聖域

眠りから吐き出されて

私の体の形をした熱だけが

敷布団に取り残されている

耳を押し当てると

小さいころ

母が歌ってくれた子守唄が響いている

神聖な場所というのは

多分

足のすくむ動作の

連なりだから

体の中に

残るものは何もない

子守唄を

残すことはできないんだよ

だから声が鳴り止むことが

死ぬことよりも

今      怖かった

日      出来事を繰り返し思い出せば

と      力を抜くことが上手くなると

明      信じていたから握力はずっと

日      布団のはしにつかまったまま

の      てのひらで横転をくりかえす

境界をうやむやにする方法で

自分の痕跡を消し去って

どこから夜が剥がれるかわからないから

どこから目覚めればいいのかわからない

終わっていくことと

始まっていくことは

同じ意味なのに

宇宙に果てがあるのはどうして


 (震えてみればよかったね)


眠りの中でつぶやかれた言葉は

他人の心拍の影響を受けないけれど

母が好きだった詩集の言葉と

なぜかよく似ている

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