第191話 神力リンクを隠せ

 第一回秘密結社竜神の企画会議の中身はともかく、俺達はしばらくの間神界の様子を伺っていた。

 神界に情報が漏れていないか調べるためだ。そして集めた情報を見る限り、俺の部屋に施した隔離措置は有効に働いているようだった。まぁ、あのテーマが話題になるかどうかは微妙と言えば微妙ではあるのだが、違う意味で話題になるとは思う。気軽にネタに出来るからだ。それでも話に出ないなら、本当に漏れていないと考えられる。


「じゃあ、本当の企画会議を始める」その日、俺は宣言した。


 最初なので、とりあえず女神隊十四名全員集まっている。さすがに、俺の部屋に全員集まると少し狭い。


「狭くて済まん。新しい部屋を用意したいところだが、そうするとバレバレなので何か考える。あっ」ちょっと思い付いた。


 全員が聞いてるのを確認してから俺は話始めた。


「新しい企画の前に、今ちょっと気付いたんだが、神力リンクってどの程度セキュリティが確保されているんだろう?」


「えっ? どういうこと? 系統のみに限定されるでしょ?」隣でアリスが素直な疑問を言う。

「そういう話だが、本当なのか? それと、上位神の第一神様はいいとして、他には本当に漏れないんだろうか?」

「その筈だけど?」とアリス。


「それについては、確実では無いかも知れません」女神カリスだ。

「と言うと?」

「神力リンクによる会話は、系統の神力を使って情報を流しているだけです」

「ふむ」

「神力なので、例えば他の神からも神力そのものは見えてしまいます」

 確かに、見ようと思えば見れる。


「その見えた神力を分析すれば、内容が読み取れると?」

「はい。その可能性は否定できません」

 確かに、音声を光に変換したりも出来るからな。機能拡張を作れば分析できそうだ。


「その可能性があるということは、それを実現している世界があるとも言えますね」

「そう考えるのが妥当です」と女神カリス。

 もしかすると、別の言語圏で使ってるということもあるかも知れない。


「なんか、怖い世界になった気がする」アリスが思わず言った。いや、なったわけじゃない。気づいていなかっただけだ。


「事実は小説よりも奇なりだな」

「なにそれ」とアリス。

「現実こそ不可思議だということ。だから調べる」

「なるほど」


「そうなると、とりあえず神力リンクの会話を暗号化する必要があるな」

「暗号化?」とアリス。ピンと来ていないようだ。

「そうですね。簡単には読めないようにすべきです」女神カリスも納得の模様。


「ん? 暗号の神様っているの?」

「確か、いたと思いますが、他のグループですね」と女神カリス。

「そうか、なら今のメンバーで何とかするしかないな。キリスさんに協力してもらって出来るかな?」

「それは、暗号化に魔道具を使うということですね?」と女神キリス。

「そう、俺がみんなに渡している神化リングに暗号回路を組み込んだらどうだろう?」

「今の認証機能に暗号化を追加するんですね?」と女神キリス。

「そうそう。その拡張で」

「ただ、それだけだと解読されやすいかも?」と女神キリス。確かに、暗号回路だけ解析されるかも。

「そうか。じゃ、機能拡張も必要か。これはカリスさんにお願いできる?」

「合わせ技ということですね。機能拡張は常にアップデートできますからね」と女神カリス。

「神力カラーの相互認証も使いましょう」と女神キリス。

「そうですね。それでお願いします」と女神カリス。

 この女神様なら、きっと大丈夫だな。


「これが完成すれば、必ずしも全員がここに集まる必要が無くなる」

「そうね! 集まるとバレバレだもんね」とアリス。

「そうだな。まぁ、ここに集まるのが一番ではあるけどな」

「本当に大事な時だけにすればいいね」

「うん。それに、女神湯とかでも、ゆったり会話したいし」

「でも、それだと無言で女神湯に入るの?」

「なんでだよ。神力リンクは大事な話だけでいいだろ」

「そうかなぁ。意外と、普通の会話でも聞かれたくないことってあるよ?」

「ああ。確かにな。」

「それがプライバシーよ」


「けど、女神湯で急に無言でいたら、怪しすぎるだろ」

「そういうゲームってことにすれば?」とアリス。

「無言で? 神力リンクで伝言ゲームしてますとか?」

「にらめっことか」

「大人数のにらめっこ?」

「そう。誰かが神力リンクで面白い事言って、笑ったら負け」

「なんか、シュールだな」


「ふふ。でも、無言の女神湯はやってみたい!」とアリス。

「一度くらいなら、ちょっと面白いわね」とイリス様。

「修行に見えるかも」とエリス様。

「なんの修行なのだ!」とウリス様。

 座禅とか。風呂だけど。


「ふふふ。暗号化神力リンクかぁ、楽しみ!」とアリス。

「そうね。安心できるものね」とイリス様。

「うむ。運命を切り開くのだ」とウリス様。

「リュウジ、怪しい!」

「思いっきり隠してるけど?」


 冗談はともかく、なんとか俺たちのプライバシーを確保できそうだ。


「じゃ、カリスさん、キリスさん、よろしくお願いします」

「分かりました。早速取り掛かりましょう」と女神カリス。

「分かった。私も、頑張る!」と女神キリス。


「それでは、今回のテーマ。タイムリープについてです」


 俺は、本題に話を進めた。

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