僕が居ない君へ

喪失感に押し潰されてしまった人に掛ける言葉が見付からなかった。

彼の心情に寄り添って、少しでも楽にしてあげたいのに言葉が出てこない。

どんな言葉も薄っぺらで、腫れ物を綿で包む様な、無理に繕った言葉しか思い浮かばなかった。

きっとどれも正解で、きっとどれも不正解。

言葉はなんて脆弱で、頼りのない物なのかと歯痒かった。

ふー、私って情けないな。

小さく言葉にしたら涙が溢れそうになった。

私は恐らく人並みに幸せな家庭で育って、恐らく年相応に失うと言う事の経験が希薄な生活を送ってきた。だから同じ気持ち、同じステージに立った言葉なんて持ち合わせていなかった。

きっとそれでも彼はどんな言葉でも笑って、ありがとう、と言ってくれるのだろう。そもそも何も望んでいないのかもしれない。

どこか他人に、何かを期待することを諦めているように見えていたから。

それでも彼の心をそっと支える何かを見付けたかった。必死に考えた。でも駄目だった。何も浮かんで来ない。

なかなか視線の合わない、少し上を見ている君の瞳をしばらくの間見つめていたら、ぶわあっと感情が込み上げて来てしまって、訳も分からずに言葉が溢れた。


ゔぅっ

わっ私が支えるからっ

今は悲しくても、辛くても、いつか君が寂しくないようにっ

私が側に居たいからっ

何にも出来ないし、上手いことも言えないダメダメな私だけどっ

それでもっ

君の側に居させてくださいっ

ゔぅぅ


それはそれは見事な号泣っぷりで、鼻水まで出ちゃうし、上手く聞き取れたかも分からない。

あれ?君の周りだけ時間が止まってるのかな?と思うほどに体も表情も静止している。

あーテンパって完全にやらかしたかもしれない。何やってんの私っ。バカバカッあほうっ。

そう思ったらますます涙が出てきて収拾がつかなくなってしまった。

涙を拭くために服の袖で必死に顔を押さえる。

すると静かに引き寄せられて大きい手が優しく頭を撫でる。

あれ?今、私抱きしめられてる?

瞬間、涙腺が崩壊した。そもそもしていたけど。

嬉しくて赤ちゃんが引くぐらい泣いた。

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