カクゾーとTさん

@kakuzosennsei

第1話 怪人とエージェントT

神戸の朝方は海の輝きから始まる

街には1人の男がジョギングをしている

木陰でポーチからタオルを取り出し

汗を拭い、タバコに火をつけた

心地よい風が紫煙を遠くへと飛ばしていく

顎に少しだけ蓄えた髭を触り

視線を街を照らす太陽に向けた

男の目は朝日を反射し

少しだけ穏やかな印象を受けている


ピロリン


スマホから音が鳴る

男「はい、Tです」


電話に出ると

男の目つきが鋭く変わった

まるで先ほどの男とは別人のようだ


T「わかりました。俺がやります」


ピコン

そう言って電話を切り

持っていた水筒の水をぐいっと飲む


???「お仕事かい。Tよ?」


男の後ろから

いきなり声がした


T「お前いつからいたんだ?」


そこには赤と青の仮面を被った

謎の怪人が腰掛けていた


仮面の者「気づかなかったか?Tがタバコに火を付けた時からいたぞ?」


T「そうか。」


仮面の者「最強の人類の後ろを取ったとなると、私は案外強いのかもな⭐️気をつけろよ?ある日突然危ない人にやられるかもしれんぞ?」


T「今はプライベートだ。」

明らかにめんどくさそうな態度をとるT


T「それに、お前が少しでも殺意を向けたり危害を加えたりしたら、わかってるよな?」

グシャ!

