第115話 無重量レジャーランドを作る

 マッハ神魔動飛行船が出来た時、無重量遊園地とか作ったら面白そうだなと思ったが、ある日の夕食後に談話室で披露してみた。


「む、婿殿、それは何時作ってくれるのじゃ?」


 ヒュペリオン王が、思いっきり食いついて来た。


「へ? いや、作ったらオモシロイかなと?」

「おもしろい! それ、絶対面白いから、直ぐ作ってほしいのじゃ!」


 そういや王様、いつまで居るんでしょう?


「リュウジ殿、それは是非に実現してもらいたい!」


 ピステルまで食いついて来た。


「まだ居たんかい」


「酷い。大陸連絡評議会があると思って待ってただけなのに」

「分かった。悪かった」でも、終わったよ?


「で、いつ作ってくれるのじゃ?」とヒュペリオン王。


「なんで、そんなに食いつくかなぁ。王様も、ピステルも」


「な、婿殿。婿殿は自分で飛べるから、そんなことを言っておるのじゃ」

「そうだよ。ヒップ王のいう通りだよ」とピステル。


「ひ、ヒップ王とは誰のことじゃ?」

「あ、だめ? ヒュペリオン王を略してヒップ王」


「なんじゃその略し方は! ペリオンとかペリ君じゃろ?」

「じゃ、ペリオン王で」

「とにかく、わしらも飛んでみたいのじゃ!」

「そうだよ。ペリ君のいう通りだよ」ペリオン王どこ行った?


「う、うん。なんとなく分かった」

「婿殿、そこはなんとな~くじゃなくて、ぜひ確約してほしいのじゃ」

「そんなにですかぁ」

「そんなにじゃ」

「そんなにだよ」

「そんなにです」とヒスイ。

「そんなにだよ~」とヒラク。


 南北大陸から付いて来た侍女ヒスイとヒラクまで食い付いて来た。


「そうか、じゃ~作ってみるか」

「おおおおっ。さすが婿殿」

「やったね!」

「すてきっ!」

「やった~」お前ら、遊ぶ気満々だな。侍女はどうした。


 まぁ、この城に出入りする人たちは、俺や嫁達が飛ぶのを見ているだけに一度飛んでみたいと思うのかも知れない。


  *  *  *


 ということで、ミルルとランティス、スペルズ兄弟と話してみた。


「おおおっ、それ待ってました~」


 ランティスまで食い付いて来た。


「へっ?」

「いや、いつかきっとリュウジさんが作ってくれるって信じてました~っ」


 思いっきり前のめりのランティス。


「いや、君達が作るんだけど?」

「あ、そうですね。でも作るとなると大がかりになって大変じゃないですか。資金も必要ですし」


「ま、そうだな」

「空を飛ぶってどんな気持ちなんだろうって、ずっと思ってたんですよ」


 ランティスはそんなことを考えてたようだ。


「そうだよね。兄貴と魔道具作りながらも経験ないから分からなかったんです」スペルズも同じか。


「ああ、なるほど。魔道具作りにも生かせるか」

「はい、絶対生かせます」とランティス。


「なるほど。ま、外周エンジンの空間加速があるから、あれで重力を打ち消すだけで出来ちゃうけどな」


「そうですね! 真空膜フィールドはそのままでいいんですか?」とランティス。


「いいだろう。中で騒いでる音が外に漏れないほうがいい。そうすると換気装置は必要だな。空気浄化装置も付けとくか」

「はい。あとは、念のためクッションを敷きますか?」


 なんか、いろいろ考えてたっぽいな?


「うん。それと、無重量で飛べるように、小さい加速器は必要かもね。ベルトに付けて加速は体全体に掛ければ本当に魔法で飛んでるみたいになる」


「ああ、なるほど。魔法体験ですね!」とスペルズ。

「そう。まるで魔法使いになったような飛翔体験。魔石で、弱い加速を掛けよう」


「方向とか、オンオフは?」とスペルズ。

「そうだな。足の向きで方向、オンオフは手かな」


「おお、ホントに飛べるんだ!」


 ランティスは、既に出来上がった時のことを思い描いてる模様。


「やったね兄貴!」

「クッションは、どうするかな?」


「クッションも必要だけど、ベルトに付ける飛翔装置を安全装置にも出来るんじゃない? 浮遊装置が壊れた時、安全に着地できるような」これはミルルだ。


「そうですね! さすがミルルの姉貴!」とランティス。

「いいですね!」


 うん。これはいけそう。


  *  *  *


 で、プロトタイプが完成して王城前広間でお披露目となった。


 円形のクッションの上に無重量空間が広がる様になってる。

 この上に球体になった真空膜フィールドがあるので飛び出さないし、透明で周りも良く見えるので本当に飛んでるような気になる。

 普通の服装のままで、飛翔ベルトを付ければすぐ遊べるので手軽だ。


「ぬおおおおおおっ」


 ヒュペリオン王が真っ先に飛び出した。歓喜の雄たけび!


「父上、どこにいくのじゃ~っ」


 心配でリリーも来てる。勿論、リリーはベルト無しで飛んでいる。


「こ、これだ~。これを待っていた~っ」


 公務を放り出して来てるもう一人の王様、ピステルも大はしゃぎ。


「兄様~、こっちなの~っ」とクレオ。

「あなた、ちょっと待ってくださいっ」


 珍しく一緒に来てるピアス妃。意外と興味があるようだ。


「ヒラク、私たちも行くわよ!」

「はい、ヒスイさん、ついて行きます!」


 そういえば、この二人の侍女、どちらも頭文字がHなんだよね。H&Hズ?


「Hじゃないけどね!」そうですね。


「だ、だんなさま。わたくし、もう思い残すことはございません」とバトン。

「バトンまだまだ働いてくれよ~」


「私たちも行きますよ」と侍女長のマリナ。

「「「「「「はいっ」」」」」」と侍女達。


「メイド隊もいきましょう!」

「「「「「はいっ」」」」」


 メイド隊って、いつ出来たんだろ~っ。


「セシル、これが飛翔なのね。ああ、私、ついにこの日が来たのね」とネム。どんな日だろう?

「ネム、落ち着いて。まだ、使徒じゃないのよ。使徒の練習よ」


 え? 使徒の練習? いつの間にそゆことに? てか、使徒希望だったのか?


「いいこと! セシル先輩、ネム先輩に続くのよ!」

「「はい」」えっ? シスターまで? てか、ネムはシスターじゃないけど?


「行くわよコリス!」

「待ってたケリス!」


 君たち、なんでいるのかな? っていうか、それ何処かで聞いたことあるよーな?


「お前ら何でいるんだよ!」

「だって、この遊び、神界リゾートにも使えるんじゃないかと思って」


「いや、神様なんだから、自力で飛べばいいじゃん!」


「そこを、あえて神力を使わないからいいんです。そういう練習をしてない神様も多いしね。むしろ、神力使ったら失格で」

「なにそれ。意味不明。てか、神力の練習したら?」

「「え~~~っ」」


 何か期待してたのかも知れないが、切りが無いので無視。

 あと、どうでもいいけどケリス&コリスって微妙にH&Hズとバッティングしてるんだよなぁ。


  *  *  *


 プロトタイプの無重量空間だったが、予想をはるかに上回る人気だった。

 遠くから見ると金魚鉢みたいで微妙だと思ってたけど、外から見た人たちが集まって来てさらに盛況に。

 まぁ、いいか。水草みたいな邪魔もの入れても面白いかもな。


 ただ、やってみて気付いたけど、これ意外と疲れるようで、みんなヘロヘロになるまで飛んでいた。

 思った以上に体力を使う。というか皆体力がない。ってことは、もしかしてこれスポーツとしていけるんじゃね? 安全性さえ確保できれば子供も遊べるし、いいかも。


 ってことで、正式に無重量レジャーランドとしてオープンすることになった。魔法のある世界の遊園地はこうだよな?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る