第166話 ストーン神国と惑星フォトス

 後宮が何かと忙しくなってから俺はあまり気にかけていなかったのだが、王城の隣では大陸連絡評議会本部の建設が始まっていた。


 王城を挟んで教会とは反対側だ。何も神聖アリス教国に置かなくてもいいのだが、俺が発起人だし女神湯という神界の出島があるしということで、大陸連絡評議会本部を置くには絶好の場所だと押し切られた。

 大陸連絡評議会本部には『緊急救助隊』を始め各種プロジェクトの拠点を置くことになる。今だと、近代的上下水道システムや送電の代わりとなる送魔システムなどのプロジェクトが入る予定だ。


 ただ、この本部に、ストーン神国復興プロジェクトを含めるかどうかが悩ましいところだ。もともとは俺の私的プロジェクトだが、大変なところは終わったので、今後の開発は各国に開放しようと思ったのだ。


「まず、ストーン砂漠については既に大河が引かれ緑化も進んでいるとのこと。つまり広大で未開発の土地が生まれたわけですが、この土地の利用を各国に開放してくれるということです」


 議長のナエル王が大まかな状況を説明してくれた。


「国の事情により違ってくると思われますが、繁栄著しいこの世界にあっては参加を希望する国も多いのでないかと思っています」


 ぶっちゃけ、早い者勝ちである。ただ、自国から遠く離れた国の参加があるかどうかだ。


「確かにそうですね。それ以上に、いままで複数の国家での開発など経験がありません。この経験は将来のために有益だと思います」


 ピステルは賛同してくれるらしい。なかなか鋭い視点だ。


「ただ、聞くところによると女神様が直接関与して開発されていたとのこと、私たち人間が参加しても良いのでしょうか? その、下手なことは出来ないのでは?」とラーセル法王。


 なるほど、法王は受け継いだ後の責任などを心配しているのかもしれない。敬虔な信者だしな。


「その心配は、あまりないと思います。『ストーン砂漠』そのものは既に大陸連絡評議会に譲ってもらっています。確かに、神界関連の開発も出てくるとは思いますが、それは女神様と協議していくことになると思います」とナエル王。


「おお。ということは、私たちが女神様に直接ご奉仕できるということですか」


 感激するラーセル法王。いや、ご奉仕じゃなくて。まぁ、してもいいけど。


「は、はい。そうですね」ナエル王もちょっと引いている。

「それは、素晴らしい。ならば、ぜひとも参加したい」


 信心深いオキ神国以外でも、新興国アブラビ王国も積極的に参加を表明した。

 というか、神界と関わりを持てるのだからどの国も参加したいのが本音だ。神聖アリス教国もそうなのだが、この国は俺が勝手に進めてしまうので別だ。


 まぁ、参加しないからと言って差別などないし、大陸連絡評議会に参加してる時点で神界とは関係を持ってるとも言えるのだが、滅亡から回復期を経て繁栄へ向かっている各国が更に上を目指すのは当然といえば当然の流れでもある。

 

  *  *  *


 こうして、ストーン神国の復興計画は大陸連絡評議会の正式なプロジェクトとなった。

 一番大変だった時、女神ケリス&女神コリスが頑張ったからな。もう人間に渡してもいいだろう。ただし、政治形態としては、大陸連絡評議会配下という事で、ちょっと特殊な国が出来ることになる。俺もどんな国になるのか興味があるところだ。まぁ、女神様が見てるから大丈夫か?


「お疲れさん」


 俺は王城執務室でケリス&コリスに大陸連絡評議会の結果を伝えた。


「あっ、はい。あまり大した事してませんけど」とケリス。

「そうか? 大河を作ったり、港を作ったりしたじゃないか」

「そうですね。でも、神化リングで意外とすいすいと出来たので」

「そうよね。神化リングの使い方も上手くなったかも」とコリス。

「ほぉ」


「それとラームジュース!」とケリス。

「うん。美味しいよね!」とコリス。

「そうじゃなくて、細かい作業が捗るのよ」とケリス。

「うん、もちろんそうよ」


 コリスが細かい作業をしたかどうかは知らない。


「コリスって、そろそろ担当神に戻りたいんじゃないか?」


 俺はふと気になって聞いた。


「えっ? いえ、そんなことはありません」

「そのままでいいの?」

「いいということも無いですけど」


「あれ? これって、俺が任命するべきなのか?」


「そうよ。もう、全然分かってないんだから神界のシステム」


 アリスに突っ込まれた。


「あ、ごめん。ん? でも、他の世界とか任されてないけど?」

「ああ、まだ成り立てだからじゃない? 百年もしたら沢山担当させられるわよ」

「っげ。まじが。マズいな、それまでに慣れとかないと。昔の記憶も取り戻したいし」


「そうね。この世界は何とかなっても、他の世界はそうは行かないもの」

「そうだよなぁ」

「ストーン神国どころじゃないな」

「そうね。星一つ渡すわけだから」


「星一つか。ん? そういや、星一つあるじゃん。これ、練習に使うか?」

「あっ」やばいという顔のコリス。

「うん。でも、人がいないからだめよ」とアリス。

「人がいればいいのか?」

「それは、いいんじゃない?」

「住めるのかな?」

「知らない。とりあえず私の管轄じゃないしね」

「惑星フォトスか」

「惑星フォトスよっ」

「惑星フォトスですね!」とケリス。

「わ、惑星フォトスですか~?」とコリス。


 約一名、腰が引けてるし。


「でも、人の居ない星から始めていいのかな?」

「っていうか、この世界の人間が居住したら、アリスの担当になるんじゃないの?」とケリス。


「それは、上位神が決めることでしょ」とアリス。

「ああ、それも俺なんだ」

「当然よ」


「まぁ、じゃあ、試しに開発してみるか? っていうか、それやろうとしたんだよな。たぶん、ストーン神国で」

「そうよね。リベンジよね」

「いや、そんな希望は無いんだけど」


「でも、やる気になれば出来るんじゃない? そんなこと言ってなかった?」

「えっ? そうなんですか~っ」と女神コリス。


 やるとしても百年くらい先の事だと思ってたらしい。


「すぐに出来るよ」

「そんなに、お急ぎにならなくても宜しいのではないでしょうか?」

「なんだよそれ」

「もうちょっとリゾートしてからでも宜しいのでは?」


「リゾート! そうだ、リゾート作るんだった」

「あ、やばい」

「移住じゃなくて、リゾート惑星にしよう。そうしたら、気軽に人を呼べる」

「あああ、あの」


「コリス、リゾート好きだよな!」

「はい」

「ケリスも」

「えっ? 私も?」

「だって、コリスだけじゃ可哀相だろ」

「別に、宜しいのでは?」とケリス。

「ケリス酷い」

「分かったわよ。もう、乗りかかった船よ」


「あ、惑星フォトスまでの船は用意してやるぞ」

「船?」

「うん、たぶんマッハ神魔動飛行船をちょっと改造すれば、そのまま行けると思う。ただ、軌道計算が出来るようにしないとダメだからなぁ。ちょっと待て」

「はい、何時までも待ちますので、ごゆるりと」

「速攻で造ろう」


 ということで、ストーン神国の宇宙港整備が決定された。

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