第2話 謎の転生〜永禄の変と消えた村、運命の軌跡〜
独り言のつもりだった。つもりだったのが、しっかりがっつり聞こえていたみたいだ。
「? ? 何をおっしゃってるんですか。今は永禄四年に決まっています。ここは
この侍女らしき女性(いや、侍女って普通、女の人の身の回りの世話をする人じゃなかったっけ? まあ今はそれどころじゃないか)は、不安と呆れと心配と、いろんな感情が入り混じった不思議な表情を見せた。
「え? いや、うん、大丈夫。ただ怪我のせいかな? すこーしだけ思い出せないと言うか……おぼろげと言うか、ね」
慌ててごまかした。危ない危ない。聞くところによると、俺は怪我のせいで高熱がでて、数日間寝たきりだったらしい。
侍女の名前は初。
うちに代々仕えてくれている家系のようで、本来は母親が家の中のこと全般取り仕切っていたらしい(女中頭? 侍女頭? 正式名称はよくわかりません)けど、病気で引退、彼女が引き継いでいる。
結婚は……と聞きそうになったけど慌ててやめた。今も昔もこういう話題はタブーだろう。ま、そのうちね。
お初はなんども大丈夫ですか? と確認したが、大丈夫大丈夫と俺が念を押すもんだから、諦めて、「何かありましたらお呼びください」と言って部屋をでようとした。
「あ、ちょっと待って!
と最後の質問をした。お初は少し首をかしげながら答える。
「まあ、内海を境にして分かれていると言えば分かれていますけど、分けなくても彼杵の~村で分かりますからね」
はい確定ー。どうやらがっつり昔の地元にタイムスリップ、いや転生? したらしい。
ここは長崎県の彼杵地方。その西側の西彼杵半島にある、サワノモリという村らしい。でも沢森村なんて聞いたことないし、間違いなく実在してないぞ。うーん?
漫画やアニメで異世界転生やタイムスリップものは腐るほど見てきたけど、本当にそうなったら冷静でいられるのか? というのはずーっと疑問だった。
結論。冷静でいられるわけがない。
だとしても、何をどうあがこうが元の時代には戻れない。少なくとも現時点では。それに現代と比べれば何もかもが違う。だから冷静に、さらに冷静に。なりすぎということはない。
「紙とペ、いや何か書くもの持ってきて」とお初に頼んで、現状の確認と分析をすることにした。永禄えいろくエイロク……永禄の変!!
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