横断

この道は

車も人もほとんど通らないから

信号は赤くなる

光の中の人は飲んだくれて

アセロラジュースみたいな

透明な赤い光を

地面にポタポタこぼしていた

向こう側から

こんばんは

という声が聞こえて

人が現れる

立ち止まっている

人だ

昼間ここで速度超過をした車は

流れだけ抜き取られて

どんどん加速しながら

アセロラジュースを弾き飛ばす

通り過ぎていく速度が

人を無神経にゆっくりにするらしく

止まっているとは

そう言うことらしいです

行き先が決まった

こんばんは

アセロラジュースの刃で

細かく裁断されて

点と点

トメハネハライ

丸みも荒さも

小さく砕かれ

埃のように

舞い上がって飛んでいく

それが次第に明るく立ち込め

夜を薄めてくれるから

人は生まれた時からずっと

それを星だと勘違いしている

それは星ではないよ

信号は言うけれど

誰も聞いてくれなくて

不貞腐れて

青になる

瑞々しいという言葉が

頭上から降ってくる

人は動く

言葉に頭をぶつけると

痛いので

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