第110話 志佐領の仕置き

同年 五月 小佐々城 小佐々純正

志佐領の仕置きを行った。


志佐領は隣の伊万里領との境が今福村、西の直轄領との境が西木場村、南が相神浦松浦との境界世知原村までだ。


志佐村の本領千八百八十石を残したので、約二万石が小佐々領となり八万石を越えた。有馬を上回ったのである。言うまでもなく、針尾や深堀と同じ様に行政官として純意を置く。


それから、志佐の家臣である世知原修理と都蔵寺式部を出仕させた。有能な人材を埋もれさせておくのはもったいないのだ。文部省に世知原修理、工部省に都蔵寺式部をあてた。農商務省には定政にもう少し頑張ってもらおう。


それから、志佐に送った「手切之一札」だが、事前に周辺諸国にも送った。波多と大村は血相を変えて抗議の文を送ってきおった。


『迷惑千万、当方は一切かかわりなし』

というものだ。


まあ、関係あってもそう答えるよね。俺でもそうする。


重要なのは、現時点では大友義鎮。


長いものには巻かれろで、領地は接していないけど絶対に逆らってはならない。それでも龍造寺は逆らっている。メンタル強!それとも介入されないギリギリのラインを微妙につっつきながらやっているんだろうか。


いまのところ、龍造寺に大きな動きはない。しかし、緩衝地帯に同盟国が出来たのは大きい。後藤とは先代とは禍根があったが、当代は若いし先進的な考えができる人材のようだ。


大村領になっている塩田津の湊を奪ってもらおうかな。


そうすれば経済的に、ひいては軍事的に飛躍できる。うちの軍艦や商船を出入港自由にしてもらって、帆別銭無料とまでいかなくても、格安で使わせてもらえばいい。そうすると、龍造寺の八田の湊と今津、相応津の湊も手の届く距離になる。


北の平井は和睦したとはいえ完全に服従しているわけではない。共闘を条件に、周辺勢力とあわせて調略できればうまい具合にいきそうだ。


しかし、ここは考えどころだぞ。これ以上膨張すれば、史実の龍造寺に小佐々がなってしまう。今までの戦は規模も小さく、こちらに大義名分があった。これからは大義名分をつくるのも良いが、今の龍造寺がそれをやっていないとは思えない。


結局、龍造寺は大友を納得させられず、全面衝突になる。


後藤は完全な同盟国だから、経済・軍事両面で協力する方向性は変わらない。もし龍造寺に動きがあったとして、それに集中できる様に有馬と大村を抑える。これは絶対条件だ。ここにきて伊佐早の西郷の存在が大きい。


有馬が北上するにしても西郷領を通らねばならないし、大村は北上すると後背をつかれる。弟の深堀純堅がこちらの陣営にいるのだ。仲介になってくれて同盟を結ぶ事ができた。大村とは完全に敵対だから、即承諾だ。俺がキリシタンじゃないのも大きいかも。


問題は波多だ。


おせじにも俺に対して友好的だとは思えない。表向き、不可侵を結んでいるから侵攻はしてこないし、できない。なにせ伊万里と後藤がいるからね。


こちらとしては、有馬・大村を抑えつつ、後藤・伊万里に援軍を送れるくらいの軍事力を備える。波多が龍造寺に攻められても、伊万里と共同で援軍・防衛に当たれる様な体制づくりをしなければいけない。


そのうち少しずつ波多が弱体化し、完全に龍造寺に呑み込まれる前に、保護国化する。最終的に相手からの要望で併呑。これが最上策かな。いかにこちらの取り分を多くするかが大事。


これであれば、同盟国を守ったという道理もあるし、相手から乞われて併呑するんだから、文句のつけられようがない。


現時点で北部九州、いやもしかすると九州でも、単独で大友と渡り合える勢力はいないかもしれない。にもかかわらず、龍造寺の勢いは止まらないのだから、自衛の為だ。だって波多領が龍造寺領になったら、次は俺たちだ。


味方勢力の弱体化は敵の勢力拡大に他ならない。


うん、これでいこう。

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