。ここ最近、時間が経つの早いよな」


そう思いながら2人で外を見ているとインターフォンが鳴った。

何だ?もう19時過ぎているんだが。

思いながら俺はインターフォンを観てみる。

そこに.....茶髪の不良女子?っぽいのが立っていた、ってまさか。


「.....まさかコイツ.....」


「.....?.....誰?」


「.....一宮奈々(いちみやなな)だな。多分」


「.....え!?もしかして.....」


「.....まあどうでも良いと思って一宮に聞かなかったが妹だ。何しに来たんだコイツは。というか先ず最初にアイツらと一緒に行ってなかったのかよ」


「.....だね」


正直このまま無視しても良いが。

何されるか分かったものではないな。

思いながら俺はまた鳴らされたインターフォンに、帰れ、と言う。


すると、いや。そういう訳にはいかないです。ちょっとお話があるんですが、と言ってくる。

あ?、と思いながら聞いていると。


『仁さん。お兄ちゃんを何だと思っているんですか?可哀想だと思わないんですか?.....私が寮に住む羽目になりましたよ?私がこうなってしまいました。貴方達のせいで』


「いや。知らねーよ。何言ってんだお前。自業自得だろ。っていうかよくここら辺に住んでんなまだ。流石に無理があるだろ」


全く訳が分からない。

まあその。

寮に行ったというのはビックリだが?

でもまあ家族が1人残るのは不思議ではないかな、とは思う。


学業とかの関係でまあこの先は詳しくは知らんがな。

知りたくもない。

つうかまあこういうのが面倒いから関わってなかったんだ。


思いながら俺は額に手を添えて、すまんが帰ってくれ。お前と話す事は何もない、と回答した。

すると、いや?責任取って下さいよ、と目が豹変する。

こ、コイツ何なんだ。


『私もお兄ちゃんもめっちゃ困ってました。.....あり得ないです。校内放送でお付き合いの全てバラすなんて』


「いや。お前の兄がやった事の方が非道だけどな。もうNTRの次元通り越してるしな。お前も外道だな本当に」


『外道外道マジにうっさいですね。とにかく私の家族をバラバラにした。それは絶対に許せないから』


「お前な。何かお前の言っている事は脅迫罪だと思う。犯罪じみているぞ。このままだったら警察呼ぶぞお前。帰れ」


『警察ですか。そんなもん怖くないですよ。.....警察に何回も補導された身分としては全然!』


「あー。お前そうだったな。.....確か何かでパパ活やっていて何度も補導されたなお前。.....だが今回は状況が違う」


今回は本当に捕まるぞお前、と言いながら俺はインターフォンを切った。

それから居ると、絶対に許さない、と大声で叫ばれる。

馬鹿なのかアイツは。

思いながら、お兄ちゃん、と不安がる妹を見ていると何か雨が降ってきた。


「.....取り敢えず防犯カメラとか防犯センサーのナコムとか点灯している。.....だからまあ.....大丈夫とは思うが。人間は気が狂うと何をするか分からんしな.....」


「.....まさかだよね。こんなの絶対に駄目だよね」


「.....」


この家がそれなりの危険に晒されるのだけは勘弁してほしいもんだが。

正直あのイかれた野郎を捕まえるのは.....訴えれば何とかなるのか?

