転生幼女の溺愛暮らし~前世で拾ったわんこはフェンリル、助けた狐は九尾の狐。そんな私は厄災の魔女~

かなりつ

第1話 プロローグ 前世での行い

 別名、厄災の森と呼ばれる大森林サヴァリア。


 そこは一昔前、トレントと呼ばれる木の魔物と猛毒キノコお化けが大量繁殖したことで誰も近づけない死の森となりそう呼ばれるようになった。


 そんな森の入口に小さな小屋を建て、毒も恐れず一人で森を探索し、取って来た貴重な薬草をふんだんに使った回復薬を格安で売っている女性がいた。


 その女性は不便な場所に住んでいるとは思えないほど、身の回りをキレイに保ち、髪の毛はサラサラと美しく、彼女に近づくと不思議な甘い香りがしていた。


 沢山の色が使われたカラフルな服を着て、頭には花柄のつばの大きな帽子を被っている。


 ここが不便な森の中でなければ、きっと街の中ですれ違う男性たちの視線を集めただろう。それほど彼女は美しく、下界に降り立った天使のようだった。


 お店の中には沢山の薬草と回復薬、それに怪我した魔物たちが助けられ、保護されていた。その中にはこの辺りでしか見ない種類もいる。


 その女性はお店にやってきたダークエルフの小さな女の子に緑の液体の入った小瓶を渡す。


「フィカ、今回はお母さんのためにちょっと効果の強い回復薬を作っておいたわ。これで元気になると思うけど、食事と睡眠をしっかりとらないとダメって言っておいてね。回復薬で回復はできても、同じことを繰り返すとまたすぐに病気になってしまうわ。根本の私生活を良くしないと身体をどんどんダメにしてしまうからね」


「わかった。伝えておく。レティお姉ちゃんありがとう」


 そう元気に言ったフィカは、レティへと銅でできた小さなコイン6枚を渡す。


 そのお金はこの国でも最低通貨であり、小瓶を買うのに4枚が必要なことを考えるとレティの儲けなどほとんどなかった。


「今日もいい子で偉いね」


「へへっ私も大きくなったらレティお姉ちゃんみたいに人を助けられる人になるんだ。あっあとお姉ちゃんが好きだって言っては花あげるね」

フィカが小さな鞄へ小瓶をしまいながら取り出したのは、秋美草と呼ばれる地面に這うように咲く小さな色とりどりの花で作られた花束だった。


「この花好きなんだ。ありがとう。大切にお店に飾っておくね」

「うん!」


 彼女が作る回復薬は、素材の選び方、作り方、製作の時間配分などすべて一流の腕であり、小瓶に入っている液体は王国でもトップクラスの回復魔法使いが数日かけて治す病気でも治してしまうくらい効果の高いものであった。


 レティの回復薬は少量でも大幅な回復すると、一般市民を中心に爆発的に広まっていったが、貴族たちの間では胡散臭い女が作った回復薬など常識では考えられず、その話を聞いても貴族たちでは信じられないほど彼女が作る回復薬は規格外だった。


 そんな中で一般市民はどんどん彼女の元を訪れ、回復薬で治療を受けていった。


「見えなくなっていた目が見えるようになった」

「腐臭の臭いがしていた足が治った」

「あの人こそ本当の聖女様に違いない」


 助けられた人たちは彼女を聖女だと呼び、いつしか噂は隣国へまで広がっていった。


 隣国の王にはなかなか子宝に恵まれず、晩年になって生まれた子も病弱だった。藁にもすがる思いでレティの回復薬を飲ませたところ、ほぼ寝たきりだった王子が翌日には走り回っていたなんていう噂まであったが、どこの馬の骨かわからない娘に助けられたと公表することをためらった家臣たちが公式に回復術師の魔法により回復したと発表されていた。


「病気や怪我をしないのが一番ですから、普段の生活から気を付けてくださいね」


 彼女は治すことよりも、病気や怪我をしない方法を常に考え、患者のことを一番に思っていた。


 彼女の微笑は女性ですらドキッとしてしまうほど慈愛に満ちており、街の人が聖女だと噂してしまう理由の一つとなっていた。


 森の中でこぼれ日の中にいる彼女は一枚の絵画のように見る人を魅了し、彼女の回復薬は沢山の人を幸せにして、多くの人の笑顔を作り出した。

だけど、そんな時間は長くは続かなかった。


 純粋に彼女を慕ってくれる人たちが増えていく中で、彼女を利用しようと悪意のある人間が近づいてくるのにそう時間はかからなかった。


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