序幕② 4月14日(第1発見者の証言)

「ちょ、ちょっと……大丈夫ですか?」

「すっ、すぐに救急車呼びますから!」


「って、あれ……」

「番号、番号何番だった?」

「そうだ交番、交番に」

「今、お巡りさん呼んできます!」


『シ』

「え? 何ですか?」

『シ……ド……』

「すいません。もう一度いいですか?」



『シ、サ、

       ド、ク、

             ア……』



 ◆



『四月十四日未明。東京都青檜あおひの青檜あおひの駅付近の路上にて会社員の千切原光ちぎりはらこうさん(二十四歳男性)が死亡しているのが発見された。発見当時、千切原さんは首や腹、背中など数十か所にも及ぶ刺された跡があり、左右全ての指は切断された状態。さらに両手首には長時間拘束されていたと思われるうっ血痕けつこんも見つかり、猟奇的殺人事件として警察は捜査を進めている』



 ◆



「もうびっくりしました。今でもトラウマです。あの日は仕事を終え飲みに行った帰りで、結構酔っぱらってて。で、店を出たらものすごい大雨。店の人に頼み込んでどうにか傘を借りることができたんで、タクシーを拾おうと駅に向かいました。そしたら後ろで、バタッて大きな音がしたんです。で、振り返ったら血まみれの男性が倒れてて。でも最初はわかりませんでした。真っ暗な夜だったし、雨に流れて血の色も薄かったから。けど、その手を見てゾッとしました。指が、指が無くて。すぐに救急車を呼ぼうとしたんです。ただ番号、ド忘れしてしまって。だから交番、駅前の交番にと。で、行こうとしたらその人が。力尽きる前、最後に何か言ったんです。でも。よく聞き取れませんでした。すいません」

「え? 何て言ってたか、ですか? ええっと、たぶんですけど。確かその時……」


飼育小屋シイクゴヤ?——って。意味わかんないですよね」

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