サンタは誰だ?

あーく

サンタは誰だ?

 僕はタクヤ。小6だ。

 僕は今、未解決の謎に迫っている。

 それは――




――小4のクリスマス――


「タクヤー! 届いたわよー!」

「わーい!」


 ついにこの日がやってきた。

 欲しかったラジコンを手に入れたのだった。


「よかったわねー、タクヤ」

「うん!」


「ほら、タクミにもプレゼントきてるわよ」

「やったぜ!」

 2歳年上の兄もプレゼントをもらっていたようだった。


「二人ともサンタさんにありがとう言いなさい」

「「ありがとう!」」


 この時は何も思わなかった。

 しかし、新学期が始まると、ふと疑問が生まれた。


 それは「サンタはいるかどうか」だ。

 僕の同級生は「サンタはいない」と言っているが、証拠がない。

 サンタが本当にいないとすると、母からもらったラジコン――これはどう説明すればいいのだろうか。

 それこそサンタの仕業しわざに他ならないだろう。


 確証が持てないので、独自で調べることにした。


 母が言うには、サンタが来るのは小学生までらしい。

 中学に上がると大人とみなされ、サンタは来なくなるらしい。

 これは小5と小6のあと2回で正体を暴かなければならないということを意味していた。


 あと2回――

 何一つ無駄は許されない。


 まず最初に疑ったのが「サンタは親」説だ。

 同級生はみんな「サンタの正体は親」と言う。


 まずはこれを調べることにした。




――小5のクリスマス――


「タクヤは今年のクリスマスプレゼント決まったの?」

 母は笑みを浮かべながら僕に尋ねてきた。


 そういえば、今までクリスマスプレゼントは母に報告していた。

 そして、毎年報告通りのプレゼントを貰えるのだ。

 しかし、今年はわけが違う。


「ナイショ」

「えー! お母さんにも教えてよー!」


 悪いが、母に僕の欲しい物を教えるわけにはいかない。

 本物のサンタなら僕の欲しいものくらい言わなくても分かるはずだ。


 母は続けた。

「サンタさんに報告しないといけないの」


 そうきたか……。

 自分は伝達係というていで聞き出すわけだ。


「いや、今年はいいよ……」

 本当は最近流行はやりのイカのゲームが欲しかったのだが涙を飲んだ。

 それほどサンタの正体が知りたかったのだ。


 夕食の後、僕は部屋に戻った。

 漫画のゲーム特集のページをぼんやりと眺める。


「お、イカのゲームか?」

「兄ちゃん!勝手に入ってくんなよ!」


 兄が僕の部屋に入ってくることに気付かなかった。


「いいよなー、俺はもうプレゼントはもらえないからな」

 そうか、兄は今年で中学生だ。もうプレゼントはもらえない。

 ……まぁ、それがホントかどうかわからないけど。


「風呂がいたから入ってこい」

「はーい」

 どうやら風呂の報告だった。


 僕は湯船で考えごとをしていた。

 今年はなんとかイカのゲームの話題は避けてきた。

 母にはバレていないはず。

 明日になればわかる。


 部屋の明かりを消して布団をかぶる。

 眠りに落ちるのに時間がかかった気がする。




――翌日――


 僕は目が覚めると、母の元へ駆けつけた。

「母さん! プレゼントは!?」

「あら、タクヤおはよう。プレゼントは――」


 僕は手に汗を握る。


「ほら、ちゃんとあるわよ! イカのゲーム!」


 !!


 馬鹿な!

 今年はちゃんと隠し通したはず!

 なぜ僕の欲しい物がわかったのか。


 謎のママ――いや、謎のままだった。




――小6のクリスマス――


 これが最後のチャンスになるだろう。

 今年こそなんとしてもサンタの正体を確かめなければならなかった。


 去年、母は僕の欲しいものがわかっていた。

 サンタは親ではないのか?


 僕は部屋でじっと天井を見つめていた。


「ようタクヤ!」

「勝手に入ってくんなよ」


 ――この光景どこかで。


 そうか。

 そうだったんだ。


「兄ちゃん、今年のクリスマスは漫画が欲しい。呼吸で鬼倒すやつ」

「そうか。あれ人気だもんな」


「ねぇ」

「ん?」


「サンタって兄ちゃんでしょ?」

「え?」


「いや、正確に言うと兄ちゃんは母さんに言われた通りにしてるだけだよね」

「な……なにを言ってるんだ?」


「母さんに頼まれたんでしょ? タクヤの欲しいものは何か聞いてこいって」

「そ……そんなの推測だ! 証拠がない!」


「去年のクリスマス、母さんには内緒にしていたのにちゃんと僕の欲しいものを買ってきたんだ。この時、僕の欲しいものを知ってたのは兄ちゃんだけだった。つまり、兄ちゃんが僕の欲しいものを聞いてきて、母さんがプレゼントを買ってきていた――そうでしょ?」


「くくく………」

「兄ちゃん?」


「そうだ、その通りだ。よくわかったな。お小遣いあげるから欲しい物を聞いてきてと頼まれたんだ。だがもう遅い! もうお前の欲しいものはわかっている! これを母さんに伝えるだけだ!」


「待て!」

「遅い!」


 兄は母のもとへ走って行った。

 僕もすかさず後を追う。


「あら、タクミ、どうしたの?」

「母さん! いい情報が手に入った! タクヤの欲しい物は……」

「やめろ!」


 母は僕を見るなり、ゆっくりと笑みを浮かべた。

「あらあら、とうとう見つかっちゃったみたいね。そう、サンタの正体は他でもないこの私。でも喜びなさい。あなたの欲しいものがもうすぐ手に入るのよ?」

「………」


 僕は震え上がり、母に飛びついた。


「母さん――ありがとう!」

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サンタは誰だ? あーく @arcsin1203

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