第21話
ある日……ついに、魔力を感じることに成功した。
それは、わたしではなくマチルダさんだったけど……
きっかけはマチルダさんの「なんだか胸がポカポカするわ」である。
「むねがぽかぽか?ポーションもどきのせい?」
「調子が変なのかい?」
「だ、大丈夫ですか?よ、横になったほうが……」
「いえ、そうではないのよ。ポーションもどきは体がポカポカするでしょ?今は胸のあたりがポカポカするような気がするだけ。体調は変わりないの」
「手首のまほうじんと関係あるのかな?」
マチルダさんの手首の魔方陣の色もほとんど濃紺に近くなっていたのでその可能性も高そうだ……
「どうかしら」
「ねぇねぇ……ぽかぽかってどんなかんじ?」
「そうねぇ……深く息を吸うとよく感じるかしら……」
深呼吸か……すぅー、はぁー……すぅー、はぁー……ん?これか!これがぽかぽか?
「なんかむねにあるね!でも、わたしはぽかぽかじゃなくてもやもやだけど……」
「そうなの?」
「うん」
「私は特に感じないね」
「わ、私もです……」
あれ?あれれ、これってまさか魔力なんじゃないの!
魔力量の差によって感じやすさがあるんじゃ……それ以外に考え付かないので魔力(仮)として瞑想して試してみる。
「ちょっと、目をつぶってためしてみるから……魔石ができたら声かけておしえてほしいな」
「わかったわ」
「は、はい!」
まずは検証用に両手に魔石を握って、深呼吸……
すぅー、はぁー……すぅー、はぁー……やはり、1度意識したらもやもやをしっかり感じる!
目をつぶり自分の心音に集中する……トク、トク……トク、トク……
そして、血液ではなくもやもやに集中し、もやもやを動かし手に持っている魔石に向かうように意識してみる……
「……ッサちゃん、メリッサちゃん!」
「メリッサちゃん!魔石出来てるわよ!」
「え?」
だって、いつもの半分以下の時間しか経ってないよ?
手元の魔石を確認すると……出来てる!
「できてる!」
「ええ!」
「で、できてます!」
「なにしたんだいっ?」
「ど、どうした!」
「なんじゃ、何が起きたんじゃ」
なんと……てっきり血液のように流れていたり、丹田とかお腹辺りにあると思っていたら、心臓だった!
それを意識してみると、どうやら魔力は血液のように巡っているのではなく自身の魔力は心臓辺りに貯蓄されているみたい。もしかして、魔力を貯めることのできる臓器が心臓あたりにあるのかも……
深呼吸でもやもやを感じるのは空気中にも魔力があるということだろう……
「メリッサがまたやってくれたのさ!」
「ほう……」
「なにをやったんだ?」
「魔石がいつもの半分以下の時間でできたのよ」
「半分以下?」
「そんなことができるのかの……」
信じられないようだ。それならば見せてしんぜよう!
「じゃ、もういっかいするね!」
「で、できたら声かけるね」
「うん!」
もう一度同じように両手に魔石を握ってから深呼吸……
すぅー、はぁー……すぅー、はぁー……
目をつぶり自分の心音に集中。みんなの視線は気にしないぞ……トク、トク……トク、トク……
ひたすらもやもやに集中し、もやもやを動かし手に持っている魔石に向かうように意識……お、もやもやが言うことを聞いてる気がする……
「……メリッサちゃん!で、できたよ」
「ほんとに出来てるぞ」
「じかんは?」
「さっきと同じくらいだったわ……いつもの半分以下ね」
両手の魔石がいつもより透き通っている気がした。気分がいいからそう見えたのかな。
ようやくだ……ようやく魔力を感じることができたのだ!
「たぶん、魔力をみつけたんだよ!」
「「「「「魔力?」」」」」
「うん、魔力を手にもっている魔石にむかうようにいしきしたの!」
みんなの顔にははてなマークが浮かんでいる。説明が難しいよぉ……
「えっと、しんこきゅうするとむねのあたりがポカポカしたり、もやもやするんだけど……ひとによって感じかたがちがうみたい」
「私はポカポカしたのよ」
「わたしはもやもやなの。それが魔力だとおもう」
「ポカポカ……か」
「もやもや……のぉ」
「もしかしたら、モゾモゾかもしれないし、ぷくぷくやむにむにかも」
「逆に冷えて感じる可能性もあるわね」
「うん……じんじん、グルグルかも?とにかくむねのあたりになにかあるんだよ!」
「よくわかんねぇが深呼吸すれば感じるってことか?」
「うーん?たぶん?」
「とにかくやってみるかね」
「そうじゃの」
「は、はい」
それぞれが深呼吸し、胸のあたりに集中している……その光景だけ見るとなんか変な感じだ……
「全く、わからんのぉ……」
「俺もだ」
「私もだめだね」
「ざ、残念です……」
「私はやっぱりポカポカしてると思うわ」
やはり、魔力量が多いほど感じやすいのかも?
