第3ステージ 『アワセマス』
第23話 合成四角
≪ミナサマ、正面のスクリーンをご覧ください≫
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■第3ステージ
アワセマス ~合成四角~
■ゲーム内容
男女2人1組のペア戦
左右のマスに分かれ、1人1マスずつ記載し、1つの回答を導く
問題は全部で5問
■クリア条件
上位2位までのペアが勝ち抜け
■ルール
●会話やジェスチャーによるコミュニケーションは禁止。
※但し「チームポイント」に応じた文字数での意見交換は可能(下記参照)
●最下位ペアに「死」を与える
●同率最下位の場合はルーレットによりペア1組に「死」を与える
■チームポイントについて
●チームポイントは「1tpt=1文字」に換算、使用できる
●ゲーム開始時点で、各ペアには「3tpt」が付与される
●チームポイントはいつ利用しても構わない
例:1問目で、1tpt(1文字)を使用した場合
3-1(1文字のみ、ペアで意見交換が可能)=残り2tpt
例:4問目で初めて使用した場合
3-2(2文字使用で、ペアで意見交換)=残り1tpt(1文字)
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≪ソレデハミナサマ、まずはペアを決定してください≫
≪ペアハゴジユウニ、皆様が決めて頂いて結構です≫
今回は個人戦ではなく、二人一組での勝負ということか。しかも桐島が決定するのはなく、チーム構成をコチラ側に丸投げするとは……。裏工作無く、自分たちで公平に決めてくれ、そう言われている気がした。
「へぇ~、次はペアでやるんだぁ」
「だ、男女で……」
思い思いを口にする参加者たち。ペアとはいえ、男女一組という部分だけは必須の条件付けがなされている。ということは、ゆめ、蜜、未来美のうちのいずれか一名と組むということ。
こういう場合、公平性を考えれば「グーチョキパー」を男女それぞれに行えばすぐに決まる。郁斗だけでなく、おそらく他の参加者もそう思っているだろう。
「ぐ、グーチョキパー……ですかね」
「待って待って。そんな簡単に決めてイイわけ?」
口火を切った数馬を、未来美が即座に制止した。
正直、二人の行動は理解できる。なぜならこのステージ。組んだ人間と共に……敗北した場合は、「共に命を終える」という結末が待っている。
この中の誰かと一緒に、人生の幕を閉じる宿命が定められている訳だ。だからもあってか、男女それぞれが互いに、相手を吟味するかのような態度を始めていた。
「ねえ! じゃあさ、こういうのはどう?」
「フォーリングカップル~ッ的な感じで、指名し合ってさ♪」
人差し指をピンと立て、提案する蜜。
「何よそれ、バカバカしい。もっとしっかり吟味すべきよ」
「はあ? ウッザ。
蜜と未来美の二人が、再びバチバチし始めた。
「ねえ、ところで浦城くん」
「え? あ、はい」
すると未来美が唐突に、郁斗に向け質問を投げかけた。
「浦城くんって、大学は出てる?」
未来美からの唐突な質問。
が、その一言で、何を探ってのかが一目瞭然だった。
「い、いや……自分は中退です。それに大学も、名の知れたトコでは無いです」
「ふーん、そっか。ゴメンね、急に個人的なこと聞いちゃって」
謝罪の言葉を放つ未来美だったが、悪びれる様子を繕っただけで、まるで脳内で採点をしているかのよう。
「あたしはこのペア決め、“相性”が大事だと思う」
「あいしょう? フィーリングカップルと何が違うワケ?」
「全然違うわ。もっと合理的な相性よ。あたしが主張したいのは、‟年齢”。年齢差があればあるほど、これからのペア戦で不都合が出ると思わない? 考え方や価値観の相違が起きたりして、齟齬が出る可能性が高いっていうか。だからあたしは、年齢が近しい同士で組むのが良いと思う」
なるほど。考え方としては全うな一つの意見かもしれない。
「申し訳ないけど、皆の年齢を教えてもらえないかしら?」
未来美の中ではきっと、一見した時点で誰が年長で最年少かの予測は付いている。それは郁斗も同様だった。だから誤魔化してもしょうがない。
「ボ、ボクは、21です」
「アタシは20だけど」
「私は……17、です」
そんな風にして、各々が年齢を述べてゆく。
未来美の案で実行した場合、組み分けは次のようになった。
・師谷(28歳)&未来美(27歳)
・郁斗(23歳)&蜜(20歳)
・数馬(21歳)&ゆめ(17歳)
数馬とゆめからは、特に目立った発言は無い。少々、ゆめの目が泳いでいるような気はするが……。一方郁斗とペアになる蜜からも文句は出なかった。むしろ「ヨロシクね~」といった感じで、小さくウィンクを見せてくる。誰と組もうが大きな差は無いように感じていた郁斗は、無言を貫いた。
だが——。
この未来美の案に、異を唱える人物が一人。
「未来美さんの案は理解できます」
「けど……それは逆に、リスクも考えられませんか?」
「え? どういう意味?」
「考え方や価値観の相違を極力失くす、それはわかりますが……。これから出される問題によっては、若い学生の子たちの方が有利になる可能性も有り得ます。その場合、これは公平とは言えないでしょ?」
「ま、まあ……そうかもしれないけど。でも」
「だから僕は近しい年齢で組むのでは無く、‟バランス”を重視し振り分けるべきだと思います」
「つまり。年齢順に並べ、上と下同士で組み合うんです」
そう言って今度は師谷が、以下の新たな案を提示した。
・師谷(28歳)&ゆめ(17歳)
・郁斗(23歳)&蜜(20歳)
・数馬(21歳)&未来美(27歳)
中間に位置する郁斗と蜜には何の変化もない。要はゆめと未来美が入れ替わっただけ。その案を聞いた瞬間、あからさまに未来美が怪訝そうな表情を見せた。数馬のこれまでの性格や所作を見て、まるで頼りないとでも言うかのように。
一方、ゆめはというと……。彼女は数馬の時以上に目を泳がせていた。
明らかな動揺、そして……不安。郁斗はすぐにその心境を察する。なぜなら郁斗は既に知っている。師谷倫太郎というこの男が、彼女にご執心であることを。もしかすれば、蜜あたりも勘付いてるかもしれない。だが蜜は何も言わず、
(あっ……)
と、その時。一瞬ゆめが、郁斗の方に視線を送ったのがわかった。
ただ見つめた、それだけだが……。
師谷の意向を知っていながら、何もしないのも気が滅入る。このゲームとは別の意味で、彼女には別の、何か鬼気迫るような状況が訪れるかもしれない。……それなら。
「あの」
師谷の案が採用されようとする、その手前で。
郁斗は手を挙げ、口火を切った。
「オレはやっぱり、グーチョキパーで決めるのが良いと思います」
「いや、それは流石に。やっぱあたしがさっき言ったみ、っ」
「ゆめさんはどう思う?」
未来美の言葉を遮り、郁斗はゆめに問いかけた。
「わっ」
「っ、私も……浦城さんの案で」
「そっか。ちなみに数馬も、異論はないよな?」
「えっ、あ、ああ……は、はい」
間髪入れず素早く、ゆめと数馬の言質を取る。
「ここまで意見が分かれてましたよね。その中でオレと彼女と数馬の三人は、グーチョキパーで意見が一致してる。もし仮に多数決をしたとしても、三票で多数。だからグーチョキパーにしましょう。ここは運に任せるってことで。それに最年少の男女二人がそうしたいって言ってる。オレたちは二人より年上なんだし、尊重してあげるべきでは?」
語気を強め、郁斗は言い伏せた。
≪ミナサマ、そろそろ始めたいと思います≫
そこへアシストするかのように、ネズミ声が煽りの言葉を重ねる。
「はぁ~」
「ま、いいんじゃない。もう時間無いみたいだし」
「ん……仕方ないわね、ならそうしましょう」
そう言って蜜、未来美が折れ、師谷も止む無しといった表情を見せる。
こうしてグーチョキパーにて、ペア決めがなされることとなった。
「ふぅ」と静かに吐息を吐くゆめが、郁斗を見つめる。そんな彼女に対し、郁斗は軽くピースサインをして見せた。
そのかざした手に、目線を注ぎながら。
「「「「「「せーの」」」」」」
全員の声が重なると同時に。
六人の手が形を模し、開示された。
その結果。
グー:師谷(28歳)&蜜(20歳)
チョキ:郁斗(23歳)&ゆめ(17歳)
パー:数馬(21歳)&未来美(27歳)
こうして。
次のステージを競う、ペアが決定した。
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