異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

第168話 惑星フォトス－リゾート計画２－

　まずは関係する女神様と惑星フォトスの開発計画を練ることにした。

　執務室に宇宙神魔科学の女神セリスと神魔科学の女神カリス、神魔道具のキリス、それと地学神の女神スリスを呼んで感触を聞いてみた。

「ストーン神国とも関係しますが、まずは惑星フォトスへの移動手段です」俺は最大の課題から話すことにした。

　惑星フォトスに手軽に行けなければ話にならない。神界からは勿論、惑星モトスからもだ。

「はい。まず、神界からの移動は転移でいいと思います。ただ、人数制限などをするなら転移ゲートを用意しておいたほうがいいかも知れません」

女神セリスが積極的に話してくれた。

「転移ゲート？」

「ええ、特定の地点への転移を簡単にするためのゲートです。自分の神力を使わなくて済むし、転移場所を特定しなくても転移できるので楽なんです」とセリス。かなり詳しそうだ。仕事柄、惑星間の転移とか使ってるのかも。

「なるほど」確かに便利そうだ。

「それに、お土産に地上界の物を持って帰る場合もあるでしょうから、ゲートが全部やってくれたほうが嬉しいでしょう」

「ああ。そうでしょうね」観光のお土産か。ルセ島ではあんまり考えてなかったけど、必要だったかも。

「ゲートなので制限を掛けることも出来ます」

「制限というのは？」

「ゲートを通過した神様だけが施設を利用できるようにすることができます。こうすれば、管理しやすいでしょ？　神力カラーで識別できますからね」

「それが出来れば、神かリングを使うまでもないですね。神力カラーでチェックインか。それは便利だな。あれ？　もしかして、それ二千年前に検討した結果とか？」

「そうです」

「そうですか。じゃ、ひととおり聞いたほうがいいかも？」

「そうですね」

　女神セリスが検討していたという移動手段を教えて貰うことにした。

　　＊　　＊　　＊

「では、神界用ゲートはいいとして、人間用のゲートの話をしましょう」

「人間用もゲートですか？」

「ええ。ストーン神国で作ろうとしていたのは、転移ゲートでした」

　ほんとかよ～。

　てっきり宇宙船だと勘違いしていた。地球の知識で考えているからか？　転移ゲートって人間にも使えるのか？　人間側もこれでチェックイン出来るなら便利だが。

「マジか。宇宙船じゃ無いんだ」

「そうですね。もちろん宇宙船も検討していました。ただ、転移ゲートのほうが運用を統一できるので優先していました。しかし、どちらの案も神力の消費が大きすぎて実現するのは難しかったようです」

「そうなのか」

　確かに、神力にはエナジーモジュールは無いからな。そりゃ、不干渉主義じゃなくても難しいだろう。

「今ある飛行船を宇宙船に出来るなら、一番コストが安くて確実だと思います」

「確かに、今のままでも真空に耐えられますね」と女神化カリス。

「加速制御をちょっと工夫する必要がありますね」と女神キリス。

　おお、さすがに飛行船作りにタッチしたお二方。既に道筋は見えているようだ。

「ちなみに、転移ゲートってどうやって作るの？」

「ええと、私の担当じゃなかったんですけど、妖精族が使ってたゲートをヒントに作ろうとしてた筈です。彼らのゲートは効率がいいので」とセリス。

「えっ？　妖精族？　なんで妖精族？」

「やっぱり、知りませんよね？。私も良くは知らないんですけど、二千年より少し前にアトラ大陸に惑星フォトスから転移して来たのが妖精族です」

「ちょっと待て、じゃ惑星フォトスが妖精族のふるさとなのか！」

「はい。そうです」

「じゃ、惑星フォトスに転移ゲートがある？」

「おそらく、ヘプタゲートの痕跡はあると思います」

「ヘプタゲート！　そうか、妖精族の族長イリィさんの言ってたヘプタって転移ゲートの事だったのか！」

「はい。そうですね」

「ううん。まぁ、いい。で、惑星フォトスから移って来た？」

「そうです。洪水から逃げて来たんです」

「まじか。洪水って惑星フォトスの話だったのか。やっぱり人伝だと間違って伝わるな」

「私は、そう聞いています。命からがら逃げて来た。転移ゲートは彼らが作った物だそうです」

「そ、そうなんだ！　驚いたな！」

　俺が思わず肩の上のミリィを見るとミリィは首を振った。そこまでは知らないようだ。ミリィも驚いていた。

「信じられない」

　そうだよな。

「今からは想像も出来ないかも知れないけど、妖精族はとっても高度な文明を築きつつあったようです。でも、大陸がほぼ水没してしまって、実際に逃げて来られたのはほんの一部。それで、ほとんどの文明を失ってしまったようです」とセリス。さすがに、当時の事情に詳しいな。

　この星に逃げて来るために、転移ゲートを作ったのか！　民族全員で転移しようとしたんだろうか？　けど、一部しかたどり着けなかったのか。　

　ん？　そうなると、リゾート計画には不向きか。俺は改めて惑星フォトスを神眼で調べてみた。見ると、小さな島が点在しているだけで大陸はない。つまり水ばかりだ。これが洪水の正体か！　単なる嵐の話ではない、惑星レベルで水が増加したようだ。水の惑星と聞くと聞こえはいいが、住む場所がないのではどうしようもない。逃げてくるわけだ。

　ただ、リゾートとして考えるだけなら、島があるだけでも問題ないし、水を何とかすれば陸地も現れるなら、俺なら解決できるかもしれない。

「分かった。それはそれとして、その転移ゲートは今も使えるかな？」

「いえ、もう使えません。壊れているかどうか以前に、あの技術は妖精族独特の魔法科学なので今では誰も分かりません。原理的な部分はかなり解明出来てたようですが、今では無理ですね」

　それは残念だ。しかし、妖精族の高度な文明にも興味が出てきた。

「その転移ゲートにも興味はあるけど、今回は安全な宇宙船でいいだろう。軌道計算が出来ればなんとかなるかな？」

「そうですね。マッハ神魔動飛行船なら宇宙空間でも問題無いし、加速方法をちょっと工夫すれば移動出来ると思います。あと二重惑星間の重力の調整と軌道計算を追加するくらいでフォトスへ行けるんじゃないかしら」

　女神セリスは事も無げに言った。流石です。この世界よく見ていたようだし。

　宇宙神魔科学の女神セリス、神魔科学の女神カリスそして神魔道具神のキリスが連携すればマッハ神魔動飛行船を宇宙船にできるだろう。宇宙船建造計画だ！