第2話 #500字小説『気持ちがかくれんぼ』

 片想い相手からホワイトデーにお返しでクッキーをもらったと友達が大騒ぎしていた。

渡す物で気持ちがわかるといわれているから。

キャンディーは「あなたが好きです」

マシュマロは「あなたが嫌いです」

クッキーは「あなたとは友達のままで」


「友達でいたいってことだよね? ……待って。友達ですらなかったんだから、一歩前進なのかな?」


 微笑ましく見守るほどお人好しじゃない。


「メガネ君のことだから、きっと何にも考えてないよ」

「そういうことに興味がなさそうだよね……そこがキュンポイントなんだけど」

「お母さんに頼んで適当に用意してもらったんじゃない?」

「えー、だったら意味知ってるよね? アドバイスされてクッキーになったのかも」


 あぁ、だんだんイライラしてきた。


「だいたいさぁ、物で表すなんて……言葉で返事しない男はダサくない?」


 黙り込んでしまった。

そもそも勇気を出してはっきり告白したわけじゃないから、虫がよすぎる。


「好きなやついるから……」ってきっぱり断られた私の身にもなってほしい。


 メガネ君って散々馬鹿にしていたのに、あんたがあまりにステキだと騒ぐから私も好きになっちゃったんだからね。

責任取ってよ、バカ。



◆#monogatary 2023年3月18日のお題「キャンディ、クッキー、マシュマロ」で

 創作した500字小説

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気持ちがかくれんぼ 想田翠/140字小説・短編小説 @shitatamerusoda

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