八重垣神社の鏡の池の縁占い
密(ひそか)
八重垣神社の鏡の池の縁占い
島根県松江市に八重垣神社という神社がある。
ここには過去に2回訪れたことがある。
1度目は約15年前であり、2度目は約4年前である。
約15年前の話である。
当時、私は世間でいう結婚適齢期を少し回っていた年齢であった。
結婚はしたいが、彼氏すらいない。仕事場には『仕事場公認の私の好きな人』がいたが、その人にはまったく恋愛相手にされていなかった。
私は仕事場のお休みに合わせて、長期の旅行をしようと思った。
そろそろ彼氏くらいは欲しいと思っていたので、縁結びスポットである出雲国へ出かけることにした。
縁結びの神社として、島根県では出雲大社が名高いと思う。
それと比べると、八重垣神社はあまり有名ではないが「古代結婚式発祥の地」がある。
何故、ここが結婚式発祥の地というのかは、以下の通りである。
『古事記』によると、八重垣神社は須佐之男命と稲田姫命が結婚して、夫婦の新居を建てた場所だからである。
ちなみに八重垣神社は、
「八雲立つ 出雲八重垣 妻込めに 八重垣造る その八重垣を」
という、日本最初の短歌を詠まれた地で有名である。短歌の詠み人(詠み神)は須佐之男命であり、短歌の意味は「大好きな稲田姫命と結婚して、ここに新居を作ったぞ」という喜びを表現しているという。
島根県に着いた時には大雪が積もっていたが、八重垣神社へ行った日は晴れていた。
JR松江駅前から市営バスに乗って、八重垣神社へやってきた。
八重垣神社行きの市営バスは、一畑バスで行ける有名な観光地である出雲大社や松江城行きとは違って、あまり本数がない。乗り遅れると大変である。
八重垣神社の境内内にはいろいろと名所があるが、「ご縁の遅速を占う池」の話をしようと思う。
八重垣神社の境内にある池の名前を鏡の池という。
鏡の池は神社の奥地にある。ただ、奥地に行くのに、当時は「場所はこの先であっているのか」という疑問すら浮かんで、足が止まってしまい、この先に進むのを
それでも奥地に進んでいくと、池が現れた。池のそばに回覧板みたいなものがあり、そこに注意書きが書かれてあった。注書きを読むと「占い用紙は神札授与所に取りに来て下さい(100円)」とあり、もと来た道を戻っていった。
占い用紙(100円)を貰いに行って、鏡の池のところまで再び戻ってくる。
鏡の池には、私のご縁(恋愛運)を占っていただくことにした。
鏡の池の縁占いの占い方は簡単である。
八重垣神社の公式サイトによると、「鏡の池に占い用紙を浮かべ、硬貨(十円または百円)をそっと乗せる」だけである。
ところで、10円と100円の違いは何かあるのだろうか。
それはともかく、紙の沈み方に結果が現れるという。
公式サイトによると、「紙が早く沈めば(十五分以内)縁が早くまとまる。紙が遅く沈む(三十分以上)と縁が遅くまとまる。近くで紙が沈むと身近な人、遠くで紙が沈むと遠方の人とご縁があると伝えられている」そうである。
注意書きを確認して、占い用紙を鏡の池に浮かべた。その上から10円を置いてみる。なかなか占い用紙に池の水が染み込んでいかない。しばらくして、やっと占い用紙に少しづつ水が染み込んできた。
私はずっと占い用紙と池を見ていた。しかし、あまりにも変わらない光景に目の置き場を持て余し始めて、池の中を覗き込んだり、占い用紙を何度も凝視してみたり、鏡の池から視線を移して池の周りを見たりした。
周りを見ているうちに、近くの中学生であろうか、ジャージ姿の学生がいっぱい現れた。後ろの方にジャージ姿の中年の男性がいて、担任の先生か部活動の顧問だろうと思った。
彼らは鏡の池の周りに来ると、そのまま通り過ぎていくのかと思いきや、気がつくと鏡の池と私を取り囲んでいた。そして、引率の先生が鏡の池に浮かんでいる占い用紙の説明を始めて、「つまり、紙が早く池の中に落ちると縁が早く実るわけ」と結論を出していた。
それから、彼らはずっと鏡の池の占い用紙の行方を見守っていた。しかし、占い用紙はほとんど水に染み込んでいかない。
周りの学生の誰かが発した言葉が聞こえる。
「全然(紙が)落ちる様子がないね」
それから、数分経過した。
今度は複数の学生の声が聞こえる。彼らは途中で帰る気配すらない。
「まだぁー?」
「まだなの?」
引率の先生のしまったという顔すら見てしまった。
私は切実に思っていた。
紙よ、早く濡れてくれ…。
不思議なことに、その数分後、急速に占い用紙に水が染み込んでいった。紙が完全に水に包まれ、池の底に落ちていった。
最後は占い用紙を急かしたような感じになった気もしたが、どう考えてみても、占い用紙が池の中に沈んでいくまでに、25分以上はかかったと思う。
完全に「恋愛とのご縁が遅い(今はない)んだな」と思った。
約4年前の話である。
2019年、
大學の授業で『古事記』を学んだが、そこに八重垣神社が出てきた。
大學が夏休みに入ったので、また八重垣神社へやってきた。
また、鏡の池の縁占いをしてみた。
占い用紙を鏡の池に浮かべる。
今回は、一緒に占い用紙の様子を見る多数のギャラリーもいない。
占い用紙は少し経つと、少し池の奥の方に動いた。そのまま見ていると、多量の池の水が染み込んでいき、すぐに池の底に沈んでいった。
所要時間、5分であった。
同じ人が鏡の池の縁占いをやってみても、こんなに結果が違うんだと驚いた。
公式サイトの説明によると、八重垣神社の鏡の池は「稲田姫命の御霊魂が深く滲透した池」であるという。
鏡の池の占いは「恋愛、結婚等の縁に限らず色々な縁や願い事、また代理でその方を思いながらの占い」もできるという。
占い用紙は、さまざまな人の想いを乗せて池の底へ墜ちていく。
公式サイトによると「池の奥には稲田姫命をお祀りする「天鏡神社」が鎮座している」というから、池の底の神社には、さまざまな人の願いが届けられているのだろう。
稲田姫命は須佐之男命の大いなる愛に守られて、窮地を救われた過去がある。
人の願いが叶う前、今度は池の底から大いなる力が放たれるのだろう。
高き尊き力は人を救ってくれるのだろう。
それを人は神の力、
【追記】
八重垣神社(公式サイト)
https://yaegakijinja.or.jp/
八重垣神社の鏡の池の縁占い(公式サイト)
https://yaegakijinja.or.jp/pond
作者の八重垣神社参拝ツイート
https://twitter.com/vox_pop_hisoka/status/1165079480685088768
八重垣神社の鏡の池の縁占い 密(ひそか) @hisoka_m
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ルーブルの呪い/密(ひそか)
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます