南北大陸編
第82話 眷属にしちゃうぞ1
出産ラッシュも一区切りつき、産後1か月を過ぎると宮廷内も落ち着きを取り戻してきた。
普通、出産祝いとなると親族などがやって来るんだろうけど、これ以外の訪問は基本お断りした。
俺が第一神様の配下になったせいもあって会ったことない神様まで来たがってたようだけど、嫁が疲れちゃうからね。産後は安静にしないとダメだと使徒テイアから厳しく制限されている。まぁ、女神様は来ちゃったけど。あれはしょうがない。顔見知りだし。約一名どさくさに紛れて来た初見の方がいたが。あ、一応二度目か。
それはそうと、ついででもないが俺の眷属になりたい神様がいるんだそうだ。
俺なんて第一神様の直下とはいえ最下級だろうから、俺の眷属になっても良い事ないと思うんだけど?
そもそも、俺のグループなんて特徴が無いと思うと言ったら、お前の所ほど特徴がある派閥は無いとウリス様に言われた。確かにそれが今回の騒動を引き起こしたとも言えるのだが。
* * *
「じゃ、アリス。降りてきてもらって」
俺は、俺の眷属になりたいという奇特な神様を待っていた。
俺が神界へ行ってもいいのだが、ここがホームグラウンドだから王城のサロンに来て貰うことにした。
「では、どうぞ」
ぽっ ぽっ ぽっ ぽっ ぽっ ぽっ ぽっ
神界から神様たち七名が顕現してきた。
「えっと、イリス様、ウリス様、エリス様は、もともと俺の派閥って言ってたけど、派閥イコール眷属でいいの?」
一応確認してみる。眷属を強制する気はないからな。
「神界では、そういうことになってるわね。そもそも同じ系統じゃないと、神力の会話も出来ないでしょ?」とアリス。
なるほど。当然と言えば当然だな。
「分かった。俺の派閥になるってことは、俺の眷属になるのを了承するってことでいいんだな?」
「そうね。眷属になりたいってことよ」
ん? ちょっと待て。眷属になると、考えてること全部筒付けになるんだけど? それを、了承してるってことなんだよな? なんか、まだ違和感あるんだけど。っていうか、女性の場合は裸を見るような感覚があるんだけど抵抗ないのかな?。俺がおかしいのか?
「ふふ。リュウジがまだ、『神力リンク開放』にびびってる」
アリスが俺の思考を読み取ってみんなにバラした。
『神力リンク開放』というのは、神力による会話が可能な状態のことを言う。
神力で繋がった眷属だけに許された能力だが、これの接続/遮断は上位神がコントロールする。今までは上位神の女神アリスがやってたので、俺は気にもしなかったのだが、俺が自分でオン/オフするとなると、ちょっと戸惑う。
この能力の恐ろしいのは、頭で考えたこと以外に感情まで伝わるということだ。
これは、なかなか慣れない。頭の中でも嘘は言える。しかし、感情は嘘をつけないのだ。こんな力を握られて、平気なのかな?
「あら、まぁ」とイリス様。
「リュウジ、意外とシャイなのだな」とウリス様。
「リュウジ、可愛い」あれ?
エリス様、『怖い』を言わないの?
まぁ、確かにエリス様のほうが思いっきり年上だよな? てか、みんな年上か?
「うふふ。じゃ、三名はいいとして。あと四名に自己紹介して貰おうかしら?」とアリス。
俺は、残る神様たちを見た。女神様四名だ。
「ああでも、まず俺から自己紹介しよう。俺はあまり知られてないからな」
「そう言えばそうね。じゃ、よろしく」
「初めまして。リュウジ・アリステリアスです。先日、うっかり第一神様の直下に配属になってしまいました。新参の派閥ですが、こちらの女神アリス達と楽しくやっていきたいと思ってます。良かったら仲間になってください」
言ってから思ったけど、俺は何で神界の派閥作ってるんだ? 地上界にいるから、帰宅部みたいなもんか? まぁ、今更だけど。
「では、まず私から。初めまして。私はzx。、cmvです。治癒師の神をしています」
優しそうな印象の女神様だ。
「すみません、俺がまだ名前を発音できないので、俗名を付けさせて貰ってます。オリス様と言ってもいいですか?」
「オリスね。はい、分かりました」オーリスに近い発音で承諾した。女神オーリスでもいいか。
そういえば、正式な神様になったのに俺はなんで発音出来ないんだろう? っていうか、俺の名前ってリュウジのままでいいのかな?
