不器用に笑う君へ
あっお久しぶりです。
柔らかい聞き慣れた声だった。
お久しぶりです。お仕事辞めちゃったかとおもいましたよー。どうかされたんですか。
ちょっと不躾な質問だったかな。
いやあ、あはは、ちょっと色々有りまして。
少し困った顔と笑顔が混ざった表情。
目尻に寄るシワを眺めた。
顔色は良いのだけど、少し痩せた様に感じる。
あんまり会話が弾みそうにない空気だな。
ご苦労様です、またお願いしまーす。と見送った。
あー、なんかやらかしたかなあ。聞いちゃまずかったのかなあ、でもんそんな変なこと聞きてないよねっ、あーでも反応微妙だっしいー、余計なこと言ったかなー。いやーでもあのくらい普通だよね。ってか私の顔変だったのかな。化粧崩れてたかなー。髪の毛変なことなってたかなー。いや分からんし。はあーもう。頭の中はグルングルンと言葉が回る。
お兄さんが元気だった嬉しさ半分、後悔半分。
他の人からしたら取るに足らないやり取りが、気になってしまって仕方がない。困った。これは一日頭から抜けないな。
ずっとモヤモヤと考えていたら、いつの間にか退社時間になっていた。頭痛起きなかったな。
ふう、息を吐き伸びをする。まあ良いや帰ろう。
帰宅してソファに勢いよく腰を下ろした。考えごとをし過ぎでここまでどうやって帰って来たのかと、不思議な感覚に陥った。
まあ良いやまた会話できたらリベンジだな。
自分でも良く分からないポジティブな場所に着地した。
指を三回鳴らす。ブゥン、と電子音がした。二回鳴らす、照明がオンになる。スピーカーAIがテレビを点けるか聞いてくる。気分ではなかった。
先にお風呂済ませちゃおう。
お風呂をためて。
かしこまりました。
ふう、息を吐いた。
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