第680話 体育祭、それは男子のお仕事です

”ドン、ドン”


「”季節は初夏、梅雨前のいまだ爽やかなこの時期に行われる桜泉学園男子生徒の大イベント、それが体育祭。

本日は天候にも恵まれた絶好の体育祭日和、各選手は自分の力を存分に発揮して欲しいものです。

解説は毎度おなじみ永遠のGクラス、二年Gクラス佐々木大地と。”」


「”暴走するのっぺりの制御役、二年Aクラス篠原由美子がお送りしております。ってのっぺり朝から何やらせてんのよ。あたし放送委員でもなんでもないんですけど?”」


「”え~、いいじゃん。去年の朝の場繋ぎが評判が良かったからってまた放送委員に頼まれたんだもん、付き合ってよ~。”」


おはようございます、本日は体育祭当日でございます。なんか私のっぺり、放送委員会から目を付けられていた様でございます。只今大会本部放送ブースにて朝の放送の真っ最中。

この学園ってたまに妙にノリのいい連中がいるんだよな~。放送委員会然り、運動部の連中然り。まえに校舎中庭で婚約破棄の寸劇をやってた演劇部なんて最近バリエーションを増やして婚約者略奪やら学生結婚シリーズなんて始めてたもんな~。

この前林が婚約者略奪されてて笑ったわ。後で聞いたらあれって女性がどちらかを選べるバージョンだったらしくってマジへこみしてたのが余計ツボったんだよね。

そんなんで今年も頑張って盛り上げていきたいと思います。


「”ところで篠原は今年の注目株なんている?先輩でも後輩でもいいんだけど。”」


「”そうね、三年生は去年活躍されてた鏑木先輩かしら。三年生の中でも頭一つ飛び抜けてるから。それと一年の堂本一弘君に木島龍一君、後輩に聞いたんだけどなかなかいい運動神経をしているみたいだし、今は留学していていないけど西脇京弥君を合わせて一年生のトップスリーって言われていたみたいよ?それと二年生、本当にこの学年は異常だわ。逃走王フロンティア大会の覇者が三人もいるってどう言う事よ、誰も勝てないじゃない。去年の惨劇再びって事になりかねないんじゃないの?”」

去年の体育祭の惨劇、その光景を思い出し身を震わせる篠原。その際暴れまわったかどうかは忘却の彼方に封印した様である。


「”あ~、その件ですけどね、学園側でよくよく話し合いが行われまして、ひろし君と木村君が同じレースで被らないように配慮させて頂きました。因みに私は今年も玉入れマシーンと化しますのでご安心ください。

更に更に、学園の警備体制も強化いたしました。昨年お昼に行われました伝説のエキシビジョンレース。これを全ての競技終了後に行います。その際暴徒鎮圧のスペシャリストスタジオS&Bの警備チームより精鋭が会場を警備、睨みを利かせるって寸法です。”」


「”えっ?あんたそれでいいの?唯一上位クラスに食い込むチャンスなんじゃないの?”」


「”あ、うん、そう思うでしょ?でも残念、この投票っていかにイケメンが活躍したのかを品評する場であって活躍した選手を応援するのとは若干違うんですね~。

自分端から評価対象外なんで、こうして気兼ねなく楽しめるって状態なんですよ、ワッハハハハハ。”」

完全に開き直りの笑いを浮かべるのっぺり、仕方がないよね、昨年一年でしっかり学びましたです、はい。


「”まあアンタがそれでいいって言うならいいんだけど、でもSaki様が最後に出るんでしょう?だったらその評価は・・・ごめん、Saki様はやっぱりSaki様だった。あんたSaki様で学園生活する気ない?そしたら即Aクラスに入れるわよ?”」

ニヤリと悪い笑みを浮かべる篠原さん、その手には乗らんとです。


「”あ~り~ま~せ~ん~。学園生は佐々木大地君であってSaki様ではないのです。それにSaki様の基本って俺にちょっとメイクしただけよ?逃走王バージョンやランウェイバージョンはかなり気合が入っているけど学園のSaki様イベントバージョンなんて目元いじっただけよ?なぜに別人扱い、そこが解せん。

ひろし君なんて未だに知らないからね?今度聞いてみ、冗談が上手いな~って返されるから。”」


「”えっ、ひろし君って前に雑誌のインタビューで憧れの人って聞かれてSaki様上げてなかった?それでも認識されてないんだ~。でも以前陸上部の先輩も似た様な事言ってたかも。私ですらたまに分からなくなることがあるし、あんた変なオーラでも出てるんじゃない?”」


「”うっ、それは否定出来ない。俺の認識阻害ってパッシブだし。よく分からなくなったら肉体の方に意識を向けると判断できるって本条まなみさんが言ってたよ。”」


「”ホント~、それって胡散臭くない?って本当だったわ。素直に繋がった。流石金メダリスト、今年はオリンピックに出るんでしょう?楽しみよね。”」


「”そうだよね、そんな忙しい合間を縫って応援に来てくれるんだから良い体育祭にしないとね。おっとそこを行くのは逃走王青の騎士こと木村英雄君じゃないですか、お~い木村く~ん、ちょっと放送ブースに寄って行ってよ~。”」

俺は大会本部付近をたまたま通り掛かった木村君に声を掛けるのでした。


「”何だ佐々木、今年も朝から馬鹿やってるのか?篠原も災難だったな、馬鹿のお守りご苦労様。”」


「”本当よね、流石は元祖ツッコミ張り扇マスター木村英雄君、よく分かってるわ~。”」


「”えっ?俺の扱い酷くない?俺悪いのっぺりじゃないよ?”」


「”コイツの質の悪い所は必ず事態を拡大させる所だからな。良いにしろ悪いにしろ大騒ぎにしないと気が済まないんだろうな。”」


「”あなたは少し穏便って言葉を覚えた方がいいわよ?”」


「”え~、俺今年はかなり穏便に動いてる方だけど?これでも頑張ってるのよ?”」


「「”これだけ騒ぎを起こしておいて穏便って。”」」


何故か全く信用が無いと言う事実に、ショックを受けるのっぺり佐々木君なのでありました。(ぐすん)

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