第134話 女神エリス-動画の女神になる?-
女神キリスからビデオ編集機が完成したと連絡が入った。
南方諸国派遣から帰ってから、あまり経ってないのに、早いな!
「いえ、基本は出来ていましたので、それほど苦労はしてないんです」事も無げに言ってのける女神キリス。
「さすがです。しかも、超小型で凄いです」昔のオープンリールと比べる気はないが、それでも一人で持ち運び可能な編集機を作れるのは神様だからだよな!
「うふふふ。でも、面白かったわっ。ほら、拡大も出来るのよっ」あ、俺が頼んでない領域まで手を出してる。っていうか、映像が綺麗だからズームとかヤバイ!
「おお~、凄い。綺麗にズーム出来ますね! あっ。これ、やばいです」ふと気が付いた。
「やばいかしら?」
「うん、たぶんやばい気がします。っていうか、嫁にコ〇されるかもしれない」
「神だから不死身だけどね」
「嫁はともかく。せめて、ズームは10倍くらいに抑えましょう。でないと、誰も撮らせてくれなくなる」
「ああ、そうね。確かに。でも、あなたのお嫁さんなら肌は綺麗でしょ?」
「そうですけど。あ~、この会話も危険なので、もうノーコメントです」
「はい。わかりました」
「それはそうと……これ、どうしようかな。動画編集するセンスのある人って?」
ぽっ
「とりあえず、私に触らせて。リュウジ」エリス様登場。
「マジですか! エリス様が動画編集してくれるんですか?」
「ちょっと、やってみたいの」
「そかぁ、誰か人間にも覚えさせたいんだけど」
「じゃ、誰か手伝いをお願い」とエリス様。
「え? エリス様のお手伝いできる人間なんているかなぁ?」
「ヒスイとヒラクはどう?」
「あの二人ですか? 確かに仕事はないと思うけど、あの二人で大丈夫かな?」
「うん。たぶん」
「分かりました。二人に話しておきます」
「よろしく~」
「そしたら、編集機は一台じゃ足りないわね?」と女神キリス。
「そうね。三台用意出来るかな?」とエリス様。
「いいよ。じゃ、直ぐに準備するね」
「うん。よろしくっ」
「場所はどこで……あ~、画廊の準備室を使いますか?」
「そだね。そうしよう」
ということで、王城の画廊付属の準備室を急遽ビデオ編集室にして映像作品を製作することになった。
ちなみに、隣の画廊はエリス様が気が向いた時に描いたものを披露する場所なので、画廊周辺は全部エリス様の領域だったりする。
* * *
「まずは、映像作品第一弾として南方諸国で撮った動画をドキュメンタリー風にしてみたい」画廊準備室改めビデオ編集室で俺はプロデューサーみたいなことを言い出した。
「どきゅめんたりー?」
「ああ、ええと南方諸国派遣の旅を解説を加えながら報告するんだ。 俺達と一緒に旅した気分にさせるようなものにしたい」
「ふむ。そういう感じね。私はほぼ一緒に旅をしていたから詳しく分かるし、いいかも」とエリス様がその気になってくれたようだ。
「私たち、行ってないけど大丈夫でしょうか?」とヒスイ。
「そうだよ~。置いて行かれたもん」とヒラク。あれ、僻んでる?
