第4話服部半蔵見参!




ああ、これで3つ目の寺だ。

りもせずに何度も何度もちょっかいをかけやがって、いい加減にしろよ。


「お前らが支配下の村々は、すでに拙僧せっそうの三言教に落ちた。無駄な抵抗はよせ!速やかに投降してここ立ち去る事を許す」


「何を言いやがる。この第六天魔王の化身が」


あああ、とうとう第六天魔王とののしられたよ。

たしか織田信長も呼ばれていた名だ。


「中村さん、第六天魔王ってどういう意味なの」


「三言さま、呼び捨てで呼んで下さい」


「え!年上ですよね・・・呼び捨てでいいの」


「はい、呼び捨てでお願いします。それと第六天魔王とは、仏道修行者を仏道から遠ざけようとして現れる魔であると説いてます。あの者の戯言ざれごとなので気にしなくてもよいかと・・・」


いやいや気になるでしょう。

それに納得もしてるんだ。

俺の念仏は、相手の心にしみる言葉に変換されて、惑わしてしまう。

だから坊主は怒りだして襲ってくるんだよ。

自分自身が信じた仏の道が否定されたように・・・



いわんこっちゃない。

襲って来やがった。刀をかいくぐりボディブローでいちころだ。

おっと右ステップして左アッパーカットで相手を簡単に空中に舞ってしまう。


フック、ストレート、ジャブと次々倒す。


残った坊主はぶくぶくに太った坊主と取り巻きだ。


「このまま何も言わずに立ち去れ!さもないと痛い目にあうぞ」


おろおろしながら坊主は、立ち去った。

抵抗しない者には、手出ししないことを知っているみたいだな~


「中村、米を村々に配ってくれるか」


「ご希望にそえるようにします」


中村の配下なのだろう者がテキパキと米俵を運び出す。

手の平をだすと雪の結晶がふわりと接触して消えてしまう。

空を見上げる。ああ、雪が降ってきた。



その時だ。後方から手裏剣が飛んできた。

中指と人差し指でサッとはさみ、なんと毒塗りの手裏剣だ。

更に手裏剣が投げられてきたが、全てをはさんでは捨てる。

もう無くなったようだな。


逃げ出す忍びを追い駆け続ける。


1人、2人、3人、4人と手加減したレバーブローで気絶させてゆく。

最後の1人も抵抗むなしく気絶。




「目覚めたようだな、誰に雇われた。素直に話してくれるかな、そうしてくれると助かるんだが」


無言のままで目だけがこっちをにらんでいる。

捕まってしまったのに諦めないのか、それが忍びなのかな。


「良い提案をしよう。1つのから城があって、そこの城代にならないか」


「我らは忍びぞ・・・そんな嘘にのるか、フン」


「中村、嘘をついた事があったかな」


それがしは、嘘を言われたことも聞いたことも御座いません」


「ほら、信じてもらえるかな・・・まだ信じないか」


おもむろに立上がって部屋のすみにあった木箱を抱きかかえて、忍びの目の前に置く。


「これは城代の給金だ。これで拙僧せっそうの家臣なれ。土地はやらないからな・・・土地は、お百姓さんのものだから、それで良ければ家臣になれ。それが嫌なら立ち去れ」


ああ、心の中にしみ込んだみたいで泣き崩れたよ。




「某は、服部半蔵と申します。以後よろしくお願いします」


え!服部半蔵。徳川家康が雇って俺を殺しに来たのか・・・

俺を殺してメリットがあるのか・・・それに三河から遠過ぎるだろう。


「某を雇い、殺しを命じたのは朝倉氏で御座います」


え!お隣じゃやん。

なぜ俺を殺すんだよ。越前に攻めた事もないのになぜだよ。

色々とあったようだ。

九頭竜川の戦いでは、朝倉宗滴を総大将とする朝倉氏と北陸一向宗との間に起こった合戦だったらしい。

田吾作じいさんが負け戦だったのに、自慢して話していたな。



「それで理由が分かるか」


「正体不明な者として恐怖していると聞き及んでいます」


なんだよそれは・・・

そうだ・・・手紙を書いて送ろう。

俺は決して越前に攻めたりしませんって書こう。



書くことはいい。筆で書くのは苦手だな。


「服部半蔵、手紙を書いて朝倉に手渡すことは可能か・・・」


「本人自身に手渡すのですか?」


「特に氏名はないが上まで手紙が渡り、読んでくれるのなら誰でもいいよ」


「それなら簡単で御座る」


「中村、代筆を頼む」


え!すずりが用意されているぞ。

え!今から墨汁を用意するんだ。いやいや待てないよ。

たまたまポケットに入っていたボールペンをだす。


ペン先0.38ミリの極細ボールペンで、3本パック594円の税込み。


「これを使って書いた方が早いよ」


「これで書けと・・・墨が御座いませんが・・・」


「その細い管の中に入ってるから、なくなるまで書き続けられるよ」


なんか疑り深く俺の顔を見るのはよしてくれ。

俺は伝いたいことを声にだす。

諦めたように書き出す。


「このように凄い物を使えるとは、恐れ入ります」


もう土下座して頭を床にこしりつけてるよ。


「いいよ、それは天竺てんじく(インド)でいただいた物だから大事にしてね」


ここは嘘をついて誤魔化そう。


「ははーー、それほどの高き方だと存じませんでした」


「ああ、いいから書いて・・・」


服部半蔵も目を細めて見ている。



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