第28話 神ばあ②(←手抜きタイトル!)

 さあ、だんだん具体的になってきた。


 菜種油と灰汁のせっけんは城内でまず作って、うまくできたら量産しよう。量と種類でどう変わるのか? 多分、菜種以外にえごま油、イワシ油、鯨油、牛脂……。


 種類を変えたら性能も変わった気がする。あとは、香りづけだな。


 いつくか商品分けして、一般庶民用と貴族用、大名用に朝廷献上用、ふふふ野望が……。体を洗う習慣をつけると衛生的にもいいからね。


 それから鉛筆は、絶対筆に勝つと思う。筆のメリットは優雅な草書体が書ける事? それってメリット? どう考えても鉛筆の圧勝だよね。あと、すぐじゃないけどパンくず消しゴムも商品化するし。


 墨はそもそも消せないからね。


「ばあちゃん……」


「ん? なんじゃ?」


「城に住まない?」


「は? えらい(随分)とっぴな事言うねえ。あたしゃあんまり肩肘はったのは嫌いだから、遠慮しとくよ」


「だって、いろいろ聞きたい事たくさんあるし、呼ぶのも来るのも面倒でしょ?」


「仮に住んだとして、周りのみんながいい顔せんじゃろ?」


「それは大丈夫。ちゃんと言い聞かせておくから。ばあちゃんは新生沢森家の特別顧問って事で」


「まあ、考えておこうかね」


「やった!」

 

 政忠はおばあちゃん子、おじいちゃん子なのでした。そんなやり取りを、小平太が持ってきたお茶をすすりながらやる。こういうのんびりした感じ、うん、大事だよね。


「ねえ、ばあちゃん、なんでばあちゃんはそんなに物知りなの?」


「物知りじゃなかさ。おいが子供のころは、そりゃ別の物知りばあさんがおったよ。年の功ってやつたい」


「ふうん」


「そのお灰やら油やら、ねばつちも炭も、なんかわからんけど、作ってから売るとやろ?」


「うん。どこらへんで売るとが一番良かかな?」


「そうやねー。売る量にもよるけど、大量に売るなら、太田の港じゃちょっと人の少なかね。多比良村や瀬戸村に売り歩いても、まだ足りんと思うばい。いっぺんに売るなら、……大村やろね」


「やっぱり? どの程度時間かかるかな?」


「牛に荷車ひかせて、八刻(はっとき、16時間)はかかるやろうね。朝早う出て、着くのは暗うなってからやろうか」


「もう陽の沈んどっけん宿ばとって、次の日の朝から売り始めて、酉の正刻(午後六時)までには全部さばかんといかん。そいでまた泊って、朝出て、暗うなってから戻ってくる感じかね」


「うわー。けっこうかかるね。三日仕事やん。夜は移動せんと?」


「慣れとるもん(人)やったら良かよ。でも夜は真っ暗やし、盗賊の出るけんね」。


「あー、そーかあ」


 街道の整備と安全の確保も通商活性化の要だな。街灯をつける? いやいや、あんなん18世紀以降じゃなかったか? 19? ガス灯? 天然ガスとか無理!


「やけん、ひにち(日程)ば短くするなら、護衛ば雇わんといかん。そいで夜のうちに出掛けて、朝着いて売りさばいて、市の閉まってからまた夜戻るしかなかね」


「そいやったら、一日半で戻ってききる(戻れる)かな」


 うーん、盗賊の危険性考えたら最初のやつかな。大村領や小佐々領は比較的安全だとしても、絶対ではないしなあ。頭が痛い。でも、安全第一。


 灰は城内の物をかき集めよう。油も。木炭も城内にあるし、あとは粘土か。あの地域はまだ磁器生産はじめてないから問題ないはずだ。


 波佐見の内海城主の内海政道と、松山城主の福田丹波は、今は大村氏の勢力下だが、いずれも隣の後藤氏の圧力を受け続けている。いつ向こう側につくかわからない。


 そうならない様に誼を通じて、我々と組んだほうが利がある事をわかってもらおう。さて、誰を使者にしようか。

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