思いながら警察に言ってみるか?、と思ってしまった。

外道に対して効果があるか、だが。


「.....何であんなに狂うのかな」


「正直分からないが。.....何か外道は外道って事だろ」


そう考えていると外からガーンと音がした。

俺達はビクッとしながら見る。

すると外を3人ぐらいの若者が走って行った。

そして家の壁を見てみるとそこに石が当たっている。

壁は凹んでないが.....というかここまでするか。


「.....やれやれ。外道は外道だな」


「.....お兄ちゃん。そんな能天気な事を言っている場合じゃないよ。これ犯罪だよ。警察呼ぼうよ」


「呼んでも良いけど、気のせい、とか言われそうなんだが。警察も人を選ぶしな」


「.....そっか.....」


でもこの嫌がらせがこのままマジにエスカレートするなら警察も呼ばないといけない。

正直俺達に危険が及ぶなら。

だけど今は呼べない気がする。

どうしたものか.....、とは思うが。


「お兄ちゃん。何かあったら警察呼ぼう」


「それは確かにな。.....うん」


思いながら俺は顎を撫でた。

それから外を見る。

取り敢えずは.....何というか。

このまま何事も無く過ぎれば良いが。

余計な入れ知恵とかされなければ良いけどな。



脅迫行動とか器物損壊などが起こっていれば恐らくだが訴える事は可能だと思う。

だけど素人目線だが俺達に危害が加わってないし家に傷が付いてない。


つまり.....逮捕とか捕まえるのは難しいだろうとは思うが。

この状況を相談した警察にまた相談という形を取ろうとは思う。

放課後に向かおう。


「.....しかしそこまで至るとはねぇ.....」


「.....クズっぷりがマジに明らかだな」


「.....かなり妬みを持っているみたいだけど大丈夫かお前さんは」


「.....まあな。.....でも今は、傷害とか、器物損壊とか、じゃないからどうしようもない」


「確かにな.....」


智和は考え込む。

そんな会話をしながら周りを見渡す俺達。

文化祭が迫っているが.....そんな気分にならないな。

どうしたものか、と思う。


「.....それか俺らでその女を倒すとか?」


「.....いや、良いけどどう倒すんだよ」


「中学校に攻め込みに行くとか?」


「無理があるって」


上手くいかないだろそれ。

しかも捕まる。

考えながら天井を見上げて後頭部に手を添える。

どーしたもんかね。

そう思いながら居るとクラスメイトがやって来た。


「聞いたけど.....何か自宅に来たらしいな?一宮の家族」


「あー。まあうざいのが来たぞ」


「.....一宮に直接だが文句言ったら駄目なのか?」


「それで何とかなると思うか?それに一宮の今の住所知らないしな。あの女の住んでいる寮の場所も分からんから。それに.....まあ何つーかアイツは頭がおかしいから聞かないだろ」


「.....俺、家族にお前が相談した警察署の警察官居るんだけど.....何か交渉して家に警官配属しようか?」


「それは助かるけど.....その肝心の奈々がまた家に来るか分からんぞ。アイツ宣戦布告、脅しに来ただけかも知れないしなぁ.....」


そんな感じで俺達は、うーん、と悩む。

もしかしたらこの闘争は一時的なものかもしれないしな。

どうマジにとっ捕まえるか、だな。

思いながら俺は外を見て考えていると。


「取り敢えずタイマン張ろうぜ。取り敢えずはな。何処に居るんだそのガキは」


「いや。考えも無しに突っ込むなっての。.....今度はマジに捕まるぞ」


「だって腹立つくねぇか?クラスメイトが弄ばれたりしているんだぞ」


「.....まあ確かにな」


俺は悩む。

そして思いついたのだが。

まあ.....でもその場所に居るか分からん。

奈々のお気に入りの場所がある。

そこに居るかもしれないが.....?


「アイツなんか不良になっていたわ」


「.....マジか?最低だな」


「取り敢えず強い奴を何人かその場所に連れて行こう。そしたらタイマンだ。結局は女子だろ」


「.....それは良いかもだが.....俺達に火が飛んだら終わりだ」


「出さなければ良いんだろ?」


「そんなメチャクチャな。殴られても手出ししないのか」


避ければ良いんだ。それに何かあれば警察に通報すれば良いだろ、と言うクラスメイト。

俺の知り合いの警官を私服で配属しておくとか、とかも言う。


俺は盛大に溜息を吐きながら。

放課後を待ってから動き出した。

全くコイツら。


因みにその場所は何処かというと。

公園の噴水の近くにモニュメントがある。

そこによく居たが.....。

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