第3話 初配信



「よし、そろそろか」


「そ、そうだね。雅くん!頑張ろうね!」


「凪ももうちょい緊張崩せよ。ほらリラックスリラックス」


「花梨ちゃんは大丈夫そ?」


「はい!私が一番乗りなので凪くんと雅くん頑張ってね!」


一応今日の予定は

花梨ちゃん初配信

凪くん初配信

俺初配信

そのあと俺の配信に三人集まって挨拶って感じ。


「じゃ、花梨ちゃん行ってらっしゃい」


「頑張ってね!」


「行ってきます!」



◆──【夏風 蜜柑の初配信にようこそ!】


「みなさーん!こんにちは!この度V COOLからデビューした夏風 蜜柑でーす!」


『デビューおめ』

『デビューおめでとう!』

『可愛い!』


「いやーみなさんありがとうございます!早速なんですけど、今日初配信で何をやるかって言うとですね!自己紹介を混ぜながら雑談配信にしようと思います!」


『おーー!!』

『雅:頑張れー!』

『いいね!』

『万葉:頑張って!』

『てかマジで可愛い!』


「あ、雅くんと万葉くんだ!頑張るね!それじゃあ私のプロフィールを貼っていきますね!」


『てぇてぇ』

『てぇてぇ』

『てぇてぇ』


俺たちはスタジオの外からスマホを片手にこっそり覗きながら配信を見ていた。


「同時接続は10000人、結構順調だな!」


「そうだね!僕も頑張って10000人目指すよ!」


「凪ならいけるさ!」


そうやって花梨ちゃん、またの名を蜜柑ちゃんの配信が開始して三十分が経とうとしていた。



「それじゃあそろそろ解散のお時間かな?このあとある万葉くんの配信もよろしくね!それじゃみんな、またね~!」


『おつミカー』

『なんか勝手に最後の挨拶できあがってて草』

『よしお前ら!万葉くんの配信にいくぞ!』


◆─【僕が秋原 万葉です!よろしくね!】


「え、えーと。この度V COOLからデビューしました!秋原 万葉です!よろしくお願いします!」


『なんか可愛い系の男子出てきたぞ!』

『デビューおめでとう!』

『可愛い!』


「蜜柑ちゃんの配信から来てくれた人もいると思うんですけど、初配信ってことで歌配信にしちゃいたいと思います!」


『うぉぉぉぉ!!!』

『雅:頑張れぇぇぇ!!』

『このあと出番の同期の熱量えぐくて草』


ちなみにこの配信も花梨ちゃんとスマホを片手に配信を見てました。


「同接は12000人か…二人ともスタートダッシュはいい感じだね!」


「雅さんも頑張ってくださいね!てか凪くん歌上手!?」


「いやーすごいな…あの見た目から考えられないほどかっこいいぞ」



「ふぅ、ありがとうございました!」


『パチパチパチパチ!!』

『かっこいい!可愛い!最強!』

『雅:万葉歌上手すぎて笑う』


「雅くんありがとう!それじゃあそろそろ終わります!雅くんの配信にも行ってあげてね!バイバーイ!」


『おつかれー!』

『チャンネル登録しといたよ!!』

『よしお前ら!雅の配信に行くぞ!』

『煽動ニキいるの草』


◆──【俺が春野 雅だ!よろしくぅ!】


「はいてなわけでぇ!この度V COOLからデビューしましたぁ!春野 雅と申しまぁす!よろしく!」


『おっとイケボが出てきたぞ?』

『今回のデビュー組は当たりだな』

『何をするんだ?wkwk 』


「さてね、蜜柑ちゃんは雑談、万葉くんは歌、じゃあ俺は何をするでしょう!」


『発狂』

『ラーメン』

『食事』


「惜しい!食べ物系ってことはあってる!正解はダンジョンの食材で料理作ってみた!やっていこうと思います!」


『変人が出てきたぞ?』

『ダンジョン食材なんて数百万するのにデビューで出せる金じゃないでしょ』

『虚言癖の方ですか?』


「虚言癖じゃないよ!買ったものじゃないんだなぁこれが!俺が直々にダンジョンの下層に行って捕ってきたやつなのさ!」


『ファ!?』

『食材が湧くダンジョンって高難易度じゃなかったか!?』

『どうせ上層とかのクソザコだろ』

『下層って言っとるぞ』


『いやいや、そもそもどうやって料理すんだよ』


「はいいい質問来ましたね!どうやって料理すんのかって?そこら辺はV COOLから許可を貰っております!」


『イエェェェェイ!!!』

『こいつVTuberやっていい人種じゃないだろ!?』

『V COOLよく許可出したな…』


「ちなみに許可とる条件として社長に料理を振る舞うことになっております!スタッフの方たちもどうぞお食べください!」


『裏めっちゃうるさくて草』

