@kyabetu_kun

第1話

泥沼があったので、手を突っ込んでみる。


肘あたりまで突っ込んでみたが、底にはつかなかった。


肩まで入れてみたが、それでもつかなかった。




水面ギリギリまでつけていた顔に、何かが噛み付いた。


びっくりして顔を離すが、その正体は分からなかった。




再び腕を突っ込んでみる。何かつかめるものはないかと探してみるが、泥を掴むばかりだった。




諦めて帰ろうとしたところ、後ろから声をかけられた。




「何か見つかったかな」


振り向くと、若い男性が立っていた。




「いえ、何も見つかりません」


僕が答えると、男は笑って歩き去った。




どうしてか、僕を噛んだ何かと、男は関係しているような気がした。




そうして僕も家にかえることにした。


泥だらけの腕に親は驚いていたけど、そのまま自分の部屋に入る。


雑誌を読んでいたりして、しばらくしたら夕飯の時間になった。




今日の夕飯は目玉焼きとソーセージだ。朝ごはんみたいな夜ご飯だな、と思って麦茶を飲んだ。




両親は僕の腕を訝しげに見ている。それが少し面白かった。


3日ぐらいはこの泥を落としたくない。


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