星樹人優生思想

亜未田久志

管理する側とされる側


 遠い星のガンマ線バーストによって滅びた地球文明。

 しかしかろうじて生き残った人類は。

 量子回路を植物に埋め込み培養する実験に成功した。

 新たなテラフォーミングの形。

 自然形成される量子コンピュータ。

 それが星系樹せいけいじゅだった。

 我々、人類は星系樹が地球を覆う頃には。

 数百人程度であり、再興は絶望的であった。

 そこで生まれたのが新人類「星樹人せいじゅじん

 光合成で生きる有機生命体。

 星系樹のコンソールの役割も果たし。

 彼らは地球の環境をコントロール化に置くと。

 人類の復興プランの再計算を始めた。

 そんな新人類の登場に我々、旧人類は二分された。

 敵視と友愛だ。

 そして私ことアンリ・スコットランドは星樹人優生思想という派閥に属していた。

 星樹人とよりよい関係築く事を理念としている。

 私の意中の星樹人は「リインカーネーション」だ。

 略してリインは私の意中の女性型星樹人だった。

 荒廃した世界で同性愛、異種族愛を語るなどナンセンスだ。

 私は猛烈なアプローチを繰り返す。

「ねぇリイン、デートしない?」

「ミズ・アンリ、それは私の役割から逸脱しております」

「つれないなぁ一度だけでいいからさ」

「私は噛蟲イーター駆除任務がありますので」

 噛蟲。

 ガンマ線バースト後に宇宙から飛来した地球外生命体。

 星系樹を害する人類種の天敵。

 星樹人はD‐BlockWeaponを用い、それを排除する。

 およそ五メートルはある巨体を星樹人の全エネルギーを用いて排除する。 

 勿論、その星樹人の個体は死亡する。

 しかし星系樹に自我のバックアップを取っており。

 彼らは半不死性を手に入れている。

「じゃあその噛蟲退治手伝わせて」

「足手まといです」

「いじわる」

「死んでも知りませんよ」

 私はそんなリインの戦う姿が好きだった。

 命を燃やす一瞬の煌めき。

 それはまるで超新星爆発のようで。

 そんなこんなで私達は星系樹の森へと足を踏み入れる。

 カチカチと鳴る音。

 硬い甲殻、鋭い顎。

 異形の巨大昆虫種。

 それが噛蟲だった。

 D‐BlockWeaponを起動するリイン。

 それは身の丈ほどの砲塔。

 そこに太陽光から集めたエネルギーを充填させ。

 撃ち放つ。

 色とりどりの光線が流星のように流れる。

 噛蟲を葬りさると。

 あっけなくリインの身体は崩れ落ちた。

 私は近くの末端枝まったんしから星系樹へとアクセス。

 リインの身体を再生産、自我のバックアップとの統合を要求する。

 こんな私の態度を星樹人優生思想の者達は「異常だ」と断ずる。

 散る花を美しいと思うのが何が悪いのだろう。

 地面から生えるリイン。

 一糸まとわぬ姿に思わず赤面する。

 星樹人と人類の身体的特徴の差異は外面からは分からない。

「これ、服、もってきたの」

「……どうせ燃え尽きるのに」

「素敵でしょう?」

「……そうかもしれません」

 星系樹より全端末へ――個体名リインカーネーションにバグを確認。

 無視して構わないモノと判断し放置を決定。

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星樹人優生思想 亜未田久志 @abky-6102

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