第128話 南方諸国へ-「セルー島」-首都ラースへ
「あっ」
ミリィとの空中散歩から帰って来て、俺はいいことを思い付いた。
「女神隊集合」美鈴、大分鋭くなってるな。
「いや、違うって。個人的な話だから」
「はい、個人的なトンデモ話をどうぞ」と美鈴。
「お前ら……まぁ、楽しいならいいか」
「うん、楽しみ~」とエリス様。
「いや、お供えしたラームを転移しなくてもいい方法を思い付いただけだけど」
「へぇ~っ。どうすんの?」とアリス。
「普通はダメよね?」とイリス様。
「うん、ダメなのだ」
「リュウジだめー」おいっ。
なんか、思いっきり楽しそうに聞いている女神様に、突っ込む気も失せた。
「だから、ラームはここと条件が同じだったら育つんだろ? だからここの土を貰って、後は常にここと同じ陽光、温度、湿度になるような空間を作ればいいわけだ」
「どうやるの?」と美鈴。
「へ? ここに環境を調べる魔道具を置いて、俺は疑似セルー島BOXみたいな物を作ればいいじゃないか。神力波で繋げば、どこに居てもBOXの中はセルー島」
「「「「「「「きゃ~っ」」」」」」」
* * *
まぁ、俺の思い付きはともかく、実際に神魔科学の女神カリスと神魔道具の女神キリスが興味を持ってくれたので作って貰うことにした。まぁ、セルー島の環境を切り取って持って行くようなものだ。俺としても面白いと思ってる。まぁ、コスト考えなければ何でも作れるようになるからな。エネルギー革命してるからコストも大した事ないし。あ、気圧まで合わせるのは無理か?
で、話してみたら、すぐに出来てきた。似たようなものがあったのか? まぁ、ハウス栽培とか環境を作るとこは同じだからな。
で、完成したものは正式名称が疑似環境栽培キットと言うらしい。ん~、なんか忘れそうなので「セルー島BOX」と「測定棒」でいいだろう。
要するに測定棒を土に刺しておけば、「セルー島BOX」の中は測定棒を刺した場所と同じ天候になるわけだ。
ん? これ、一度環境の変化を記録しておけば。後は繰り返すだけでいいかもしれない。とすれば、一番出来のいい年を繰り返したり出来るってことだな。最高品質の年の気候を再現できるとしたらどうだろう? xxxx年もののワインを毎年作れるかも? いや、そんな簡単なわけないか。土壌の状態があるからな。でも面白い。
早速作ったセルー島BOXにラームの木を土ごと移し替えてみた。場所により作付けをずらして果実の収穫が途切れないようにしているようなので、俺も四つのBOXに入れてみた。
「私のために、こんなに素晴らしいものを作ってくれてありがとう。一生忠誠を誓います」とミリィ。どこかで、聞いたようなセリフだなぁ。ちらっとミゼールを見ると。にっこり笑われた。同類か。
「あ? いや、結局は俺のためになるものだから、気にするな」
* * *
「でも、何かあったら途切れるよな~」出来上がって並べられたセルー島BOXを見ていて、これでは不十分だと気が付いた。収穫をずらしても、そんなに上手くはいかないだろう。いつか絶対途切れてしまう。それはまずい。何か考えないと。
ん? これ普通に、ジュースでいんじゃね?
「ミリィ、ラームをジュースにしてもいいか?」
「ジュース?」飲んだことないらしい。
さっそく試しに作ってみた。まぁ、絞って滅菌するだけだ。これで、必要な成分が取れるなら長期保存できるだろう。もちろん、セルー島BOXで新鮮なラームも作るけど、切らした時はこれに頼る。
「うん、おいしぃ。マスターありがとう!」とミリィは喜んでくれた。俺も飲んでみたが、これは普通にいける。
「これ、私も飲みたい!」と美鈴。
「美鈴、これミリィの命の水なんだぞ!」
「分かってる! だから沢山作ろう」飲むのは止めないんだ。そうだと思った。
長期的に問題ないかミリィのチェックが必要だけど、とりあえず作れるだけ作っとこうと瓶を用意して沢山作った。ミリィが持って飲めるように小さなボトルにしておけばいいだろう。
これ、栽培が上手くいったら、大々的に作ってもいいと思う。食べて良し、飲んで良しだ。だって、ラーム旨すぎ。
* * *
「このセルー島BOXじゃ無くても育つかもしれないから、鉢植えも貰っとこう」普通の環境で、どう育つのか見てみたい。
「ワタシも育てたい!」ミリィも育てるのか。
「私も試していいかしら?」ネムが興味を示した。この娘、地道なことに興味を示すな。
「当然わたしたちもね」アリス達、絶対やると思った。
「私もね」美鈴も好きだもんなラーム。
「わしもやってみたいのぉ」意外なことに、王様たちまで育てたいと言い出した。確かに旨いけど、植物の世話なんて出来るのだろうか? 従者の人達が可哀そう。
仕方ないので、希望者全員の鉢植えを用意して貰った。神官のセルナさんが、何故か楽しそうに用意してくれた。女神様一行だからかな?
ところで、後で聞いたがミリィは妖精族の王女らしい。まぁ、あまり家系にこだわらない種族のようだけど。もちろん、この妖精族にも男がいるが成人するのは圧倒的に女が多いらしい。何故だろう?
* * *
その後、俺達は、「妖精の森」を出てこの国の首都に向かうことになった。神官が連絡してくれたらしく迎えがやって来た。
「セルー王国、国王マセルと申します。ようこそ我が国へ。歓迎いたします」
「大陸連絡評議会代表のピステル・カセームです。お出迎えありがとうございます」
マセル国王は初老の実直そうな人物だった。ひとまず安心と言ったところだが、俺の肩に止まったミリィを見た途端、驚愕の表情を浮かべた。
「こ、これは、妖精様……」そして、俺の横にいるアリスも見てさらに驚愕の表情。
「こ、これは、女神様」さすがに、マセル跪いてしまった。まぁ、本当に女神様だしね。しかも一人じゃないし。女神様達だし。
女神様、なんで帰らないかなぁ?
ー だって、ラーム美味しいし。
ー 我もラームは好きなのだ。
ー ラームの絵を描きたい。
ー はい。聞いた俺が悪かった。そう言えば鉢貰ってたよね。ずっといる気だよね。
もうバレバレなので、ピステルとも話したが、俺達は女神様と一緒に行動していることにした。
「マセル王、面を上げてください。そうだ、首都まではどのくらい距離がありますか?」
この国としては豪華な馬車を用意してくれているようだが、距離があるなら飛行船を置いていけないし、セルー島BOXも持って行きたいところだ。
「はい。馬車で一時ほどです」
「一時って、二時間くらいかな? だったら、飛行船で行きましょう。馬車も拘束フィールドを使えば運べるでしょう」
「は、はい? そ、それでは、お願い致します」
マセル王、何を言われてるか分かってないらしい。説明するのも面倒なので、さっさと迎えに来た王様一行を飛行船に乗せて首都ラースへ向かった。
まぁ、馬車で二時間だと、あっという間というか。場所を教えて貰って位置を確認したら到着していた感じだ。
「ああ、女神様の御船にご招待いただき真にありがとうございます。一族のこの上ない誉と……」
「王様、すみません。もう着いちゃいました」
「はっ? まさか。おおお。ここはラースです」はい、知ってます。
「なるほど。さすがに、私共には想像も出来ないことです。なれば、この体験は一生の宝物となりましょう」とマセル王は痛く感じ入ってるようだった。
うん。夢に出るかも。
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