腐食の世界〜ギャグ集〜

もりすけ

第1話 苦手な物を食べ切らなければ出られないダンジョン(ジオ・ルーシー・ブッチ)

 ジオ、ルーシー、ブッチは『苦手な物を食べ切らないと出られないダンジョン』を攻略することになった。


 ダンジョンは密室になっており、中央には机が置いてある。三人は椅子に座らせられ、何らかの不思議な力が働き、席から立ち上がることができない。

 目の前の机には皿が3つ置いてある。


「なるほど。この皿の上に出てくるものをそれぞれ食べ切らないと、僕らはこのダンジョンから出られないということか」

「乙!?」


 ジオがそう理解した時、ブッチの目の前の皿が光り、『真っ赤なカレーのルー』が現れる。

 辛い物が苦手であるブッチへの試練のようだ。


 ブッチは「ハバネロ乙」と言いながらヒィヒィ食べる。唇を赤く腫らしながらも果敢に食べるその姿は、何事にも動じないギルドの守護者のものである。


「あの辛さをライス無しで食べなければいけないとは……。このダンジョン、容赦がないな」

「ジオ、ブッチが弱音を吐かずにあんなにも頑張っているのだよ。ボクらも潔く自分の試練をクリアして、三人で華麗に脱出するとしよう」

「了解」


 ルーシーの皿が光り、皿の上に蠢く複数の何かが現れた。

 カメムシ(新鮮フレッシュ)である。


「フー!」

「うわぁ、ルー、飛ばすなよ! 君への試練だろ! 潔く食べろ!」

「フー、フー!」


 カメムシ達はルーシーの吹く息によって飛ばされるものの、律儀にも元いた皿に戻ってくる。


「ほら、見なよ。『ボクらを食べて?』だってさ」

「……こんなものを食べさせようとするダンジョンを考えたヤツは、ろくでもない人間に違いないな……」


 ルーシーが死んだ顔でフォークとナイフを動かす。「ぷきゅ」「ぷぎゅ」という音が皿から鳴った。


 ジオの皿も光る。


「お、ついに僕の番か。二人が頑張っているのなら、僕も努力しないとな」

 

 皿に現れたのは、二つの丸く大きなプリンにピンクの突起が付いたデザート『巨乳プリン』であった。

 ジオは両目を塞いだ。


「巨乳あああああああああああ」

「こら、ジオ、努力したまえ! 君の専売特許だろ! それがなかったら君に何が残ると言うんだね! 目を開けてさっさと食いたまえよ!」

「無理無理あああああああああ」


 薄目を開けては閉じるを繰り返すジオ。

 脳裏には巨乳の女性に関するトラウマが蘇っていた。

 しかし、このままではこのダンジョンから一生出られない。

 ジオは泣きながら、ふるるるんと震えるプリンをスプーンで掬っていく。


「えぐ、えぐ、この柔らかさ、まさしく凶悪なアレだ……」

「突起物を先に乙! 突起物を先に乙!」

「ブッチ、やめたまえ。ヒントを与えるものではないさ。そんなことをしてはジオだけぬるくなってしまうだろう。ここは皆平等に苦労するべきなのだよ」


 三人は汗と涙を滝のように流しながら食を進め、なんとか完食し、ダンジョンからの脱出を果たした。

 外に出た三人は口直しに速攻酒場に向かったのだった。

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