第一章『破壊戦火』編
1話 最破
「ふんふん!!」
これから戦いが起きようとしている時、レイムは嬉しい気持ちに包まれている。
レイムが行う訓練はジュウロウが指導者であるため厳しいのは当たり前であるが、彼の評価は天才の域に届くものであり、戦闘で扱える基礎的な剣術から魔力操作などの成長速度は二年で完璧に近いものにまでなった。
破壊神が住まう城を出ると漆黒の荒野が広がっている。
破壊の領域レイズレイドは各領域の中でも範囲は最小という特徴を持つが、それで占拠されないのはトップクラスの戦力を保有しているからだ。
小さい領域内には神の城、竜種が住まう山脈、地下には機人種が生息している。
「レイムさまぁ!! おっはよ~ございま~す!!」
城の前で機人が七十名、左右に三十五ずつに整列しており、その後ろに最破が数名、集合している中、真っ先に近づいてきたのは三人の少女だが、一番早く、外見はレイムと同じ年齢であり活発な金髪の少女。
「おはよ~シール!!」
「れ、レイムさま、ふわあ~、おはよう、ございますぅ」
「レイム様。おはよう、です」
「ピール、リールもおはよう!」
遅れてきた二人。三人はどこか似通った外見、後の二人はレイムより年下に見えるが生きている年月はレイムより遥かに上である。
最破の第七席、シール・レペレスト。金髪ロング、赤色の瞳、赤と黒のドレスを身に纏う外見年齢は十二歳にして吸血鬼三姉妹の長女。
最破の第八席、ピール・レペレスト。銀髪ショート、青色の瞳、青と白のドレスを身に纏う外見年齢十一歳の元エルフにして吸血鬼姉妹の次女。
最破の第九席、リール・レペレスト。灰色の長髪、紫色の瞳、褐色の肌。二人とは違い、身体の前後のみを隠すように灰色のエプロンのようなもの一枚着て、腰のあたりで靡かないように縛っている。外見年齢は十歳の元魔人にして吸血鬼姉妹の三女。
三人の中で一番明るいシール、力のせいで常に眠くて静かなピール、無口だが忠誠は二人以上のリール。吸血鬼という血を摂取することで力を得る生物だが、彼女たちレベルになると魔力でその代用が効くが、やっぱり血は欲しいため、いつも嘆いている。
訓練の一環として戦闘技術は彼女たちが教えている。精神が外見によっているためか、レイムの印象として年が近い子達という認識であり、最破の一員であるため忠誠心もしっかりとしているが、レイムに対して物理的な距離が気付くと近くなってなるというスキンシップが激しいのが特徴だ。
吸血鬼三姉妹であるが、元々血縁関係などなかったがレインの研究の一環として吸血鬼三姉妹となり、輸血した血が共通している。
「レイム様、おはようございます!!」
最破の第三席、レイン・レペレスト。金色の長髪、碧眼、白シャツの上に黒を基調として縁が紫の上着、スカート、胸元のボタンはその大きさから閉めることはできないほどの巨乳であり、最破の中でベルーナといい勝負だが、一番デカい。
魔法適正の高いエルフであり、種族の中でも天才であったが、とある理由から種族から離れ、当時の破壊神の勧誘を受けた。研究の一環であったが三人の生きたいという願いを叶えた天才魔法使いであり、お互いが親子として認識している。
次に挨拶してきたのは筋骨隆々の男と黒いドレスを身に着ける女性だ。
男の方は最破の第四席、ビーヴァルド・レブロヴァール。愛称はビー。鉱物並かそれ以上の硬度を誇る翠色の鱗と体毛が手足、頬と首、肩、腰と全てではなく一部分を覆っており、頭から同じ色の二本の角が生えている。体躯はジュウロウより大きい身体つきである。