ー 後で連絡が来る筈よ。
アリスが神力リンクでフォローしてくれた。
「次は、私ね。この順だと俗名はたぶん、カリスですね。初めまして。神魔科学の神をしています」
細面の実直そうな印象の女神様だ。学者にしてはあか抜けた感じだが表情はちょっと硬い?
「はい、カリス様でお願いします。もしかして、ポセリナさんの上位神様ですか?」
「はい、そうです」
「そうですか。ポセリナさんを派遣して下さってありがとうございます。とても優秀で、助かりました。彼女のおかげで神力フォンが出来ました!」
「それは良かった。ふふ。神力フォンには私も驚きました。でも、素敵な神魔道具ですね。私も、とても気にいってます」女神カリスは優しい笑顔で言った。
「はい。大成功です」
「次は、ワタシ? この流れだとキリスかな? 神魔道具の神をしているよ」
今度はとってもフレンドリーな女神様だ。小柄でどこか子供っぽさもあって面白い。
「キリス様! 俺、神魔道具作り始めたばかりですが、ハマってます。よろしくご指導ください!」
「はい、神界から見てました。とっても楽しそうで、次は一緒にやらせてね!」
ほんとか! そう言って貰えて嬉しい。
「ぜひお願いします!」
ずっと見ててくれたなら、直ぐに仲良く出来そう。
「最後は私ね。俗名はクリスかな。薬の神をしてるよ。なんか、薬のクリスって冗談みたいだけど」
この女神クリスも女神キリスに似てフレンドリーな感じだ。女神キリスのほうが、少し大人っぽいかも?
「あれ、なんでだろ。運命ですかね?」
ちらっとウリス様を見てしまう。
「我は何もしていないのだ」
「そうですか。たしか、ポーリンさんの上位神様ですよね。ポーリンさんも優秀な使徒で大変助かりました」
「それは良かった。ポーリンがリュウジは薬の専門でもないのに発想が面白いって言ってたよ。よろしく」
「了解です。まだ、第二の特効薬とか無害化魔法共生菌の配布とか大変なので、心強いです」
「うん、クリスも一緒に頑張るよ」
「ありがとうございます」
なんとか全員を眷属に出来た。
「眷属希望の神様っていうから緊張してましたが、なんだか元から仲間って感じの方ばかりなので安心しました。どうぞよろしくお願いします」
俺は改めてそう挨拶した。
「良かった。リュウジに気に入って貰えたみたいで。じゃぁ、さっそくみんなで……」とアリス。
「みんなで?」なんだろう。宴会か?
「女神湯よ~っ!」
そっちかい!
「きゃ~、入りたかったの~っ」と女神オリス。
「やっと念願の女神湯ね!」と女神カリス。えっ?
「わたしも、わたしも。もう、ミルルちゃんと変わりたかったの」と女神キリス。そんなに前から見てたんだ。
「とってもいい香草を持ってきたのだ」と女神クリス。おやっ?
「リュウジ早く! 行くわよ」
なんか、アリスが妙に張り切ってるんだけど?
「なに? 俺も一緒に入っていいの?」
「何言ってんの、あんたと一緒に入りたくてみんな来てるんだけど?」
「えっ? そうなのか? いや、そんなことないだろ?」
「それが、あるから不思議なのよ」
不思議なんだ。
「それって、一緒に寝たいとかもあるの?」
「うん、それもある」あるのか。
といっても、女神様だから単なる添い寝だけど。
「まぁ、ご自由に」
「そうね」
考えてみれば、神力リンク開放で、考えも感情も筒抜けになるんだ。それは夫婦以上の関係とも言えるよな? もしかすると、自分自身に近いのかも? なんか、人間の感覚からずれて来てる気がするなぁ。大丈夫かなぁ?
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