第113話 救助
王都へ向かう馬車の中、アウリエルへの好感度が増したことで気まずくなった僕は、たまたま探知スキルを発動させる。
このスキルは自分を中心に、広範囲にあるあらゆるものを探知できる。
僕の場合はとんでもなくINTのステータスが高いから、レベル500でも数百メートルの範囲を一気に索敵できる。
するとその索敵に、複数のおかしな反応が引っかかった。
逃げる人間。その人間を複数のモンスターらしき大きさのバケモノが追いかけている。
「これは……誰かがモンスターに襲われている?」
「え? ど、どういうことですか!?」
二つ隣に座ったソフィアが、僕の呟きを拾う。
真面目な顔で先ほどの索敵結果をみんなに伝えた。
「いま、索敵のスキルを使ったんだ。そしたら、モンスターに追いかけられている女性らしき反応を探知した。進行方向やや斜めだね」
「モンスターに追いかけられているなら急いで助けないと!」
ノイズがすくっと席から立ち上がる。
僕もその意見に同意する。いまはまだ落ち着いているが、彼女たちに状況を説明するために冷静でいるだけだ。
本当はいますぐに助けに行きたい。
「そうだね。ひとまず僕とアウリエルが一緒に行こう。前みたいに魔族の陽動だった場合は困るし、狙われてもいいように一緒に行動しよう」
「はい! わかりました」
即座にアウリエルが頷く。
彼女の手を取って、動いている状態の馬車から飛び降りる。
御者の男性には、すぐに後から合流するからそのまま馬車を走らせておいてくれ、と伝えた。
ソフィアたちの護衛は、本来アウリエルの護衛役の騎士たちに任せる。
僕の実力を知る騎士たちは、一言も文句を発することなく見送ってくれた。
アウリエルをお姫様抱っこして、地面に着地するなり走る。
彼女と一緒に走るより、こうしたほうがはるかに移動が楽だ。
「わ、わわっ! いま、わたくしはマーリンさまのお姫様に……!」
腕の中でアウリエルがひとり感動している。
別に彼女をお姫様にした覚えはないし、移動中に喋っていると舌を噛むよ?
急いでモンスターに襲われていると思われる女性を助けに向かうのだ。道中、やや移動が荒くなるのはしょうがない。
高速で地面を蹴りながらぐんぐんと森の中を進む。
しばらく切り替わり世界を眺めていると、やがて木々の隙間からひとりの女性が走ってくるのが見えた。
「——いた」
発見。いまのところ外見に大きな傷はない。少しだけ擦り傷などが見えるが、転んだりしたのだろう。全力で走れているなら問題ない。
僕はさらに加速し、汗だくの女性の前に姿を見せる。
「こんにちは。こんな所でどうしたんですか」
女性は僕の姿を見るなり足を止めた。荒い呼吸を繰り返し、おぼつかない舌で必死に僕になにかを訴える。
「ハァ、ハァ! う、しろ……うし、ろから! 来てる! ハァ……モンスター、が!」
「ああ、知ってますよ。あなたを助けに来たので」
ちらりと言われた通りに彼女の背後へ視線を向ける。
するとそこには、複数のオークの姿が見えた。
オークは豚のような顔をした二足歩行のモンスターだ。
オーガやゴブリンとたびたび似ていることから勘違いされやすいが、一応彼らはすべて別の種族である。
特徴としては、ゴブリンは繁殖力が高く。
オークは再生能力と高い身体能力を持ち。
オーガは繁殖力こそ低いが、ほか二体より圧倒的な身体能力を有する。中には魔法を使う個体もいるとか。
ゆえに、強さで言えばオークは雑魚だ。
すべてヴィヴィアンさんやエアリーたちから聞いた話なので、僕は実際にどれくらいオークが強いのかは知らない。
しかし、鑑定スキル見たかぎり……そこまで強くなかった。
どたどたと激しい足音を立てて僕の目の前にオークたちがやってくる。
そばにいた女性が、僕の服を引っ張って、
「は、早く逃げなきゃ!」
と叫ぶが、僕はアウリエルを下ろしてから笑みを作って言った。
「ご心配なく。僕のほうが強いので」
オークのレベルは僕より圧倒的に低い。これなら手加減しても勝てるだろう。
「……え? ど、どういう……」
困惑する女性。その女性にアウリエルが優しく笑いかける。
「もう安心してください。マーリンさまが来たからには、あのような畜生どもには負けません。それよりわたくしは聖属性魔法スキルが使えます。いま、あなたの怪我を治しますね」
背後で小さな光が発生する。
彼女のことはアウリエルに任せておけば大丈夫だね。軽傷くらいならアウリエルでも余裕で治せる。
僕は僕で、武器を手にしたオークたちのもとへ歩み寄る。
新たな敵の登場に、オークたちは容赦なく鼻息を荒くして武器を振りかざした。
僕もまた、体内の魔力を消費してスキルを使う。
「さようなら。————〝聖属性魔法〟スキル」
手元で、高温の光が輝いた。
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あとがき。
読者の皆様には日頃からたいへんお世話になっております!
本日、反面教師の新作が投稿されました。
よかったら見て、応援してください!
※
なぜか新作が表示されない?らしいので、タイトルを載せておきます。
『二度目の人生は最強ダンジョン配信者〜』というタイトルです!
小説一覧には表示されるようです!
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