そう言って持っていた水筒を片手で破壊するT


仮面の者「おお、、怖い怖い。私はそんなことしないよーだ」


ポタポタと水が地面に垂れ水溜りができる

仮面の男は右手を濡れた地面に押し当てる

仮面の者「それにTは知ってるだろう?私は暴力が嫌いでね」

深く腰を下ろし

水で地面に絵を描き始める

T「…」

地面にはペットボトルの絵が描き上がる

仮面の者「私のモットーはラブ&クリエイトだ⭐️Tが私を殴らないことも知っている」


ボワン

地面に描かれているペットボトルが現れる

ヒョイっと手にとり

仮面の者「それに私の名前はカクゾーだ⭐️お前ではないぞよ?是非とも名前で呼んでくれ。カクゾー先生と呼んでくれてもいいぞ?」


おそらくニッコリしているのであろう

ペットボトルをTに差し出す


T「そのうちな」


ペットボトルを受け取るT


T「ちなみにこの水は絶対に飲まんぞ」


カクゾー「なんでだ⁉︎せっかく私の能力で出したのに!」


T「お前の能力はよくわからん。描いたものが現実になってる時点んで怪しむのは当然だろ」


カクゾー「出来てんだから仕方ないだろう‼︎食わず嫌いはダメだぞ!無意味に水筒を潰しおって!」


T「もう時間だから行くわ」


カクゾー「おいちょっと待てTコラ!話はまだ終わっておらんぞ」


2人は朝の街を騒ぎながら進んでいく



神戸駐屯所

街中の普通のオフィス

スーツを着たTが扉を開ける

その後ろを当然のようについていくカクゾー


ガチャ

T「おはようございます」


2人の挨拶に反応し猫目背広の男が近づいてくる

カクゾー「おっはようございます!仁所長!いい朝ですな⭐️」


猫目背広の男「おはようTくん、とカクゾーくん。早速だけどこれお願いね」

仁所長と呼ばれる猫目背広の男が資料をTに手渡す

パラパラと資料に目を通すT


T「なるほど、今回の件は単純凶暴性ミステリーですね?」

カクゾー「んん?何それ?ねぇ?」

仁所長「資料にはそうあるけど妙なことがあってね」

カクゾー「ねぇちょっと?」


横から会話に割って入るカクゾー


T「お前関係ないだろうが」

カクゾー「教えてくたっていいじゃんか。ナカマハズレヨクナイ」

T「お前はまったく」

深いため息をつくT


仁所長「単純凶暴性ミステリーっていうのはね…」

ビービービー


オフィス内にサイレンが鳴り響く


カクゾー「んお!?なんだなんだ!?火事か?」


放送『○○市街にミステリー出現』

T「早速出やがったな。騒がしいやつだ」


放送『このミステリーは単純凶暴性ミステリーだと思われる。近辺にいたエージェントPが交戦中」


カクゾー「さっき言ってた何とかミステリーだな!?」

仁所長「そうみたいだね。P君が交戦してるって言ってたね」


T「Pが戦っててこの放送が流れたってことはやばい状況って事だな。現場向かいます」

仁所長「うん。よろしくね。必要なら殲滅もやむなしだから」


勢いよくジャケットを脱ぎ捨て扉から出ていくT


カクゾー「よし!私もいくぞ⭐️」

仁所長「いや、行かないほうがいい」

扉を閉める仁所長

カクゾー「何でだ仁所長?」


市街地

煙がところどころで上がっていて

人々の悲鳴やパトカーのサイレンの音が鳴り響いている

警察「下がれ!早く逃げろ!」

警察の対応に市民が避難していく

避難をする人々の向こうに大きな謎の生物が暴れている

生物「ぐおおおおおお!」



仁所長「単純凶暴性ミステリーが何かって聞いてたよね?」

カクゾー「そうそれ!何なのそれ?」

仁所長「この世界に突如現れた謎の生物。それがミステリー」


四足歩行の犬のような人間のような

巨大なその生物はパトカーを片手で薙ぎ倒し

鋭い牙から滴る唾液を撒き散らかし

目の前の物を破壊し尽くしていた


仁所長「この世の物とは思えない異形な姿で全国に多発的に現れた」

カクゾー「普通の生物じゃないってことだよね?」

仁所長「そう。でも色々特性があってね。大人しいやつもいれば、人間に危害を与えるやつもいる」

カクゾー「今回のは危害を加えるミステリーだとな?」

仁所長「単純凶暴性というのは、目の前の物をとにかく破壊する厄介なミステリーだよ。だから周囲に危害がもっとも及ぶタイプの物だね」

資料を机に置き椅子に座る所長

仁所長「だから、現場に行くのはとても危険なんだよ?って…あれ?」


気がつくとカクゾーの姿がなくなっていた

仁所長「行っちゃったんだ…危ないって言ってるのになぁ」

プルルルル

電話が鳴り応対する仁所長

仁所長「はい。神戸駐屯所、所長の仁です」

電話主『どうなってる?街の被害一刻も早く抑えろ』

仁所長「おそらく、あと数分で解決すると思います。エージェントTが向かいました」

電話主『何?エージェントTがか?』



市街地の少し離れた場所では野次馬が押しかけていた

少しでも映像に残そうと群がる物たちがいた

警察「離れろ!押すな!危険だから!」

静止する警察を他所に身を乗り出している市民たち

ドカーーン

大きな爆発と地響きで野次馬が静まり返る

爆発による煙の中から二つの光るものがこちらを睨んでいる

ざわざわ ざわざわ

野次馬が後退りをしている中

パシャっ

警察「!?」

野次馬の1人がフラッシュを焚いて撮影してしまった


ミステリー「ぐおおおおおおおお!」

それに反応したかのように雄叫びを上げるミステリー

ミステリーの筋骨隆々の両腕はあらゆるもの薙ぎ倒し

軽々と車両を野次馬に向けて投げ飛ばした

警察「逃げろ!うあああああ」


ドギャン!


車両が市民にぶつかる寸前、何者かが車両を蹴り飛ばした


ポニーテールの男「大丈夫っすか!?危ないから逃げるっす!」

頭から血を流したポニーテールの男が叫ぶ


警察「エージェント?エージェントPか!?」

P「自分には中々手に余るミステリーっすから、安全なんて無いっすよ!さっさと逃げ…」


ガシッ!

