スライムスレイヤーまこと

藤原耕治

前編

 俺の名前は、星野誠。

 三人の女と交際するイケメン高校生だった。


 運動神経抜群。学校の成績もよく、周囲から期待されていた。


 そんな俺をとんでもない不幸が襲った。

 付き合っていた女の一人にナイフで刺されたのだ。


 将来はバラ色だったのに出血多量であの世行き。

 すべてがふいになった。


 くそがっ! 俺のような男に一途の愛を求めるのが間違いなんだよ!


 だいたいな、男のことをツラで選ぶような女に、どうやって一途になれと? 

 逆に教えてほしいわ。


 相手が打算で付き合っているなら、こっちだって打算で付き合うのが当然だろうが。


 けど、神様はひどかった。


『三股をしたお前が悪い』となじって、『スライムを倒すしか能がない不細工な男となり、心から反省しなさい』と言いやがった。


 こうして俺は異世界に生まれ変わった。


 俺はすくすく成長したが、その顔は不細工だった。


 おまけに中等部に入学したときにはデブになっていた。

 少し食べただけで太る体質だったからだ。


 自分の腹をプニプニして、俺は泣きそうになった。


 けど、俺は前向きだった。

 女にモテるために努力した。


 だが、ダメだった。


「生理的に受け付けないの」


 やっぱそうですよね~。


「自分の顔見て口説きなさいよ」


 ですよね~。


「豚の相手なんてするわけないでしょ。しっしっ!」


 …………。


「キモイんだよ! 視界に入るな!」


 ダメだ~っ! 歯牙にも掛けやがらない。


 モテるための努力なんてやめだやめだ。


 俺の唯一の才能はスライムを倒すこと。

 この世界のスライムを倒しまくって、名を上げてやる!


 俺は中等部を卒業したあと冒険者になった。


 だが、しょっぱなから困難が待ち構えていた。

 

 普通のスライムをいくら倒してもわずかなカネにしかならなかったのだ。

 しかも経験値もごくわずか。レベルアップもすぐに止まった。


 そんな俺に報酬のいい仕事ができるわけもなく。

 生活するカネにも困るありさまだった。


 ああ、伝説のスライムを倒せればな……。

 そうすれば、こんな境遇から抜け出せるのに。


 それは――――

 人を虐げた人間が転生するらしい『ブラックスライム』。


 遭遇率はめちゃくちゃ低いが、経験値とカネががっぽり入るらしい。

 一度は倒したい魔物である。


 とはいえ、今の俺には倒せないだろう。

 けっこう強いという話だからな。


 そのうえブラックスライムの特技は、近くにいるモンスターを操ること・・・・

 長期戦になると多くの敵に囲まれて、あの世行きになることも珍しくないらしい。


 だからまずは強くならないといけないわけだ。


 俺は、普通のスライムを地道に倒すことにした。


 お金にならないので貧乏暮らしが続いたが、レベルは少しずつ上がっていった。


 地道にやれば何とかなるもので、シルバースライムと戦えるようになった。


 これで普通の生活ができるようになった。


 シルバースライムを地道に倒していたら、ゴールドスライムも倒せるようになった。


 ゴールドスライムはカネをたくさん落とす。

 俺はお金に困らなくなった。


 するとどうだろう。ブサメンでも女が寄ってくるようになった。


 まったくよーっ! 男の外見とカネにしか興味がないってどういうわけ!?

 女って生き物は救いようがねーな。マジで。


 俺は寄ってくる女をすべて追い払った。

 こんな奴らの相手はこりごりだっだのだ。


 むろん、女は抱きたい。

 だからセクロスしたくなったら娼館に行った。


 すると、どうだろう。

 女がめちゃくちゃ好きになった。


 たぶん娼館の女が精神的に大人だからだろう。


 客からひどいことをされたりもする娼館の女たち。

 人を見る目がすごくあった。


 そんなわけで、たまに娼館で息抜きするのが日課になった。

 

 それからは楽しい日々だった。


 シルバースライムやゴールドスライムなどを倒し、そのカネを使って好みの女を抱く。

 幸せすぎて自分の行動を疑うことさえなかった。


 その娘と出会うまでは――――



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