タイムリープ編
第179話 神界のグループ
惑星フォトスの見学会を無事終え、俺はつかの間の平穏を取り戻していた。
そう、平穏。だが、それは不吉だ。
ー リュウジ!
ほらきた。
ー ほらって何よ。
ー 俺の平穏。
ー 落としたの?
ー そうかも。って、ちげーよ。で、なんだ?
ー 最近、神界のグループから問合せが殺到してるんだけど?
ー 他のグループから? グループ参加希望じゃなくて?
ー それはそれであるんだけど、他のグループリーダーから会いたいって。
ー 俺は会いたくないな。てか、昔の話は忘れてるしなぁ。借金も自己破産で消えました。
ー 何言ってんのよ。元居たグループじゃないよ? そもそも、あんたが吸収してるでしょ?
ー え? ああ、そういうことね。スリス傘下ならそうなるか。じゃ、それ以外のグループ?
ー そう。なんか雰囲気としては友好的だったわよ。
ー そうなんだ。わかった。じゃぁ、ちょっと会おうか。
* * *
とりあえず2つのグループと会うことになった。アリスやイリス様が知っていて大丈夫とのこと。
こちらから行ってもいいのだが、向こうから来るというので執務室で待っていた。
ボッ
「失礼する」
まず、最初のグループを代表する神様登場。細面のイケメン男神だった。顕現する音に重みがある。
「初めまして。私は、プトレ派を纏める『;アlあl』と言います。プトレとでも呼んでください。天文学を専門としています」
つまり、天文学の神様らしい。自分からプトレと名乗ってくれて良かった。名づけは女神限定特典なので。でも、思いっきり天動説っぽいんだが?
「その顔は天動説かと思われましたか? ふふ。今は天動説ではありませんよ」前はそうだったのか?
「すみません。顔に出易いようで」
「あなたやこの世界のことは、神界から良く拝見しています。最近は特に興味深い活動をされていますね。女神セリスとも友好的にお付き合いさせてもらってます」
ぽっ
「こんにちは! プトレ」
その、女神セリスが登場。なるほど。よく知ってるっぽい。
「と言うことは、以前の俺とも?」
「はい。今、記憶を無くされているのは存じてますし、それはそれで問題ありません。その上で、協調して行けたらと思っています」
「ありがとうございます。宇宙の事となると素人同然です。よろしくお願いします」
「ふふ。こちらこそよろしくお願いします。神魔科学に精通した方はあまり居ませんので頼りになります。私の管理する地上界でも今後魔力を導入したいと考えているくらいです」ん? ああ、女神カリスがいるからな。
「なるほど、そうですか。それなら、お力になれるかも知れませんね」
「ふふふっ」女神セリスが、思いっきり可笑しそう。
「なに?」
「だって、プトレとリュウが他人行儀な会話してるの受ける」
あれ? もしかして、俺たち親友だったとか?
「親友でした?」
「ええと、そうですね。女神セリスと同程度の付き合いでしょうか?」
それって、親友に近いよな? 親友忘れるなんて!
「ご迷惑かけてます」
「いえいえ。でも、楽しく見てましたよ。リュウだと分かった時は笑いました。変わってないなと」
さすがに、どんな顔をしたいいか困った。やっぱり二千年分の記憶は大きいな。
「うう。どういう反応したらいいんだか」
「でも、気にしないでしょ? それでいいと思います。今まで通りです」
いままでの俺って、相当お気楽な奴? ま、俺は俺だからいいか。
「じゃ、これからもご迷惑かけるかも知れませんが、よろしく」
「はい。よろしく」
こうして、初めて友好関係のグループが出来た。
「あれ? プトレって第二神だったの?」俺って、担当神の分際で第二神と親友してたのか?
「そうですね」
「ああ、なるほど。そういう奴か。俺なら嫌いになるかも」
「ふふふっ」
女神セリスに笑われっぱなしだ。でも、なんとか友好的なグループとして付き合っていけそうだ。
* * *
次のグループも、元々は知り合いだったらしい。
ぽっ
「初めまして。ミュージ派の『12sdfklあ』です。ミューゼスとお呼びください。学芸の女神です。よろしくお願いします」
美しい女神様登場。まぁ、女神様はみんな美しいんだけど。
「初めまして。リュウジです。記憶喪失中ですが専門は一応未来視かな? よろしくお願いします」
「はい。大丈夫です。楽しく見てました!」
女神ミューゼスさんも見てたんだ。気さくなタイプのようで助かる。しかし、この世界って、本当に神界のエンタメになってるんだな。
「ミューって言ってくれてもいいよ」どうも言ってたようだ。意外と俗名って使ってるんじゃん。あ、だからリストで見たとき『俗名』表示があったのか。しかし、第二神みんな呼び捨てかよ。恨むぞ、昔の俺。
「はい。では、リュウジと言ってください」
「ふふふ。了解! わたし、そういうフランクなほうが性にあってるの」
「うん。それは俺も同じだ。じゃ、ミューで。よろしくミュー」
「了解! リュウジ」
ちょっと、照れる。
ぽっ
「やっほ~、ミュー」エリス様登場。
「エリー! おひさっ!」
「おお。芸術関係繫がりか?」
「うん? リュウ繫がりだけど?」とエリス様。
「どんな繫がりだよ!」
「まんまよ」とエリス様。意味不明。
「芸術関係の神はこだわりが強いから、あまり交流ないのよね?」と女神ミュー。
「そうそう」
「ふうん。で、芸術に関係ない俺が接着剤になったと」
「そういうこと」
「あ、でも俺、地上界で音楽とかやってたけど」
「うそっ」驚くミュー。
「まじで?」やっぱり驚くエリス様。
「二人の反応が悲しい」
「絵はどうなの?」とミュー。
「そうそう」
「えっ? 絵は、普通に描いたくらいだな」
「普通って?」とミュー。
「普通は描かないよ?」とエリス様。
「なんでだよ。普通描くだろ。ああ、世界によるのか。だから趣味程度だよ」
「へぇ~っ」とミュー。
「いいね。今度写生旅行しようよ」とエリス様。
「ああ、今だと惑星フォトスがお勧めだな」
「あ、そうか! じゃ、行こう、今すぐ行こう」ノリノリのエリス様。
その後、俺は女神ミューゼスと女神エリスとで惑星フォトスの海を描きまくったのだが、期待通りでは無かった模様。
それにしても、やっぱり昔の記憶が無いと困るな。今のところ友好的な神様だったからいいのだが。
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