第2話ここは石川県




目の前の坊主は、顔を真っ赤にして「なにを言うかクソ坊主」と言ってきやがった。

それに同じく2人の坊主もカンカンに怒っている。

なぜ、そんなに怒るの・・・こっちが聞きたいよ。


そんな光景を見てるのは、ここの村人の大勢。

中には手を合わせて拝む者も出ている。


拙僧せっそうは、言いたい。目先のことにとらわれて、人生において大切な意味を見失ってはいないか・・・もっと徳を積みなさい」


もう坊主でやり通すしかない。

頭は坊主でないが明治維新のザンギリ頭だ。ここの坊主とたいして変わらない。

それにしても・・・

あまり仏教は知らないのに・・・俺の家は、西本願寺か東本願寺かよく分からん。

幼い頃に京都の本願寺に行ったらしいが、興味は0だよ。

だからハッキリとは言えない。


だから俺は、無宗教だと思っている。

なにそれの宗派とかで多くあり過ぎてなにがなんらだよ。



ああ!

又も坊主が刀を抜きやがったぞ。


心如しんにょさま、仏に仕える身でそのようなことは御止め下さい」


あ、ここのお百姓さんが必死に止めてくれている。

これで話し合いでの解決が見えそうだな。


「あの者は、信じていた仏を愚弄ぐろうしたのだぞ」


え!俺って愚弄したかな・・・してないよな。


な、な、な、なんと止めるお百姓さんを斬ってしまったぞ。

むごいことをするな~

それも3人同時に斬って逃げ惑うお百姓さんを、更に背中から斬っている。


又も坊主は、刀を振り上げる。俺は、疾風のごとく向かって刀に斬りおとす。

あれあれ、脳天から竹を割るように2つに割れてる。

おかしいぞ・・・刀を打ち返す積もりだったのに・・・なぜ脳天が割れてるんだ。


後ろから斬りつけているのが嘘のように見える。

振向きざまに斬りあげる。

胴から肩へ手応えもなく斬れている。


ズズッと上半身がずれ落ちながら倒れる。


残った1人は、狂ったように振り回しながら逃げる。

逃げ遅れた老人に、刀が振り下ろされる。

間一髪で間に合い、坊主を突き刺す。


南無阿弥陀仏なむあみだぶつ、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」と唱えてしまう。


あ、又もピコンと鳴った。


【LV3になりました】

【光魔法を取得】


え!光魔法って・・・嘘。

触れると人の傷を治したり、病気も治せるみたいだぞ。


急いで傷ついたお百姓に手をそえて光魔法を発動。

光りがパッと灯り、背中の深い傷がみるみると治る。

嘘みたいに簡単に治ったぞ。


あっちもこっちも傷ついた人達を治し続ける。


「やっと終わった」



あれ!やってしまったかな・・・

全てお百姓が「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」と唱えだしている。



「あなたこそ仏の使いに間違い御座いません。どうか我ら百姓をお助け下さい」


「どうかお願いします」


最後は全員にお願いされたよ。


よくよく聞くと、ここは加賀の国らしい。

日本では石川県のあたりだろうか・・・よく知らないが・・・


「あの坊主の寺があるのか?」


「はい。このままでは、皆殺しにされてしまいます。しかし、今回は極楽浄土ごくらくじょうどへ行けます」


「いやいや、ダメですよ。拙僧が話してみます」





「へーー、ここが如徳寺にょとくじかーー」


結構でかいなーー。

どれだけ税をしぼり上げているのか、想像をはるかに超えていそうだな。

領主とか居ないらしい。

お百姓と坊主だけで支配してる変わった国なのだ。

中には国人も居るみたいだが・・・


「ここの住職が如安にょあんなのか?」


「そうで御座います」


もう村人総出の直談判だよ。

俺1人で行くっといっても、ついて来ると言う事を聞かない。

もう俺が折れるしかない。


「頼もう!吾妻豪あずまごうが物申す」




「誰だ!」


10人の僧が出て来た。

いわゆる僧兵の坊主だ。あれは長刀か・・・こっちは金棒だぞ。



「拙僧は、教えの違いによって心如を殺してしまった。しかし、この村人達は悪くない。どうか助けてほしい」


「なんだと!このクソ坊主が!」


又もか・・・襲ってきたぞ。ひらりとかわして蹴り上げる。

あれ!山門さんもんの天井に突き刺さったぞ。ピクリともしない。

死んでしまったか・・・


もう容赦ない攻撃が僧兵から続くが、仕方ない。


「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」と唱えながら刀を抜いた。


もうバッタバッタと斬り倒す。

金棒もちょん切ってやって、首をねる。

えらい勢いで転げ落ちる。


その間も「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」と村人のお経が鳴り響く。


普通でない悲鳴を聞きつけて、新手の坊主が現れる。

これでもかと斬り倒す。


もうお寺の中まで入りながら斬る。



なんと年老いた坊主が女子とちょめちょめしてるぞ。


「何者だ!出て行かぬか!」


「なんと如安殿、このような幼い女子を・・・呆れ果てましたぞ」


「おみよ!なぜお前がここに・・・」


「お父つぁん、如安さまが村のためだと・・・だから我慢をしてるのよ」


「如安!ここから出て行け。さもないと殺すぞ」俺は毒ついた。


「ヒエーー」


ドタバタと逃げ出す如安。その後を数人が逃げ出す。


「あのままにしてよろしいのでしょうか・・・」


「もう、2度目の許しはない。それで我慢してくれ」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る