プレイヤー・キル-4


「【開示オープン】」


 ジョーを殺した僕は、自分のステータスを確認する。


「よし、あった」


 開いたスキル一覧。


 そこに、お目当てのものを見つけた。


 取得できるスキルの中には、殺人行為を行うことで開放されるものもある。


 その1つが【暗殺術】。


 この【暗殺術】の主な効果は【未発見時におけるダメージの増加】や【クリティカル発生時のダメージ増加】など。


 その他にも、レベルを上げることでクリティカル発生率の高い剣技が解放されたりと便利なスキルだ。


 これが欲しかった。


 ギルドで絡まれた時から、期待していなかったとなると嘘になる。


 だけど……まさか、ここまでスムーズに手に入るとは思ってもみなかった。


 ジョーを殺したことで手に入ったSPを使い、【暗殺術】をアクティベートする。


 物騒な名前のスキルだが、命の軽そうなこの世界なら、持っていても特段怪しまれないだろう。


 流石にスキルレベルが高くなれば、対策はする必要は出てくるけれど。



 今回、このスキルが欲しくて殺人行為を行ったが、対策はきちんとした。


 冒険者登録が抹消される条件の1つである殺人行為。


 この定義には、幾つか抜け道が存在する。


 例えば、モンスターを他者に擦り付けるMPKは殺人にならない。


 また、同士討ちフレンドリーファイアについても、状況によってはPK判定にならない場合もある。


 そしてもう1つ。


 【PKを行ったプレイヤーを殺した場合、殺人行為と判定されない】。


 PKの定義は【攻撃によってプレイヤーの命を奪った者】。


 PKを行ったプレイヤーを【鑑定】で確認すると、ネームの表示が赤く染まる。


 そして、PKを繰り返すことで黒に近づく。


 ジョーを【鑑定】すると、対面時は白だった。


 けれど、ダレンを殺したことで赤く染まった。


 よって、殺人者であるジョーを殺した僕のネームは白いまま。



 ここで問題が発生する。


 殺人者であるダレンを殺したジョーは殺人者にならないのではないか?


 そう思い、僕もMPKをして【暗殺術】を諦めるつもりだった。


 しかし、幸運なことが起きる。


 ダレンに殺されたと思っていたジェームズが死んでいなかったのだ。


 おそらく、これは二人のステータス傾向にある。


 ダレンはおそらくVIT特化型のステータス。


 ジェームズに加えた攻撃は、見た目ほど彼のHPを削っていなかったのだろう。


 対してジェームズはHPが高いステータスだったのだろう。


 加えて、ジェームズは湿布を貼っていた。


 湿布にはHPの持続回復効果がある。


 また、ジョーがダレンを刺した一回目の攻撃。


 あれが未発見時の一撃にカウントされたのか、ダレンのHPを大きく減らした。


 そして、ジェームズが絶命するより、ほんの少しだけ早くダレンが先に絶命した。


 【鑑定】を使いながら三人のゲームを見ていなければ気付かないところだった。


 正直、嬉しい誤算だ。


 PKを合法的に行うとなると、最短でもBランク昇格が必須になる。


 Bランクからは盗賊団やお尋ね者の討伐が依頼に追加されるが、そこまでだと時間がかかり過ぎる。


 早い段階でPKを達成できたことは、今後のモンスター討伐が捗ることにも繋がる。


「貴方には感謝していますよ、ジョーさん」

「――」


 苦悶の表情を浮かべながら事切れるジョーさんに感謝の言葉をかける。


 もちろん、返答はない。


 三人の死体を見つかりにくいように茂みに放り投げる。


 後はモンスターが掃除をしてくれるだろう。 


 【暗殺術】という思わぬ収穫に嬉しくなりながら、僕は軽い足取りで町へと戻った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る