瑠唯奈の不思議な転生奇譚

猫原獅乃

第1話 転生

私は長峰瑠唯奈。11歳の小学5年生。

今友達と帰ったところで、少し寄り道していたので道がいまいちわからない。

…どうしよう…

「あ」

あそこの路地の形、見覚えがあるかもしれない。

あそこを通ったら多分家の近くのいつも通る道に行けるだろう。

「ふぅ、良かった…」

路地を曲がる。

「え?え?えぇぇぇっ?」

思わず驚いてしまった。

なぜかって、そこは異世界だったからだ。

目の前を馬車が通り、町の人たちの服はまるでファンタジー小説に出てくるかのようなものだ。

自分の外見ももちろん変わっている。ショートカットのはずの髪が、肩にかかっていた。

「髪の毛長い…はぇ⁉」

髪の毛が、なんと鮮やかなピンク色だったのだ。

「しかも、身長も大きい…」

恐らく160cmくらいだろう。

「だとすると…結構年上だよね」

「…ひやっ⁉」

突然頭にこの体の本来の持ち主の記憶が入ってきた。

…えっと、この子はルイナ・アルべディ。って、私と名前同じだった。

16歳。…結構自分より年上だな。演じ切るの大変そう。

家はあそこを曲がって…うんうん。分かった。

家族は両親二人で、お母さんはマルゴ・アルべディ、

お父さんはスディーデ・アルべディ。何となく分かってきたかも。

祖父母は全員既に他界。友達は少なくて同い年のアーネン・マルディエスだけ。

覚えやすい…

周りを見回すと、通りを歩いている人が全員私を見ていた。

…失敗した。あーだこーだ叫びすぎた。皆さんも転生するときがあったら

気を付けな…

赤面しながらルイナの家がありそうな辺りに行く。

「ここだ…また喋っちゃった。失敗」

「ただいま」

「お帰り…って、なんで帰ってきてるのよ⁉」

「ず、頭痛がひどくて。」

「そうなの?」

「はい~」

もうまるで有名なあの芸人のようになってしまっている。

「何で今更敬語になってるの…?

…まあ、取り合えず寝室で休みなさい」

「は、はい~~」

本気で頭が痛い。

ベットに潜り込み、考える。

…さっき、なんで帰ってきてるのって怒られたけど、あんな怒ること?…

記憶を探ると、15歳からは仕事を始めていることが分かった。

…え⁉どうしよう…働いている店か何かに何も言ってないじゃん…

もっといろいろ考えたいのだが、眠気が勝ってしまった。

「う~ん…あれ?ここ、どこ?

あ、私、転生したのか…」

転生したことが事実だったことを改めて思い知らされた。

…あ

堰を切ったように涙が出てきた。

…お母さんにも、会えないの?お父さんにも、友達にも、ほかの親戚とか幼馴染にも…

涙が枯れたころ、お母さんが入ってきて言った。

「ルイナ!無断で工房休んだわね⁉

今日は休むと報告したけれど、母さんに報告頼むとかできなかったの⁉」

…この人、怖い…

「ご、ごめんなさい…ごめんなさい…!」

もう嫌だ。

…!

体が熱っぽくなってきた。

記憶が教える。ルイナは体が弱いということを。

………

意識が途絶えた。

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