最強の生物として最破の中でもトップクラスの実力を持ち、竜人形態時は肉弾戦による近接戦闘はジュウロウに次ぎ、竜形態時は通常の竜王の六倍以上の体躯を誇る“無敗の巨竜”として名を馳せた姿へ変貌する。竜は一個体に一つの属性だけしか適正しないため、相性問題で不利になる可能性もあるが、その差ですぐに敗北するわけでもない。
その巨体が顕現する際に莫大な魔力を吸収するため、一時的に周囲の魔力が枯渇する。巨竜の名に恥じない肉体能力を持ち、半端な力では傷、鱗を砕くこともできないが、体躯の大きさによって動きは遅く、それを改善して全方位に魔力を操り、触れた瞬間、物体を切り裂く風を周囲に展開する。
竜形態時の魔力量は最破の中でトップクラスの性能を持ち、風を何重にも重ねた鉄壁を展開し、暴風を発生させ、容易く地形を変化させて竜であっても身動きが取りづらいなど攻防は完璧であり、破壊神だからこそ勝利できた逸材、竜の中でも天性の才能を持つ。
女性の方は最破の第五席、ベルーナ・ジルミゾン。種族は悪魔であり、過酷な環境で育つ。そのためか肉付きはレインより上であり、大鎌を容易く操る。
彼女の力は影を操り、取り込んだ魔物を使役することができる。
律儀な性格で大人としてワ―レスト、レインに並び、レイムの女性が担当する場面では教育係を行っている。
「レイム様、魔王軍を目視可能距離まで進軍しています」
機械の身体、種族の中で高度の技術力を持つ機人の筆頭個体にして最破の第二席、ワーレスト・ゼロログ。紫色の生物の毛ではなく、鋼鉄の線に思える光輝く。鋼鉄の肌、スリムな体躯、何でも熟せる。戦闘能力はジュウロウに次ぐが、後衛において支援サポートを担当している。
「やる気はいいですか?」
最後に最破の第一席にして最破最強の男、ジュウロウ・ハリアートはレイムに問い掛ける。
最破たちの間の向こうに見える漆黒の軍勢を見る。
それに怖気づくような素振りは一切にせず、逆に微笑むと同時に彼女は手を前に伸ばす。
少女の手の中に顕現するのは漆黒に染まった一本の剣だ。
その剣の名は《破壊剣ルークレム》――先々代から受け継いだ神が創り出した武器、神器を手にする。
まだ体躯的には大きいものだが、それを腰の部分にある紐に引っ掛ける。
「この力を使わないと勿体ないでしょ!!」
自分の力を過信してズカズカとジュウロウを通り越し、自軍の間を歩いて前線に出る。
破壊の領域レイズレイドは機人のシステムが領域内はもちろん領域外の限界距離まで監視を行っている。監視に引っかかり、こちらに進軍したと判断された時点で遠距離爆撃を放つことも可能だが、領域間、他種族の印象としてそれはあまり良い手ではないが、防御壁を展開し、物理的に侵入不可能にすることも手札は存在する。
「ワーレスト、指揮は頼んだ」
「了解。いつも通りに、気楽に行きましょう。全機、警戒態勢……敵の進行度に合わせて、敵軍の後方から殲滅し、数を減らす。命令を待て」
前線で止まり、レイムの後ろに護衛としてリツリが立つ。
そこはあっという間に戦場と化す。
空気は張り詰め、その最前線に立つ少女は漆黒の剣を掴み、引き抜く。
訓練を始めた頃は件が重く、訓練後は腕が痛くなったが今では容易に振るえるようになっている。
神器と呼ばれるその刀身は漆黒の染まっており、これほどの黒色の鉱石は存在せず、建造方法は破壊神の力によるものだ。切れ味は少女の腕力で振るうだけで刃に当たったものは切り裂かれる威力を持つ。
「さぁ、やろうか!!」
やる気満々なレイムは剣を構え、破壊神と最破、魔王軍による戦いが始まる。
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