無垢な狂気

うり北 うりこ

第1話


 ぼくのお母さんはいつも言う。「ゴミはゴミ箱に捨てなさい」って。だから、ぼくはゴミって何か聞いたんだ。そしたらね、ゴミはなんだって教えてくれた。


 次の日、ぼくはをゴミ箱に捨てた。そうしたら、お母さんが叫んだんだ。「だんご虫をゴミ箱に捨てたのは誰?」って。だから捨てたのに、ぼくはおかあさんに怒られた。

 どうやら、は捨ててはいけなかったらしい。


 だから、今度は死んだネズミをゴミ箱に捨てた。そうしたらまた、お母さんに怒られた。もう生きていない、だから捨てたのに。

 あぁ、そうか。お母さんはネズミが嫌いだったんだ。だから怒ったんだ。


 ある日、ぼくはお父さんだった人の写真を見せてもらった。優しそうな人だったけれど、お母さんはいらないから一緒に住んでいないのだろう。

 はゴミ箱に捨てるよう言ってくるのに、お母さんはお父さんを捨てるのを忘れてしまったみたい。


 そうだ。お母さんの代わりにぼくが片付けてあげよう。

 最近、お母さんの様子がちょっと変だから、ぼくが代わりに捨ててあげたら喜ぶかもしれない。あぁ、でもは捨てたらダメなんだっけ。


 ぼくはこっそりお母さんの携帯からお父さんだった人に電話をかけた。そうしたら、次の日の夕方に会ってくれるって。

 ぼくはお父さんだった人に会いに行った。ちゃんと生きものじゃなくしてから、公園のゴミ箱に捨てた。いらないものだからね。


 それなのに、ぼくは知らないところに連れていかれちゃった。そこに来て、何日も経ったのにお母さんは会いに来てくれない。


 あぁ、ぼくがいらないものになっちゃったんだ。


 長い時間を知らない部屋で過ごしたぼくは、ある日、家に帰ることになった。お母さんは迎えに来てくれたけど、ぼくと一度も目が合わない。

 やっぱり、ぼくはいらないものらしい。


 家に帰ると、ぼくは大きなゴミ袋を用意した。流石にぼくはお家のゴミ箱には入らないからね。それに、お母さんはきれい好きだから、お家が汚れたら悲しんじゃう。


 そして、ぼくはゴミ袋のなかで首に包丁を刺してゴミになった。袋は二重にしたから、汚れてないはず。

 これでぼくはじゃなくなったから、捨てられるね。お母さん、喜んでくれるかな……。



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