シンサイド・スクエア

七雨ゆう葉

序幕① 5月13日

 その現実を目の当たりにし、心拍数が極限にまで加速してゆく。

 と、同時に。脳天から足のつま先にかけて。浴槽の栓を抜いた時のように急下降してゆく血の気。

 

 ——まだ、信じられなかった。


「ポタ……、ポタ……」


 けれど。ジトっと背筋をつたう生ぬるい汗の温度。そして、額から冷たい床へ連続する粒の破裂音に。これが免れ得る悪夢ではないことを自覚する。


 ここは選ばれし者が集まる「新境の地」

 そして。逃れることは許されない「楼閣」



生息セイイキ無き聖域セイイキへ、ようこそ』



 全ての悲劇の始まりは、その恐々たるアナウンスからだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る