『そりゃ下層の食材とか三桁万の食材だし…なんなら四桁万いく可能性だってある食べ物だぞ?俺だったら友達に自慢するね!』

『やべぇ野郎だ!』


「てなわけで今回の獲物はこいつ!下層にいる鯛牙ですね!ちょっといい食材を使っております!」


『は?』

『わかんない俺に誰か説明してクレメンス』

『下層の食材って一番安いのでも500万は下らない。でもこの牙鯛って確かこの前2000万かなんかで落札されてた…』

『ファ!?』

『こいつ頭おかしいぞ!』


「ちなみにこの鯛は鯛しゃぶ、漬け丼、刺身にさせてもらいます!一応鯛の写真は運営からツイートされてるんでみなさんよかったら見てみてください!」


『今見てきたけどあれどうみても5mくらいあるぞ』

『こいつは野に放ってはいけない生物だ』

『バケモンだ!バケモンだぁぁぁぁぁぁぁぁ!』


「ちなみにこいつの肌武器の素材になるくらい固いんで普通に調理したら包丁が破壊されますんで。お気をつけください」


『包丁破壊されるっていいながら包丁で捌いてんの頭おかしいだろ!』

『誰か!誰か探索者ニキはいないのか!』

『探索者ニキだけどあの鯛はマジでヤバイよ。水の生き物のくせにかまいたちみたいなの打ってくんの。それも透明。余所見してたら体真っ二つになったとかよく聞くぞ』

『ヒェッ…』

『こいつもしかしてバケモン?』


コメントに対応しながら料理を作っていく俺。余った骨は全部味噌汁にぶちこみました。


『この骨だけでも数十万するのに…』

そんなコメントは無視して料理を作っていく。

ちなみにたまに無言になるので凪くんと花梨ちゃんも呼んで食べることにした。

まぁあとから差し入れするつもりだったんだけども。

今の時代動かないとAIくんに配信切られちゃうからね…


「「雅くん(さん)ってヤバイ人…?」」


『同期ドン引きで草』

『ワロタ』

『そりゃデビューした同期が2000万で落札されてた鯛をいきなり食わせようとして来るんだから引くだろ!』


「まぁまぁ気にすんなって。あとで請求したりはしないからさ」


『ぶっちゃけあのクラス余裕で倒せるなら金なんて結構持ってるだろ…』

『探索者ってそんな稼げんの?』

『下層とかまで行けば稼げるけど油断すれば人生とサヨナラグッバイだぜ?夢の前に恐怖しかねぇよ』


「そうそう。下層余裕で探索できるやつなら…まぁ一日で三桁万とか四桁万とか普通に行くんじゃない?」


『一日で俺の年収何年分…?』

『社会人ニキ頑張って…』

『ちなみに気になるんだけどランクっていくつ?』

『ランクってなんぞや?』

『探索者ってランクがあって色が変わるほどバケモンになる。ちなみに上からブラック、ダイヤモンド、プラチナ、ゴールド、シルバー、ブロンズ、ルーキーな。俺の予想だとこいつはプラチナ以上はある』


「あ、ランク?ランク言ってもいいか運営さんに聞くからまってね」


『運営に聞かないと行けないランクって絶対ヤバイやつじゃん!』

『俺たちはヤバイやつが生まれる瞬間に立ち会ってるのかもしれない』

『今の時点でヤバイやつ定期』


「あ、運営さんから許可降りましたね。俺一応ブラックね」


『あーもうダメだこりゃ』

『さっきのニキ最高ランクとか言ってなかった?俺の見間違い?』

『ブラックって人外か化物か災害しかいないって言われてるんすけど』

『こいつあと数百年は遊んで暮らせそう』


「ちなみに証拠はないんで俺の言葉で許してください。今度探索動画出すんで」


『そりゃ顔写真と名前書いてあるしな…』

『もう普通にVTuberじゃなくて配信者でデビューしろよ…』

『ちなみにブラックの友達とかいるの?』


「あーいるよ。【閃光の貴公子】フィンラルとか」


『誰ぞや?』

『こいつと同じブラックのバケモン。超イケメンだからCMとかにも出てるけどやろうと思えば国一個滅ぼせる。てかブラックってほぼ全員国潰せるからな』

『フィンラルってことは外国人なんか?』

『確かフーハーじゃなかったか?』


「フィンラルも俺の配信見るね!って言ってたから見てると思う!多分!」


『もうホラかも冗談かもわかんねぇよ』

『フィンラルさんこの動画の告知リツイートしてツイートしてるぞ!?』

『イエーイリスナーさんたち見ってるー?だって。NTRの彼氏かよ』

『こいつのランクブラックという言葉はほぼ本当ということが証明された』


「さて、みんな俺の話題で気づいてないみたいだけどほぼほぼ料理出来上がったんで食べますか」

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