第247話 兵力拮抗、城兵堅守

 九月七日 巳の一つ刻(0900) 第一軍宗像氏貞幕舎 宗像氏貞


 第二隊を本隊の左側に動かし、状況によって移動する。戦線を膠着状態に持っていったわが軍の幕舎には、次々に情報が届く。


 ただ、わたしが今一番欲しいのは援軍の情報だ。


 ■『発 総司 宛 全司 秘 メ 我 肥前彼杵 七ツ釜 出港ス 戌一(1900) 唐津呼子 至ルベシ ○七 津屋崎 至ルベシ 秘 メ ○六 辰一(0700)』

 この信号が到着した時には狂喜した。


 昨日の昼過ぎ、未一つ刻(1300)に到着したのだ。一進一退の持久戦のなか、情報だけでも士気に与える影響は大きい。殿が指揮する第一艦隊からの通信だ。宗殿との共同である。千五百くらいにはなるだろうが、まだ到着はしていない。しかし城兵もわれらの兵も、喜びひとしおである。


 ■『発 四司 宛 総司 全司 秘 メ 長岩城 降伏ス コレヨリ 城井谷城ヘ 向カフ ○六 午一(1100)』


 これは今日の深夜寅三つ刻(0400)に届いた。現状わが軍は道雪軍と戦闘状態にある。しかし具体的な戦果はない。敵を退却させたわけでも、岳山城を落とされたわけでもないから、通信は送っていないのだ。


 もちろん、第一軍宛に個別に来た通信ではないから返信はしない。


 ■『発 三司 宛 総司 全司 秘 メ 第四 第五 の 報ニ接シ 我ラ コレヨリ 日の出ヲ モッテ 由布院 警戒 シツツ 府内ヘ 向カフ 武運ヲ 祈ル 秘 メ ○六 寅ニ(0330)』


 午三つ刻(1200)に着いた。

 第三軍は順調に豊後に侵攻しているようだ。これも同様に返信はしない。


 ■『発 三艦 宛 総司 全司 秘 メ 只今 佐世保 明日 卯一(0500) 出港予定 唐津 着 ○八 申一(1700) 予定 秘 メ』


 到着したのが今日七日1300である。


 唐津で後藤殿、波多殿、伊万里殿、相神浦松浦殿の軍勢が合流する。総勢三千五百が八日には到着するのだ。


 早朝出港すれば九日中には津屋崎に到着する。


 この情報は敵方にも流すべきか? 流さざるべきか? 流したなら、焦って攻撃を仕掛けてくるかもしれぬな。いや、流してしまえば、敵は城攻めの兵を割き、上陸したわが援軍をたたきにいくやもしれぬ。


 水際にて、ちょうど上陸する際は油断も生まれているかもしれぬ。これは我軍にだけ伝えたほうが良かろう。殿の第一艦隊からの信号も、念のため敵には流しておらぬ。


 ■『発 ニ司 宛 総司 全司 秘 メ 香春岳城 陥落 敵将 二人 捕縛 然レドモ 損害大キク 修理大夫 重傷ニテ 後送 致ス 秘 メ ○六 午三(1200)』


 未三つ刻(1400)に受信した。そうか、陥落したか。秋月殿、無事なら良いが。それにしても大将と副将格を捕らえられたのは大きいな。


 第五軍については隈部が降伏したとの情報から先が届いておらぬ。肥後の国人衆と合流が遅れているのだろう。いずれにしろ、あと二~三日で出立できるのではないだろうか。


 ■『発 二艦 宛 総司 全司 秘 メ 只今 江島沖 津屋崎 到着予定 本日 申一(1500) 秘 メ ○七 辰三(0800)』


 申四つ刻(1630)に受信した。おおお! 援軍の到着だ! 予定通りだと、すでに着いて上陸を開始しているではないか!! だとすれば、明日の早朝から行軍して、昼過ぎには合流できるぞ! 急ぎ津屋崎の湊に信号を送ろう。


『発 一司 宛 総司 二艦 秘 メ 遥カニシテ 来ル 援軍 深ク 謝意ヲ捧ゲ 奉ル 明日 我ノ 存ズベカラザル 報ヨリ 敵ノ 挟撃 ヲ頼ミ申ス 秘 メ ○七 酉一(1700)』


 ■『発 二艦 宛 総司 全司 秘 メ 艦隊 津屋崎 沖 到着ニテ 宇久軍 千 上陸 開始ス 内 燧発鉄砲隊 七百 秘 メ ○八 未四(1430)』


 一刻と四半刻後(2.5時間)の1700に到着した。


 ようし! 援軍が到着した! 先に通信は送っている。重複するから送らなくてもいいだろう。


 今日中に上陸は終わるだろうから、明朝出立したとして、申一つ刻(1500)前後には到着するであろう。第三艦隊も八日の夕刻には唐津に着く。


 ■『発 総司 宛 全司 秘 メ 我 糟屋 相島 戌一(1900) 至ルベシ 秘 メ ○七 申一(1500) ケ 玄海 信』


 酉二つ刻(1730)に到着した。おそらく沿岸を航行して、最寄りの玄界島の信号所から送ったのだろう。


 風待ちで時間がかかったのだろう。それでも明日八日には上陸から行軍し、夕刻までにはこちらに着くに違いない。


 第一艦隊から第三艦隊までそろうのが九日中である。それまで第一と第二艦隊の兵で牽制しつつ、決戦は十日になるだろうか。

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