第43話織田、紀伊へ




なんと中国地方の情報が入ってきたぞ。

足利義輝が密かに呼び掛けたらしく、毛利元就もうりもとなりの活躍がいちじるしい。


毛利軍が3月に出雲へ出陣。

4月には、尼子の月山富田城を包囲。

天然の山を利用。数多の工夫を施されている城であった。

最も難攻不落の要塞城といわれ【天空の城】とも呼ばれている。


籠城した尼子軍も大変だ。激怒げきどした1人の男が居た。

あまりにもの激怒に尼子晴久あまごはるひさは、クモ膜下出血まくかしゅっけつで倒れて急死。

それは、尼子の滅亡の合図でもあった。


忍び込んだ忍者が、急死するまでの行動を観察して報告された。



足利義輝が暗躍していた。

尼子を助けるだろう人物には、前もって書状を出していた。

「決して助けるでない」と書状には書かれている。


尼子は密かに助けを求めても、誰も係わることを拒んだ。

使者に対して口答で・・・「助ける気はない」


それを知った尼子は絶望。

将軍が裏切った事を知ったのだ。

尼子軍が籠城をし続ける困難を知った。誰も助けに来ないのだから・・・

尼子義久あまごよしひさは降伏を申し込んだ。

戦国大名としての尼子氏は滅亡した。


これにより元就は一代にして、毛利氏を中国8ヶ国を支配する大名へと成長。


豊前国14万石

長門国13.1万石

周防国16.8万石

安芸国19.4万石

石見国11.2万石

出雲国18.7万石

備後国18.6万石

伯耆国ほうきのくに10.1万石


合計 121.9万石


その勢いはとまらない。

備中へ侵攻して行ったのだ。


「5月までには、備中を持たないと思われます」


薬袋庄馬みないしょうまが報告。


「ご苦労だった。よくぞ我楽がらく忍者をそこまで育てたな・・・」


「三言さまには、よくして頂いているので・・・ただ、足利義輝にはご注意が必要かと、もう毛利しか頼れる者がいなように謀略しております」







同時刻。

織田が動き出す。


2月19日。

紀州雑賀の三緘衆(雑賀三組)と根来衆(根来寺の僧兵たち)の杉之坊照算すぎのぼうしょうさんが信長へ内通することを約束。

仕掛けたのは、木下秀吉。大量の銭を使ったらしい。


※雑賀には5組の勢力があった。

その中の宮郷、中郷、南郷、これら3つの村を縄張りとする三組が三緘衆。

三緘衆が信長に寝返ったことで、残り二組(雑賀荘と十ヶ郷)が信長の敵対勢力となった。



3月2日に紀伊に進軍することを家臣らに伝えた。


伊勢方面からの侵攻。

もう1つは、大和からの侵攻だった。

大和は、一色軍と交戦中で織田軍にかまってられない。



織田軍の大和方面は、杉之坊照算と三緘衆が道案内を務め、木下秀吉、佐久間信盛、織田信孝、織田信包、ら1万5千人の兵力。


伊勢方面は、明智光秀、丹羽長秀、滝川一益、織田信忠、織田信雄ら3万人の兵力であった。




大和方面の織田軍は、高野山を迂回するように高隅田党が支配する領地に入った。

高隅田党に使者を出すも交渉は決裂。そのまま戦うことになる。


隅田党も一揆の集団だが、武士が中心となった一揆であった。


しかし、中古となった火縄銃が加賀三言寺からローンで織田軍の手に2000丁も入った。

その1000丁から火が一斉に吹いた。


総崩れで呆気なく終わる。




次に攻めたのは粉河寺。

前もって木下秀吉が数人を攻略。


「天に向かって脅しの火縄銃を撃てーー!!」


粉河寺に響く銃声。


織田軍を目の前にして、粉河寺内の勢力図がかわった。

政治に係わらない約定を交わして、領地安泰を約束。



次に向かったのは、根来寺。

根来寺にも火縄銃が入っていた。僧兵による鉄砲隊が作られた。

そんな根来寺を見ながら雑賀に向かう。



いよいよ雑賀二組だ。

雑賀二組(雑賀荘と十ヶ郷の勢力)に攻め入ったが、敵は雑賀川の左岸に柵を築いて防戦の姿勢をとった。


旧火縄銃でも、従来の火縄銃より性能はいい。

柵からかまえる撃ち手をことごとく撃ち殺す。

もう、呆気ない程に総崩れ。


「今だ、突撃!!」


号令で一気に川向こう突撃が開始さる。

柵は壊され、逃げ遅れた者はことごとく斬られる。


鈴木孫一(雑賀孫一、のちの鈴木重秀で雑賀衆の鉄砲隊長として有名)の屋敷に向かった。



「なんだと、孫一を逃がした!!」





3月5日。

伊勢方面の信長は、砦や城を落として突き進む。



3月17日。

紀伊長島城まで進軍して陣を構えた。

これを知った紀伊長島城の城主は降伏。ここに信忠が陣を構えた。


信長は、19日に紀伊長島城を出発。




畠山高政はたけやまたかまさは、三好との戦いに敗れて河内から紀伊に逃げていた。


「なぜだ!三好に敗れて、更に織田が何故紀伊に攻めてくるのだ」


「殿、戦力もがた落ちなのに、このままでは負けます。殿のお命のためにも降伏しかありません」


畠山高政は、降伏を選んだ。

織田信長も高野山のことを考えて、快く降伏を受けた。



ここで、大和方面と伊勢方面が合流。

高野山を囲むように陣を構えた。



「ここで抵抗しても、加賀三言寺が介入すれば大変なことになるやも・・・」


「織田側の木下秀吉の話では、政治に口出しぜずに大人しくしていれば領地安泰と言っております」


高野山側も徹夜で話し合って降伏を選んだ。

加賀三言寺の勢力を恐れての決断だった。


加賀三言寺が動けば、最悪で皆殺しに合うと思っている。



織田に対して政治に係わらない約定を交わして、領地安泰を約束。

そして、あっちこっちから逃げ込んだ残党も引き渡されることになった。


「お前ら、それでも仏に仕える身か!」とグルグル巻きにされて、突き出される。




ようやく紀伊国は、織田に落ちた。



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