第228話 第三艦隊戦記 南へ東へ
九月四日 未三つ刻(1400) 長崎 第三艦隊旗艦 姉川 信秀准将
出撃命令だ。わが第三艦隊の使命は長崎より出港し、南下しつつ野母崎より東進して橘湾から早崎瀬戸をわたる。その後北上して塩田津の湊までいくのだ。入港した後は後藤殿の兵をのせ、もと来た航路を戻り、角力灘を北上する。
途中、必要があれば長崎や七ツ釜に寄港するが、極力寄港しない。できれば、塩田津の湊まで無寄港、そして次の佐世保(相神浦松浦の兵乗艦)のみ寄港して、唐津まで無寄港でいきたい。出港した後は兵を乗せる湊以外では寄港したくないのだ。
無駄であるし、時間をかけたくはない。天候の悪化や重病人など、特別な理由がない限りはそうするつもりだ。そして玄界灘に入る。唐津にて波多、伊万里、相神浦松浦殿の兵、そして唐津水軍を麾下に入れ津屋崎を目指す。
最終目的は上陸作戦を敢行する事だ。第一、第二艦隊に比べれば目的がはっきりしているから、計画も立てやすい。これから総員に伝達し、物資を搬入させて、出港は明日の朝になるであろう。
卯の三つ刻(0600)に出港する時は北風、横から風を受けそして順風になる。おおよそ8ノットから10ノット。野母崎の樺島あたりまでは一刻(2時間)前後でいくだろう。
しかしそこから島原半島と天草諸島の間の早崎瀬戸までは、4ノットから6ノット。5ノットとして二刻と四半刻(4.5時間)だ。そして北東に向かう。風は北西5ノットから7ノットで、深江城の東海上に到着予測が一刻半と四半刻(3.5時間)。
そこから塩田津の湊まで逆風で5ノットがせいぜいだろう。途中の高来郡の竹崎あたりに停泊せねばならぬかもしれぬ。内海は外洋にくらべて風がない事が多いからな。これは注意せねばならぬ。
が、後藤殿が陣触れを出されてからの兵の集まりを考えると、急がなくともよいであろう。あせらず竹崎で停泊し、翌朝(六日)出港し塩田津の湊まで向かおう。
・・・しかし、どうであろうか?おそらく航行距離はわが艦隊が一番長いのではないか?そうなれば到着は当然遅くなる。第一第二艦隊の宗・宇久水軍がわららより早く津屋崎周辺に到達したならば、殿はどう判断されるだろうか?
われらが連れていく陸上戦力ではなく、宗・宇久の兵を投入するのではないだろうか?
これはわが艦隊であろうが他の艦隊であろうが関係ない。出港する湊が同じなのだから、どの艦隊が塩田津の湊まで向かっても結果は同じだ。戦場に着くのが一番遅くなる可能性は高い。
それならば、なんとか竹崎で停泊せずに塩田津の湊までいけないだろうか。六日の早朝から乗せられるので、おそらくは巳の一つ刻(0900)くらいには出港できるだろう。風任せだ。
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