第234話 消えゆく自信 宗麟の栄光

 九月五日 申一つ刻(1500) ※臼杵城 ※大友宗麟


 なに? 助力出来ぬと? 誰だ! 誰が言うて来ておるのだ?


 ※津賀牟礼城の※入田義実? 他には?……なんと半数ではないか!? 稲の刈り入れ!? 一揆の恐れ!? くそう! なんだかんだと理由をつけて、参陣できぬといってきおった! やはり国人は信用ならぬ。親族衆のみが頼りになるわ!


 ■国東郡

 岐部城主 岐部鑑泰

 飯塚城主 田原親宏

 高田城主 高田鎮孝

 他多数

 ■大分郡

 熊牟礼城主 田北紹鉄

 他多数

 ■海部郡

 栂牟礼城主 佐伯惟教

 他多数

 ■大野郡

 岡城城主 志賀親守

 朝日嶽城主 柴田紹安

 他多数

 ■直入郡

 津賀牟礼城主 入田義実

 他多数


 これだけおるのか? しかも国東の田原親宏まで!


「申し上げます! 敵軍角牟礼城、日出生城を落とし、由布院山城へ向かっております! 敵大将は蒲池鑑盛、その数七千! 周辺の土豪をあわせ八千まで膨れ上がっております!」

 伝令が大声で伝えに来る。


「なに! 日田城に続いて角牟礼城も日出生城も落ちたと・・・! 五郎左衛門はどうした? 外記は?」

「は、森様、宿利様、玖珠郡の国衆ら・・・みな討ち死にしてございます!」


 なんと、ありえぬ。どうやってあの要害を落としたのだ?


 いや、待て、落ち着くのだ。まだ阿蘇がおる。阿蘇と国人衆とをあわせれば、兵力では同じ、なんとか持ちこたえられよう。


「長増!長増はおらぬか!」

「はは、これに」

「どうすればよい?!」

「は、さればまずは状況を整理いたしましょう」

 ※長増はいつも冷静沈着であるな。


「それから、申し上げ難き事でございますが、この上は、朝廷ならびに幕府、そして信長の、使えるものは何でもつこうて、和議を図る他ございませぬ」。


「申し上げます! 下高橋城、三原城落城にございます!」


 なんと! それでは筑後は久留米を残して、敵の手に落ちているではないか。この分だと久留米も時間の問題か。こうしてはおれん。臼杵城の防備をかためつつ、長増の言う通り和議の準備を進めねば。


 朝廷と幕府に和議の仲介を頼むか。苦渋の決断であるが、致し方あるまい。島津を頼るか? いや、貴久の死でそれどころではなかろう。伊東は真幸院、肝付も飫肥を狙っておる。島津が相良に圧力をかければ、小佐々も動かざるを得まいが・・・。


『ご尊父様のご逝去を悼み、謹んでご冥福をお祈りいたします。伊東大膳大夫どの、肝付左馬頭どのには、故人の死を利用する事なきよう伝えますゆえ、島津修理大夫どのにおかれては、肥後に注力すべく、お願い申し上げまする』。


 役に立つとも思えぬが、送らぬよりましであろう。伊東と肝付にも送って島津に攻め込まぬよう釘をさしておこう。もっともこれも言うことを聞くとは思えぬがな。なぜだ、なぜだ。どこで間違ったのだ。


 大友から、朝廷、幕府、織田信長へと調停の依頼の使者が出発した。

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