ミステリーがエージェントPを掴み振り回す

P「今のうちに!逃げるっす!自分が何とかするっすから!」

交戦するエージェント

逃げる人々

市民「あの人は一体?」

警察「ミステリーを倒すために組織されたエージェントPだ。早く逃げろ!」


仁所長「エージェントにも戦闘に特化した人もいますからね」

電話主『エージェントPでは単純凶暴性を殲滅するのは無理だろう。』

仁所長「だからこそ、この件はエージェントTが適任だとね」

電話主『最強のエージェントTならな』


壁に叩きつけられ、ボロボロになるP

P「くっそぉ、めっっちゃ強いっすねコイツ」

ミステリーがとどめを刺そうと両腕を振り上げる

警察「やばい!やられる!」


ズドーーーン

上から何かがミステリー目掛けて落ちてきた

T「遅くなったなP。ボロボロじゃねぇか」

P「Tさん!遅いっすっよ!」

ミステリー「ぐおおおおおおお!」

苦しそうに雄叫びを上げるミステリー


T「うるさいな。捕獲は無理そうだから。そろそろ黙れ!」

ミステリーの背中に拳を振り下ろす

拳は背中の骨を砕き

泡を拭いて倒れたミステリー


T「ふぅ。完了だ」

P「さすが最強のエージェント。一撃じゃないっすか」

T「あとは処理部隊に任せる。立てるかP?」

P「何とか…いててててて」

ふらふらになるPに肩を貸すT


?「うおおおおおTよー!」

野次馬を押し退け仮面の男がダッシュで近づいてくる

T「お前、ついてきてたのか…」

カクゾー「どこだ!?単細胞型協調性ミステリーは!?一目見てみたかったからついてきた!」

P「カクゾー君。色々間違ってるし踏んでるっすよ?」

カクゾー「うお?すまん何とかミステリーよ!もう倒したのか!?早いぞT!」

T「お前が遅い」

カクゾー「P?何でそんなにズタボロなんだ?転んだか?」

P「知ってるくせに〜」

T「とにかく治療だな。医療班はどこだ」

荒れ果てた市街地を後に3人は移動していく



電話主『ミステリーのサンプルは確保した』

仁所長「お早いことで」

電話主『ミステリーの解析と殲滅は我々組織の責務である。単純凶暴性ミステリーは中々現れないしな』

仁所長「そのことで妙なことがありました」

電話主『何だ?』



医療班の応急処置所

怪我をした人たちが治療を受けている

P「いててててて。自分はそこまで戦闘得意じゃないんすから。」

治療を受けるPがぼやく

T「もっと鍛えろ。俺たちエージェントは常に人手不足なんだ」

P「普通の人間より頑丈なだけっすから自分はね」

軽い会話をする2人を横目で見ているカクゾー

ベットの上に座って俯いている老人に目が入った

カクゾー「んん?おじいさん?どこも怪我していないようですが?ご無事ですかい?」

老人「いえ、たまたま現場に居ただけですよ。怪我といえばこの傷だけですかね」

腕を捲り上げ傷を見せる

そこには小さな引っ掻き傷があった

カクゾー「あらま!傷は傷ですな。医療は〜ん?このおじいさん手当てしてあげてくださいな⭐️」



仁所長「ミステリーが現れるのは法則性があるのはご存知ですよね?」

電話主『法則性か。季節や環境のことか』

仁所長「ええ、ミステリーはこの世界の何かしらを媒介にして変異しています。それこそ季節や環境、周期により様々です」

電話主『今回は犬のミステリーだったな?先程報告を受けたよ』

仁所長「飼い犬がミステリーになることも過去にはありました。ですが、現場の周辺を調査した者から上がってきている報告では飼い犬が変異した痕跡がなかったようです」

電話主『野良犬という可能性はないのか?』

仁所長「野良犬がミステリーになった例なら、田舎の方が最も多く確認しています。ですが市街地のど真ん中でいきなり現れたのは、人為的と考えて差し支えないとも言えます」

電話主『誰かが意図的に放ったものだと考えるわけだな?』

仁所長「その可能性があるということです」

電話主『なるほど。報告書に纏めてくれ。』

仁所長「わかりました」




続く

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