第683話 体育祭、午後の部

”は~あ、どっこいしょ~どっこいしょ~、「「「マサさん!マサさん!」」」

どっこいしょ~どっこいしょ~、「「「マサさん!マサさん!」」」

やぁ~、れんマサさん、マサさん♪”


学園男子生徒合同の”マサ恋踊り”。

全男子生徒総勢八十八名による創作ダンスはまさに圧巻。

赤いはっぴを纏い額に長い鉢巻を巻いたイケメンたち。

その躍動する筋肉、真剣な眼差し、全体から発せられる”マサさん、マサさん”の掛け声。

はためくはっぴ、たなびく鉢巻。

女子生徒悶絶、来賓席大興奮。

これが、これこそが桜泉学園高等部なのだ!


え?俺っすか?ちゃんと集団に紛れて踊ってますがなにか?

何もしないとのっぺり顔に注目がですね~、イケメンズの中に一人だけのっぺりって目立つ目立つ、かと言って気配を消したら消したでそこだけ妙な空白が出来ちゃうんでそれも出来ない。なんで全体に合わせつつも少しだけ動きを良くする事と、存在オーラを少しだけ上げる事で雰囲気イケメンを作り出して全体に紛れ込むという高等テクニックをですね~。

う~ん、イケメンズの中でモブになるって超ムズイ。


「”続いての競技は学年別女子対抗リレーです。勝利した学年のチームには生徒会長、副生徒会長より祝福の言葉と握手が送られます。”」


「「「うおおおおおおおおおおおおお!!」」」


うわ、凄い雄叫び、これって女子が上げていい種類の雄たけびじゃないよね?女子だったら”キャ~”とか”ワァ~”とかの黄色い悲鳴じゃないの?”うおおおおおおおおおおおおお!!”って、まさに野獣の咆哮。流石は肉食女子の頂点桜泉学園女子、いくら取り繕ってもその血は隠せないっすね~。


手首足首を回し、己の身体の高ぶる気持ちと緊張をパワーに変換して行く彼女達。

戦いはすでに始まっているのだ。


「位置について、用意。」”パンッ”


「”いま、各学年の代表者たちが一斉にスタートを切りました。昨年は諸事情により開催されませんでしたが桜泉学園高等部名物の学年別女子対抗リレー、メダリストのお二人から見て如何ですか?”」

「”はい、フォームが美しいですね。このレースは生徒会長、副生徒会長から直接祝辞がいただける数少ない機会ですから気合の入り方が違います。各選手の走りにその本気度が伺えますね~。”」

「”先ほど本条選手が仰った通り、見事な走りだと思います。バトンの受け渡しもスムーズですし、このレースの為に相当な練習を積んだのではないでしょうか。”」


「”三年生女子速い、ついで二年生、一年生の順です。ですがその差は僅か、まだまだ勝負の行方は分かりません。

オッとここで二年生女子がバトンの受け渡しでまごついたぞ~、その隙に三年生、一年生が差をグングン広げて行った~。残りはアンカーを含めて三人、二年生はこのまま敗退してしまうのか~!”」


「”いえ、まだ分かりませんよ、二年生には先ほど私が注目していると言った三人がいますから。”」


「”なんだあの走りは~、二年生兵頭雪、速いぞ~!その差をグングン縮めて行った~、そして一年生に追いついたところでバトンが石川縁に渡ったぞ~。石川縁、速い!あっと言う間に三年生を捉えて抜き去った~。そしてバトンがアンカーに渡ったぞ~!二年生アンカー双龍寺蓮華、ぶっちぎりだ~。君の足にはターボでも付いているのか、三年生一年生のアンカーを全く寄せ付けずゴーーーール。

勝者は二年生チームだ~~~!!”」


「「「うわ~~~~~~~~~!!」」」

二年生の観覧席から鳴り響く大歓声、勝利に抱き合って喜ぶ二年生チーム。


「凄いレースだったね、よくがんばった、おめでとう♪」(ニッコリ)

「綺麗なフォームの良い走りだった。よくやった、おめでとう。」(ニカッ)

頂上イケメンズの労いと握手は、乙女たち戦士たちに至福の時を与えるのであった。


「二年生のみんな、勝利おめでとう。君たちの応援があったからこその勝利、君たちみんなの勝利だよ。」

「あぁ、高宮会長の言う通りだ。代表選手たちは二年生女子の全ての思いを背負ってレースに臨んだ。この勝利はお前たちみんなのものだ。おめでとう!」


「「「キャーー!高宮生徒会長~❤、木村副生徒会長~❤」」」


女子生徒への労いの言葉ご褒美は、二年生女子生徒たちに贈られたのであった。



「”これより、学園OB・OGの伊達一馬選手、本条まなみ選手によるエキシビションレースを開催いたします。このレースには我が校を代表しまして次の三名の生徒が参加いたします。二年Aクラス、高宮ひろし君。”」

「「「キャ~!!ひろし様~、頑張って~❤」」」

「ありがとう~、俺頑張るよ~!」


「”二年Aクラス、木村英雄君”」

「「「青の騎士様~、頑張って~❤」」」

「任せておけ、全力で走り切って見せる。」


「”二年Gクラス、佐々木大地君”」

「「「・・・引っ込めのっぺり、Saki様はどうした~!!」」」

「喧しいわ!体育祭なんだから大地君が出るのが当然でしょうが!」

「「「Booooooo!!」」」

「扱い酷くね?俺泣いちゃうよ?」


学園中からのブーイングにガックリな佐々木大地君。


「えっと、のっぺり君だよね、久しぶり。のっぺり君て足速かったんだ、全然知らなかったよ。今日は頑張ってね♪」


おう、任せといて♪ひろし君の期待に応えちゃうから~。


「やぁ、佐々木さん。俺はてっきり年上か同い年だと思っていたよ。よくよく考えれば最初に山門で出会ったのは佐々木さんの方だったのに俺の中でいつの間にか改変されてしまっていたみたいだ。今日ここに来る前、本条に”混乱したら冷静に相手の身体を見ろ、肉体は嘘をつかない”って言われて何の事かと思ったらこう言う事だったんだな。流石逃走王、いい筋肉の付き方をしている。この一年の俺の成果、しっかり堪能して欲しい。」


「大地君、この日がどれほど待ち遠しかったか。私の全力、受け止めてくださいね。」


お二人とも、今日は本当にありがとう。お二人が昨年よりもはるかにパワーアップしている事は、その立ち居振る舞いからも十分伝わって来ています。

佐々木大地、全力で行かせて頂きます。

木村君、久々の勝負だね。調子の方はどうよ。


「絶好調だ、今日こそ一泡吹かせてやる。」


林一真、双龍寺蓮華、石川縁、よ~く見ておけよ~。これが頂点て奴だからな~。


「「「了解しました、部長!!」」」


「若、スタジオS&B警備チーム、配置完了しました。」


増山のおっちゃん、サンキューです。


後顧の憂いは無くなった。

それじゃ挑ませて頂きますか、オリンピック代表選手様。

自然と引き上がる口角、俺はその酷く獰猛な笑みを止める事が出来なかった。

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