ソース焼きそば①
仕事帰り、いつものスーパーによる。
(今日も、2時間余りのサービス残業かあ。たまんないなあ)
美以野 真己は、最近いつも疲れていた。
新入社員の頃は良かった…。何もかもが、新鮮で一つ一つ仕事を覚えるたびに自信がついていった。意識はしていなかったが今考えれば若いだけで、周りにもてはやされていた。入社5年目ともなると、後輩からはできて当たり前で、お局や周りからはまだこんなミスしてるのかとやたらと厳しい。
男性社員は最近モラハラとかセクハラとか世間が厳しくなってきたものだから大ぴらっにはできないものの、若くて可愛い社員には見た目にも顔の表情がゆるゆる
である。
(ああ、腹が立つ。年月には逆らえないけれど)
どうにか頭を切り替えて、明るい店内で今日の夕食を物色する。
弁当の割引シールが、店員によってゆっくりと貼られている。
それを、横目で追い越す。
(今日は早く帰りたいし、炒めるだけの焼きそばを買っていこう)
足早に、麺コーナーでたれ付きの焼きそばを2袋手に取る。
その時、少し後ろの方からざわざわと緊迫した空気が流れ込む。
「おい、どけや。わちゃわちゃとうるさいんだよ。給料上がらんくせに、いちゃもんばっかつけやがって」夕方の混んだ客が、その声の主だとおもわれる作業服を着た男を避けるように人が足早に通り過ぎる。
(私は、その男から目を離せないでいた)
見る見るうちに、その男は私の至近距離に近づいて来ていた。
会社への不満をわめきながら、いかつい包丁を握りしめていた
逃げてくる人々に押されながらも、私は動けなかった。
それどころか、私はその男の前に近づいて歩いていた。
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