幻罪
U0
プロローグ
第1話 ゲームへの招待状
友達と別れ、一人帰途につく。時計に目をやると、時刻は夜の11時を回っていた。街灯の少ない道を一日の余韻と心地よい疲労感と共にゆっくりと歩く。
今日も、いつも同じなんてことない一日だった。強いて言えば、今日ようやく大学二年前期のテストから解放された。つまり、明日から夏休みだ。自然と笑みが溢れそうになるが、誰も見てはいないだろう。ふと空を見上げると満月が輝いている。何度となく見てきた月だが、それでもやはり綺麗だと感じる。
夜の静けさを乱すのは、道路を走る自動車の人工的な走行音だ。横を通った車のライトの眩しさに目を細める。それから、見慣れた建物を視界に捉えて、俺は足を止めた。
いつのまにか、俺が一人暮らしをしているアパートに着いていたようだ。三階までの登り階段が、一日の終わりには地味にこたえる。部屋に着いたらさっさと休もう。
いつものように部屋の鍵を開け、扉を開いた瞬間、何か違和感を感じた。部屋の電気がついていたのだ。
(しまった、消し忘れてたか?)
部屋に入り鍵を閉めた俺は、そこでもう一つの違和感に遭遇した。部屋の机の上には見知らぬ白い封筒が置いてあった。
(なんだこれ? こんなもの置いたっけ?)
白い封筒を開けると中には一枚の紙がが入っていた。
『おめでとうございます‼︎
あなたは当社の開発する新感覚サバイバルゲームのテスターに選ばれました。
是非楽しんで下さいね。』
(は? なにこれ? そもそも何かに応募した記憶もないし)
疑問で頭が混乱してくる中で、紙の下の方にある注意書きが目に入った。
『※なお、あなたに拒否権はありません。』
その瞬間、寒気がした。
(ちょっと待てよ? そもそもこの封筒はどうやってここに置かれた? 俺は一人暮らしだし、鍵は閉まってたはず)
恐怖が膨れ上がっていく。
それに朝、部屋を出た時はもう明るかったから、そもそも電気なんかつけていない。
(だったら帰ってきた時、電気がついてたのはまさか!?)
そして俺は、おそるおそる後ろを振り返ると同時に、気を失った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます