エルフの吟遊詩人は今日も歌う
ちーずけーき
エルフの吟遊詩人は歌を歌う
騒がしい街の橋に一人のローブを被った少女がハープを演奏しながら歌った。
とても神秘的で清々しい声で
森に木霊す鳥の鳴き声
全てを知っている世界樹
私達が知っている世界はたった一部のみ
油断してはならない、全てが敵だから
でもそんな貴方は私をこの世界から救ってくれた
全てを与えてくれた
もう貴方はいないけれど
もう貴方には会えないけれど
だから私は唄うよ
貴方がずっと笑えているように
どうかありのままの貴方でいて
貴方がいない世界は全てが色あせている
貴方はコレを知ったら怒るよね
大丈夫
貴方が守りたかったモノは守るから
安心して
さようなら
私の最愛よ
そして私の全てよ
少女が歌い終わるといつの間にか集まっていた大勢の人によって拍手が喝采した。
彼女はお辞儀をして行ってしまおうとすると一人の幼女が彼女を止めた。
「おねぇちゃんはすきなひとがいるからこのうたをうたったの?」
彼女は腰をかがめて優しく微笑んだ。
「今は離れ離れになってるんだけどね」
その笑みには寂しさが混ざってとても切なそうに見えた。
幼女はそれ以上要求しなかった。
彼女はまた歩きだす。
また見知らぬ所へ向かって。
彼女は北へ北へ歩きある町で足を止めた。
彼女はまた噴水に腰を掛けローブからハープを取り出し演奏し始めた。
草原を駆け巡る少女
色とりどりの花々
それでも私はもっと美しい存在を知ってしまった
あの日出会わなければよかったと後悔する
この話をすれば貴方はきっと否定するけども
私は貴方と合わないほうが良かった
だって貴方は私のためにいなくなってしまうから
せめて私を連れて行ってほしかった
こんなことをしたら貴方は余計悲しむだろうけど
ごめんね
ごめんね
私がこんな無力で
貴方は今頃草原を少女と一緒に駆け巡っているだろうけど
でも私はお伽の深い霧の中
夢では貴方が微笑んでいる幻が見えるほどに
貴方と出会わないほうが良かった
ごめんね
ごめんね
貴方は今頃草原を少女と駆け巡っているけれども
私はお伽の深い霧の中で彷徨っている
ごめんね
ごめんね
私はこれしか言えない
せめて貴方には幸せになってほしかった
いつか消える定めでも
彼女の神秘的で滑らかな声と絶妙なハープの演奏が混ざり美しい旋律を生み出している。
前の街と同じ様に通りかかった人が足を止めて拍手をする。
彼女は礼をして微笑んだ。
「ぜひ我が家で音楽の教師として雇いたい」
「俺の家も」
「違う、我が家に来てもらうんだ!」
誰かが言い始めたのか貴族たちもが彼女に群がってくる。
だが彼女はニコリと微笑んだままローブを深く被った。
「せめて名前だけでも......!」
彼女は困ったような顔をして答えた。
「ディアナ」
ディアナはこの一言を残してまた次の街へ歩いていった。
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