「魔力量がかんけいしてるのかなぁ?」
「どうだろうね。毎日やっていたら感じるかもしれないね?」
「しばらく、試してみるか」
「そうじゃの」
「は、はい!」
そうして、みんなはもとの作業に戻った。
そんななかマチルダさんが……
「メリッサちゃん、私にも魔石の作り方教えてちょうだい」
「うん、しんこきゅうしてぽかぽかをかんじるでしょ?」
「ええ」
「そしたら、ひたすらぽかぽかに集中するの。それで、ぽかぽかか手にもっている魔石にむかうようにいしきするの」
「わかったわ……やってみる」
マチルダさんも魔力を感じることは出来るがなかなかそこから前に進めないようだ……こればかりは自分で打開するしかない。きっと、そのうち成功するはず……
わたしも魔力がどこにあるかわかったことで、何度も試すうち……徐々に動かしていけるようになり更に短時間で魔石を作れるようになってきた。瞑想も無駄じゃなかったってことだ。集中力をかなり必要とするのでつかれるけどね……
今度は足にはさんでも作れるように訓練するつもり。両手は慣れているからかもやもやをすぐに動かしていけるんだけど、足のほうには全く動いていかないんだよね……足に魔力を移動できるようになれば作れるはず。
◇ ◇ ◇
今までと比べて圧倒的に魔石のノルマへ割く時間が減ったので少し遠くまで雑草採取しに出かけたり樹液のとれる樹がほかにないか散策したりもした。
バケツさえ持っていれば、多少部屋からはなれても大丈夫っていうのは大きいよね。
それでも、時間ができたので昼寝をしてみたりもした……なんという贅沢……
しかし、魔石のノルマは早く終わってもグウェンさんとマイケルじいちゃんの担当する魔道具の基盤作りには関係ないので今まで通りだ。フランカお姉ちゃんはふたりを手伝っているみたいだけど、わたしだけのんびりするのは気が引ける……
ということで、部屋の改装をしたいと思いまーす!ぱちぱちぱち!
前から気になっていた水浴び兼トイレ壺の目隠しと入り口に扉がわりの暖簾を作りたいと思っている。
遠くに探索した時に使えそうな木の枝や草は採取して部屋のすみにつんである。
みんなはまた何かするつもりだと生温かく見守ってくれている。
「メリッサ、なにか手伝うかい?」
「私も手が空いているから手伝うわ」
「えっとね、入り口と水あびのときの目かくしを作ろうと思って」
「いいじゃない!特に水浴びの目隠し!」
「そうだね。入り口はともかく水浴びはいいアイディアだね」
ふたりも気になっていたんだな……もっと早く取りかかればよかった。
「草ふとんをつくってひもに引っかけようかとおもって」
「そうね……まずは作ってみましょう」
マチルダさんがどんどんアイディアを出してくれるので、わたしは段々と採取係になっていった。
おばばさまとマチルダさんはひたすら草布団や紐作りに励んだ。
部屋の角と角に紐を突っ張ることで、目隠しの草布団をかけられるようにしたり、木の枝と雑草で入り口に扉がわりののれん(草エプロン服が採用)をつけることに成功した……こんな感じだ
┌∥─∥────┐
│■■ 水 │
│■■■ │
╲ ■■■ │
│╲ ■■ │
│壺 ╲■ 布団 │
└───╲───┘
ちなみに、背が届かなかったので、長身のロランさんがやってきた時に壁の上のほうの石をつかって紐を張ってもらった。てきぱき指示するマチルダさんに少し驚いていたようだけど、トイレの目隠しだと聞き、すぐにはずれないようしっかりと重石をのせたのり工夫してくれた。これなら、多少の重さは大丈夫だと思う。
天井がないからこそできることだね。
これでようやく、トイレと水浴びのプライバシーが確保された。
ロランさんがそばにもう1本紐を張ってくれたので……濡れたボロ布や乾燥中の腰簑を干すことも可能になった。今まで、苦労して干していたのがとても簡単になった。
寒いときは目隠しを布団としても使用できる一石二鳥な仕組みなのだ。
その際にはロランさんにも魔力について教えてみたら……精霊やお祈りの話のときよりも理解がはやく、すぐに魔力を感じ取れてしまった。やはり、魔力量が重要説が濃厚か……ちなみに、魔力はぽかぽか派だったようだ。これで魔石作りが早くなると聞いてよろこんでいた。魔石1班のみんなにも伝えるそうだ。
「これで、みんなの水あびもふえるかな」
「ええ、私は増えると思うわ」
「そうだね」
あ、あと少し遠くでハーブっぽい草を発見したので、水に入れてハーブウォーターをつくってみたよ。たまには気分が変わっていいかと思って……
ただの水より、スッキリするしうまい。ポーションもどきと比べたら雲泥の差で美味しい。
え?これも毒?おなか壊すの?まじかー……美味しいのに。水汲みのときにこっそり作って飲んじゃおうかなぁ……
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