不器用になく君へ

帰宅。

何とも言えない気持ちになっている。

とりあえずシャワーを済ませるが、頭を洗っていていも、体を洗っていても、髪を乾かしていてもひたすらに考えてしまう。抜け出せる気はしなかった。

完全栄養食のブロックを齧りながら、ああ、やっぱり金が無いよな、とつぶやく。

少しの贅沢のビールでさえ飲む気が起きない。

どんな気持ちであれ明日は来るし、仕事をしなければいけない。さっさと寝てしまおうと横になったが眠れる気はさらさらしなかった。

どれだけ世の中が便利になっていっても、捨て猫問題は無くならないし、カラスや鳩だってわんさか居る。

そう言えばカラスって他の動物虐めるんだっけ、嫌なイメージがよぎって思考を変えようと努める。

結果は言わずもがな。

明け方に少しうつらうつらしたがほぼ眠れなかった。

仕事が始まる。

いつもの思考の時間が始まる。

考えるだけで何も出来ない自分が嫌だった。言い訳を探して都合の良い落としどころを見付けようとしている自分が嫌だった。

父一人子一人の生活だった。父を困らせないよう大人たちの顔色を伺うのが上手な子供だった。父は父でがむしゃらに働いて働いて、口癖は、お前にひもじい想いだけはさせない、だった。

僕を優先するあまりに父は倒れた。そんな父の気持ちを尊重してしまった僕は父に何も言えなかった。

沢山の後悔、不安、行き場のない悲しみ。

これ以上の痛い想いはこの先もう無いはずだ。

強く有ろう。

そう思って生き始めた。より良く有るために。

父に誇れる自分で有るために。

それがどうだろう、日々に忙殺され想いは埋没してしまう。誓いは安安と後回しになり目の前の事で精一杯だ。

目の前の小さな命に手を差し伸べることすら出来ない自分に情けなさが溢れる。

口を開けずに閉じたままか細くないた仔猫の声がリフレインしている。

微かにしか聴こえないはずだ。

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