「いや、行ってないからこそ、見たいものとか楽しいと思うことがあるだろ? それが大事なんだよ」
「え~っ、ほんとかなぁ~」とヒラク。
「うん。行った人が楽しむためのものじゃなくて、行かなかった人が楽しむための物なんだよ。やり方次第では旅に行った人より楽しくなるような」
「あ~っ、なるほど! 私はそういう役割だったんですね!」とヒスイ。
「そうか~、そういうこともあるんだ~っ。うん、わたし頑張る~っ」ヒラクも、やる気になってくれて良かった。
「うん、これで作る目的がはっきりしたから、大丈夫」とエリス様。
「じゃ、エリス様。よろしくお願いします」
「リュウジ、任せて」
「はい」
でも、よ~く考えると、エリス様に任せると、とんでもないものになることを俺は忘れていたのだった。
* * *
そうは言っても、新しい試みだ。何か困ったことがあるかもと、しばらくして編集室を覗いてみた。
俺が準備室に入ると、そこは南国の島だった。
「なんだ? どうした? 俺、転移したのか?」そこは、あの妖精の森だった。っていうか、ミリィまでいるし。
「あ、ワタシがいる!」俺の肩にもいた。一瞬、二人いて嬉しいような気持ちがよぎる。
「何これ? どゆこと?」
「大成功~!」とヒスイ。
「マスターびっくり~っ」とヒラク。
「ふふふ、リュウジをびっくりさせた~!」とエリス様。妙にはしゃいでる。
「エリス様、これはいったい!」
「たまには、リュウジを驚かせないとねっ」と胸を張るエリス様。
「エリス様、怖い!」
「そうなの、そうなの!」何故かエリス様、とっても嬉しそう。
「これ、俺達が持ち帰ったビデオから作ったんですか?」
「そう。凄いでしょ? 空は一部疑似的な補完だけど、後は実映像を使ってるよ」とエリス様。もう、既に怪しいことを言い始めてるし。特殊な技法を使ってるっぽい。
もう、パノラマ通り越してVR状態だ。多分、これ飛行船から取ってたパノラマ映像から作ってると思うけど、リアルすぎる。
「凄くリアルですね。ってことは、上空から降りてくるときの映像とかもあるんですか?」
「うん、さすがにリュウジ。鋭いね。これより前にちゃんと入れてるよ」とエリス様。
「そうか、さすがにこれはビビりました。こうなったら、もうナレーションを考えたほうがいいな」
「既にセシルに頼んである」
「おお、さすがエリス様、わかってますね!」
「もちろん! 私の仕事に妥協はないの」
「素晴らしい」てか、凄い。
だがこれ、素晴らしすぎる領域に突入しかけてる気がするんだけど、大丈夫かな? 一般公開できるかな?
* * *
で、上映会当日。俺の認識がどんだけ甘かったか証明された。
エリス様、やっぱりとんでもないです! サロンに南方諸国へ行って来たメンバーと関係者を集めての試写会だったのだが、驚きの声が上がる。
まずは美しさ。
「すご~い、きれいっ。すてきな場所だね?」とニーナ。
「なんか、実際に見た時よりきれいな気がするんだけど?」と美鈴。
次にシーン。
「こんな場所あった?」と美鈴。
「うん、あったよ」とアリス。
「え~っ? もっと見ればよかった」
「わたしも、チラッとしか見なかったから」とアリス。そう、人間は同時に二つは見れない。神様でも普通は同じ。上を見ながら下は見えない。つまり、半分以上は見てないんだよな。きょろきょろ出来ないシチュエーションてのもあるし。
ビデオ作品で見ると、最高のタイミングでナレーションが説明してくれるのもいい。現地で見るより理解しやすいわけだ。
「何故だ。なんか違うぞ? いや、確かに見た覚えがあるんだが全然違う!」とピステル。
「私なんか行ってたのに、初めて見るシーンが多いんだけど?」と美鈴。
「すご~いっ。ワタシ、故郷に戻ったのかと思ったっ」とミリィ。
「っていうか、海底のシーンなんか明らかに見てないものあるよね? 多分飛行艇の上とか、下とか?」とピステル。
「そうそう。飛行艇の上下にそれぞれカメラを設置してるからね!」
「あのシーン見てたけど、別の事考えてたからな~っ」と美鈴。
「ああ、私は、シュリが使徒になって、女神様に挨拶されて……それ以降記憶がないのです」約一名、違う理由で驚いてるが。
見た人によって、それぞれ感じ方は違うけど、総じてカットの美しさ、シーンの説得力が素晴らしいとの評判だった。それと、セシルのナレーションも神がかっていた。ん? もしかしてセシル、神化してたりする?
「それにしても、最後のシーン。あれどう見ても海で飛んでるよな? 女神様とか使徒とかバレバレって感じじゃないか?」アマデ島の海水浴のシーンだ。
「え~っ、でも最近魔法ドリンク解禁してるから大丈夫だよ。魔法的な海水浴だよ」と美鈴。まぁ、確かに美鈴のいう通り、最近は一般人が魔法を使い出したからな。なんか、あのシーン見たら魔法免許とか、さらに過熱しそうな気がする。
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